THE THINGS AMERICAN OPTICAL AO HENGE WELLINGTON

野村訓市が語る ヴィンテージアイウエアの話

誰も気付かない自己満、
それがおしゃれ
野村訓市

いわゆる眼鏡男子として俺は認知されている。最早、「眼鏡は顔の一部です~」という古いテレビCMがフラッシュバックするくらいに。ここ20年近くは眼鏡をかけるか、サングラスをかけ続けているからなのか、たまにそれを伊達メガネと勘違いされているのだが、冗談じゃない。バリバリの実用眼鏡。元々は視力はいい方だったのだが、ちょっとした事情で片目を怪我し、眼帯を1ヶ月ほどしている間に見えていたほうの視力がダダ下がり、眼帯を外したら怪我したほうの視力も遅れてもちろん下がり、あれよあれよという間に眼鏡をかけなきゃならなくなったのが中学時代の終わり、高校の初めの頃だった。授業のときだけ見えればいいとコンタクトではなく、眼鏡にしようと思ったのだが、まぁ迷いましてね。何をかければいいかがわからない。そんなときに黒縁の眼鏡、ロックンロール創世記のスター、バディ・ホリーみたいにしようと閃いちゃったんですよ、何を考えていたのかわからないけれど。80年代の終わりとかかな、黒縁なんて全く人気がなくて、どこにも売ってない。それにネットもないのでバディ・ホリーがどこの眼鏡をかけていたのかもわからない。それでこれだ!と思いついたのがレイバンのウェイファラー。当時はまだボシュロムが作っていたアメリカ製で、アメ横とかに行けばちょびっと安く売ってたんですよ。そいつをいそいそと買いに行き、吉祥寺の駅の近くにあったメガネスーパーかなんかに持ち込んでレンズを入れてくれと頼んだ。「はぁ?これを眼鏡にするんですか?サングラスじゃなくなりますよ」。知ってるつーの、そうだよ、俺はこれを眼鏡にしたいんだ!と伝えると、こんなことする人初めてですよ、と言われながらやってくれた。1週間後かな、できましたと連絡があり、取りに行った。俺の人生初の眼鏡、受け取ってみると素晴らしいじゃありませんか?早速、学校に持っていって得意げにかけたのですが、受けはまったく良くなかったな。「何これ、お前滝廉太郎みたいじゃん」「大江健三郎が好きなの?」まぁそうなるよね、そうだよね。誰もバディ・ホリーじゃなくて、教科書に載ってる昔の人みたいだと思うよね。すっかり嫌になってあまりかけなかったけれど、アメリカに留学するときには持っていった。もちろん向こうでも似たような反応だったけれど。昔のオタクにしかみられない。それはそれで望むところだったんだけどね。

とにかくそれが最初の眼鏡で、眼鏡以外にもサングラスを買っちゃあ度付きのレンズに入れ替えてよくかけた。レイバンはウェイファラーだけじゃなくクラブマスターもかけたし、オークリーのフロッグスキンもよくかけていた。おれは昔からセルフレームのウェリントンみたいな形が好きだった。何しろかけやすいから。メタルフレームのアヴィエイターなんてかけたら童顔には本当に似合わなくて、鏡を二度見したからね。「マジ?ここまで似合わない?」みたいな。何度見返しても似合わない。眼鏡はね、どこかで格好がいいなと思うものを見かけて試しても、似合わなかったら絶対に手を出しちゃだめだ。顔の骨格に合ったものがよい眼鏡で、ブランドとかモデルで選んじゃだめなんだよね。だから失敗も沢山した。クソー、こいつも似合わないかと、しばらく寝かせてからまたかけてみてもやっぱり似合わない。幅が顔と合ってるか?眉毛とフレームの間が合ってるか?鼻からすぐにズレ落ちないか?どれか一点でも違ったら買ってはいけない。

バックパッカーの頃は90年代で、ヒッピー崩れの間でもサーフィンやスノボのアイウェアが流行った。アーネットやドラゴン、それとオークリー。アイジャケットというモデルはバイクとかに乗るときに埃が入りづらくて愛用したもんだった。みんな坊主か長髪、ドレッドにアイジャケットかけて、民族衣装のパンツにコンバースとか履いてバイクに乗ってたな。ひょいと頭の上に乗っけやすかったし便利だったけど、フレームが細いプラスチックで酔っぱらった拍子に車の窓にもたれて折っちゃうなんてことが数回あった。金がないのにサングランスは頻繁に壊したり、無くしたりで、考えてみればいい思い出がないな。レンズ代入れると高いし。サングラスはその辺で、眼鏡はドラゴンのメタルフレームのサングラスのレンズを入れ替えて使ったりしていた。そうやって考えると俺の眼鏡歴というのは長いのだ。

新しいものをかけるのが嫌になって古い眼鏡をかけるようになってからもう随分と経つ。最初はニューヨークでぶらぶらしていたときに、なんだっけなシルバーなんちゃらというヴィンテージばかり扱う店を見つけたときだった。そこはブランド品というより、50年代とかの老眼鏡をたくさん扱っていて、値段も安かった。結構いろんな眼鏡を買ったと思う。眼鏡って消耗品なんですよ。けっこう壊すし、無くす。バーで酔っ払ってそのまま置いてきちゃったり、首に引っ掛けているうちに落としたりするのだが、特にヴィンテージってのは壊れる。古いものなので、長い年月のうちに水分が抜けちゃっているものが多く、ある日突然、別れがやってくるのだ。かけた瞬間にパカっと真っ二つに割れたりするのだ。だから高いものに手をだすとろくなことがない。じゃあヴィンテージは買わないほうがいいのかというとそんなことはない。安いものを探せばいいのだ、壊れても落ち込まないようなものを。眼鏡くらい知り合いと被らないほうがいいじゃないですか?ヴィンテージならその点、安心だし。セルフレームも日焼けで変色しているから、型が一緒だとしても同じにみえるものがほぼない。いろいろと試した中で一番気に入っている、いたのがAO、AmericanOpticalのもの。ここの眼鏡は形もいいけど、価格が優しかった。昔は100ドル以下で買えた。大量生産していたらしく、わりとゴロゴロと出回っていて、しかもクリア系のフレームがたくさんでていてどれもいい感じに変色していたので愛用していたのだ。見つけると複数買っては友達にあげもしていた。結構いろんなところで売っていて、程度のいいものをニューヨークで見つけるのは簡単だった。でもね、失敗したんですよ。ずっと「どこの眼鏡をかけてるんですか?」眼鏡男子の宿命として、よく聞かれてきたのだけど、現行品のどこそこのブランドとかというのも癪じゃないですか?その点、古いものは古着のTシャツとかと同じで、同じものを探すのが大変なわけで、「AOのだよ」と答えるようになったのだが、そのうちその値段がすごく上がっちゃったわけ。みんなが安くて良いということに気付いてしまったらしかった。おかげで前より探すのも大変だし、価格が全然優しい感じじゃなくなってしまった。だから今はお気に入りのやつは壊さないように毎日はかけなくなったし、いつも代わりのものを探してる。なかなかいいサイズのいい色がないのだけれど。

最後に。まぁとにかく俺は年がら年中度付きのサングラスを基本かけてる、昼も夜も。どこ見てるか誰にも気付かれないし、二日酔いもばれない。あと目付きがギラギラしているらしく、かけているとそれを中和してくれるのだ。小さい子に「おじちゃん怖い、眼鏡取って」と言われてサングラスを外したら「戻してください」と敬語でいわれたことがある。外した方が怖かったらしい。親を恨むしかないね、俺のせいじゃない。とにかくそんな訳で普通の眼鏡は二つくらいしかなくて、あとは全てサングラス。ほとんど同じような形じゃねえかと言われるが、それは最初に言った通りでしょうがない。似合わない形をかけてるわけにはいかないのだから。ほとんど同じ形といっても、それぞれフレームの色が違ったり、レンズの色が別だったりして、服に合わせたりしている。誰も気付かない自己満、それがおしゃれだと思い込んでいるので。

野村訓市
1973年東京生まれ。編集者、ライター、内装集団Tripster主宰。J-WAVE『Traveling Without Moving』のパーソナリティも早、8年目になる。企業のクリエイティブディレクションや映画のキャスティングなど活動は多岐に渡る。

Illustration T-zuan15:30 – 16:27
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