Places of Comfort & Chic

落合宏理が仲間と集う クリエイションを刺激する場所

“Comfort”で“Chic”な場所とはどんな場所だろう?心地の良い音楽とゆったりした時間が流れるカフェ?歴史と情緒にあふれた宿?センスある作品を目にできる美術館?答えは人の数だけあるだろうが、それらはいずれも訪れたものの気持ちを豊かにしてくれる場所に違いない。時代のムードが変わり、豊かさ、贅沢の基準も変わってきた。高級ホテルやレストランなど、いわゆる“ラグジュアリー”とは違う心の贅沢。豊かな時間を過ごせる場所。ここからはそんな場所について、ファッションの第一線で活躍する6人のクリエイターに語ってもらった。彼らにインスピレーションを与える7つの場所は、我々をも大いに刺激してくれることだろう。

CITY COUNTRY CITY (Shimokitazawa)
Selected by Hiromichi Ochiai (FACETASM)

下北沢の雑居ビルの4Fに店を構えるシティカントリーシティ。店名は70年代に活躍したバンド、WARの曲名から取ったもの。洋邦問わずさまざまなジャンルのレコードがセレクトされており、店内では常に心地よく良質な音楽が常に流れている。手作りの温かみある空間と音楽に魅せられ、海外アーティストも多く訪れるというこの場所。ハウスパーティの始祖であるデヴィッド・マンキューソをはじめ、壁に描かれた多くのサインがその支持の高さを物語っている。

自分の脳をリセットできる
心地良い音楽 & 雑談空間
落合宏理

「下北沢のシティカントリーシティは、17、8年続く下北沢のレコードショップ&カフェ。オーナーがサニーデイ・サービスのボーカルの曽我部(恵一)さんなんですが、店長の平田くんが僕の高校の同級生なんです。彼はもともとディスクユニオンで働いていたレコード通だったのですが、曽我部さんと出会い、このお店を任されることになったんですよね。オープンした当初から通っています。ファミリーですね。すごく温かいお店で、2011年のランウェイショー以降、東京でのショーの音楽は、彼らにセレクトをお願いしています。付き合いも長いので、テーマを伝えたらアーティストとともにストーリーまで考えてくれる。ここで会話することで、自分の考えも整理できます。DJをさせてもらったりもしていますよ。自分の遊び場であり、クリエイションを学ぶ場所。人と繋がる居心地のいい場所であり、クリエイティブを刺激される場所。雑談もできるし、自分の脳をリセットできるリラックスした友達の家のようなお店です。店内には常に様々なジャンルのレコードがセレクトされていて、1枚1枚に上質でこのお店らしいストーリーとドラマがある。この場所で聴くと音楽がすごく良くなるような、そんな雰囲気があります。音楽はもちろん、内装や家具、料理を含めラグジュアリーなムードではなく、DIY感があり、人の温かみがあるんです。曽我部さんのファンをはじめとした音楽ファンが集い、海外でも紹介されているので、外国人のお客さんも多い。海外アーティストもよく来ていますよ。映画などでも撮影場所として使われているので、今すごく人気で、お店の外には行列ができています。豪華なものから上質で心地よいものへという時代のムードにも合っているんでしょうね。情報も多く、せわしない現代では自分らしくいられる時間をどれくらい持てるかが大切だと思っていますが、そんな自分の時間を過ごせる場所です。僕はコロナ以降バイクに乗りはじめ、東京らしい街の移り変わりの早さをダイレクトに感じ、東京出身のデザイナーとして刺激を受けているのですが、ここはそんな目まぐるしく変わる街の中で変わらず存在してくれている。安心できる心地よい場所です」。

シティカントリーシティ
東京都世田谷区北沢2-12-13 細沢ビル4F 03-3410-6080
営業時間:12:00-22:00 定休日:水

Dogs (Oji)
Selected by Hiromichi Ochiai (FACETASM)

2~3ヶ月ごとに数日不定期でオープンするというドッグス。その神出鬼没なオープン形態も魅力の一つ。2月23日-25日にオープンした際は、レザーのショッパーをはじめ、メンバー6人が各々に作り上げたウエアやアクセサリーを販売し、完売アイテムも続出した。仲間で作り上げたお店らしいフレンドリーなムードにあふれ、訪れたお客さんとの会話もはずむのもこの場所の魅力。次のオープンは4月を予定しているとのこと。

カルチャーを生み出す
初期衝動を思い起こさせる
落合宏理

「王子のドッグスも10年以上の付き合い。アーティストとして活躍する千葉(雄喜)くんを中心として、地元の仲間で作っているショップですね。去年移転してリニューアルオープンしましたが、その前のビルではじめてオープンした時は、コラボレーションをさせてもらいました。ファセッタズムのお店を青山に移転、オープンしたときもポップアップイベントを行ったんですが、100人以上並んだり、車を3台売ったりと、とにかくすごかったのを覚えています。彼らとの出会いを振り返ると、とにかく曲が心に響いてかっこいいユースが出てきたと思ったのでショーに出演してもらったりしました。今の東京ファッションにおけるラッパー像の走りだと思います。お店に並ぶアイテムもオリジナリティがあってすごく魅力的なんですが、メンバーのみんな思いやりがあって、100人以上並んでるお客さんに話しかけに行くんです。そこで新たなコミュニティが生まれる。ファッション業界にはスニーカーブームやヴィンテージブームなど、さまざまなブームがありますが、それとはまた違う、“仲間で新たなムーブメントを作る”という部分にすごく感動します。ドッグスとは場所の名前であり、ブランドの名前であり、クルーの名前であり、カテゴライズが難しいですが、“説明できないけどなんかかっこいい、行ってみたい”と思わせるところからカルチャーが生まれる。そんなシーンを間近で見て、勉強になるし、ものごとをはじめる初期衝動を改めて思い起こさせてくれます。仲が良く、密に繋がっている中で、ものづくりをしている彼らの空間に入り込めるのは、同じクリエイターとしてインスパイアされることも多いですし、そんなコミュニティの中にいられるのはとでも幸せなことだと感じています。心地よくも刺激的な場所。これもコンフォート&シックな場所なのかな、と思っています」。

ドッグス
東京都北区豊島 1-1-11
@dogs.oji

落合宏理
パリコレにも出展する東京を代表するブランド、ファセッタズムのデザイナー。ストリートカルチャーを背景に、東京のフィルターを落とし込んだ洗練されたウエアが高く評価されている。ファミリーマートのウエアデザインも手がけるなど、多方面で活躍中。

Photo Atsutomo HinoEdit & Text Satoru Komura

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