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MUSIC PIANO ALBUM PJ MORTON PJ Morton Piano Album
8th album
Released 14th February 2020
Length 51:00
Morton Records

MUSIC PIANO ALBUM PJ MORTON PJ Morton Piano Album
8th album
Released 14th February 2020
Length 51:00
Morton Records

日常に優しく溶け込む
「毎日をともにしたい音楽」

最近、気がつけばライブやセッションアルバムばかりを選んで聴いている気がするのだが、改めて現場の雰囲気やアーティストの息遣いが閉じ込められた臨場感はライブ音源にしかない魅力だと感じる。寒さも深まり人肌も恋しくなる時期になってきたことに加えて、今年は人が集まれるような行事も少ないせいか、人の温度が感じられる音楽が今の自分には心地がいいのかもしれない。今回紹介するPJモートンの最新作『Piano Album』は今年のバレンタインデーに合わせてパフォーマンスされたスタジオライブを収録したセッションアルバム。ソウルレジェンドを彷彿させるようなオーセンティックな歌声とピアノの音色、そしてゲストヴォーカル陣との息の合ったセッション、時折入る歓声やアドリブ全てが一体となり、自然体で温かみのあるグルーヴを生み出している。ここ数年、精力的にソロアルバムのリリースを続けているPJモートン。今回アナログリリースされた『Piano Album』に収録されているのは2017年作の『Gumbo』、2018年作の『PAUL』からの選曲も多く、馴染みのゲスト陣らと共に安定感あるパフォーマンスを魅せている。力強くも女性的で繊細な歌声が魅力の女性シンガー、ジョジョをゲストヴォーカルに迎えた「Say So」、2020年のリリシスト・オブ・ザ・イヤーを受賞した今注目の女性ラッパー、ラプソディーのラップを上品に取り入れた「Don’t Break My Heart」、アコースティックバージョンが普段とはまた違った表情を見せる「Kid Again」をはじめ、ビー・ジーズの名曲「How Deep is Your Love」の極上カヴァーなど、曲の一つ一つに「ソウル」が宿る素晴らしい内容。通常のスタジオアルバムに収録されている曲でも、ライブ録音となるとまた少し違った表情が見えるというのも面白さであるし、曲のつなぎ目が無いからこそ、そこで生まれる生の空気感やグルーヴを味わうことができるのもライブ盤ならではの楽しみ方である。本作はそんなライブ録音の良さと、PJモートンのアーティストとしての実力が存分に発揮された一枚と言えるだろう。
 
PJモートンはアメリカ、ニューオリンズ出身のミュージシャン、そして音楽プロデューサー。2010年に世界的な音楽グループ、マルーン5のツアーメンバーとして参加したことをきっかけに、2012年には正式メンバーとしての参加が決まり主にキーボードを担当している。2013年にソロとしてのメジャーデビューアルバム『New Orleans』を発表し、同アルバムがグラミー賞にもノミネートされるなど更なる脚光を浴びた。カナダ人でゴスペルの歌い手である父を持ち、幼少期からゴスペルと密接な環境で育ったルーツを持つPJモートンの音楽性には、トラディショナルなソウルミュージックへのリスペクトを強く感じる。ソロとしての活動の中でシンガーソングライターのみならずプロデュースまでもこなす彼の多彩な才能は、マルーン5のキーボディストという肩書きに少しも引っ張られることのない、PJモートン自身のアーティスト力の強さを証明している。アルバムを重ねるごとに貫禄を増していくマルチプレイヤー、PJモートンの今後の活躍が非常に楽しみである。
 
毎回、この企画で紹介するアルバムを選ぶときには、季節感やテーマとのリンクを意識するようにしているのだが、私自身にとってもこの『Piano Album』は「毎日をともにしたい音楽」として、愛着や安心感を与えてくれる大切な一枚だ。多くの人にとって音楽は日常の一つだと思うし、日常で聴く音楽こそ「良い」音楽であってほしい。これからも続く寒い季節。是非この温かなアルバムを聴きながら、本誌に向き合う時間を楽しんでもらえたら幸いだ。本作の素晴らしいセッションの様子が収められた録音映像も公開されているのでそちらも合わせてチェックしていただきたい。
 
 

PJ Morton
1981年3月29日生まれ、ニューオリンズ出身のミュージシャン・プロデューサー。世界的バンドのマルーン5のメンバーでもありながら、ソロ作品がグラミー賞を受賞するなど現行のR&Bソウルミュージック界においても最重要人物の一人である。

 
 
 

Select & Text Mayu Kakihata

 

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