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MUSIC BLACK RADIO III
ROBERT GLASPER Robert Glasper
Black Radio III

Released 25th February 2022

Length 67:00
Concord Records

MUSIC BLACK RADIO III
ROBERT GLASPER Robert Glasper
Black Radio III

Released 25th February 2022

Length 67:00
Concord Records

ブラックミュージックの
ルーツを受け継ぐ
自由でクールなジャズの今


 
ロバート・グラスパーのグラミー賞受賞作品でもある『BLACKRADIO』の発表から10年、シリーズ最新作となる『BLACK RADIO III』がリリースされた。2012年に最初の『BLACK RADIO』、そして翌年に『BLACK RADIO II』を発表し、ジャズやHIPHOP、SOUL~R&Bなどを掛け合わせた新たなブラックミュージックのスタイルを提唱したロバート・グラスパー。『BLACK RADIO』はブラックミュージックの潜在能力をさらに成長させた重要作品として世界中で評価されている。錚々たるフィーチャリングアーティスト陣によって制作される『BLACK RADIO』シリーズは、今作においても、コモン、Qティップ、エスペランサ、グレゴリー・ポーター、ミュージック・ソウルチャイルド、インディア・アリー、ジェニファー・ハドソンをはじめ、キラー・マイク、タイ・ダラー・サイン、Dスモーク、PJモートンなどが起用され、ブラックミュージック史に名を刻む彼らとの共演にも注目が集まっている。
 
同じ作品内でレジェンドから若手まで、知名度や話題性ではなく、テクニックや才能で選び抜かれたラインナップは、ミュージシャンの魅力や価値を高め、作品に奥行きを見せる効果が現れているように思う。アミール・スレイマンによる力強いポエトリーリーディング「In Tune」で幕を開ける本作は、先行配信された「Black Super hero」、Dスモークの心地よいリリックが光る「Shine」、アルバム内でも一際存在感を放つQティップとエスペランサ・スポルディングによる「Why We Speak」、これまでの共演でもお馴染みのレイラ・ハサウェイとコモンによる、ティアーズ・フォー・フィアーズの名曲「Everybody Wants To Rule The World」のカヴァー、PJモートンの甘美な歌声に包まれる「Forever」など、安定した素晴らしいグルーヴに溢れている。『BLACK RADIO』というタイトルは、一作品目に収録された『BLACK RADIO』で、ヤシーン・ベイ(モス・デフ)との同名の曲もあるのだが、飛行機が墜落事故などを起こした際に、原因などを解析できるよう搭載されているブラック・ボックスから由来している。‵‵素晴らしいものは残る”ことがこのアルバムのコンセプトだと、過去のインタビューでも彼はそう語っていたけれど、機体が大破しても強い耐性によって残るブラックボックスのように、『BLACK RADIO』は様々な音楽に溢れた時代に埋もれてしまうことのない、上質でタフな作品であるということはこのシリーズを聴けばすぐに理解できるだろう。
 
ロバート・グラスパーを、ジャズミュージシャンという視点で考えてみると、彼はHIPHOPやR&Bなどの様々なジャンルの音楽とのミクスチャーによって、玄人向けの難しい音楽と思われがちなジャズの概念を覆し、ジャズが自由でクールな音楽だという本来の魅力を現代的感覚で表現する最も大切なキーパーソンと考えることができる。彼の音楽に対する信頼と安心感からなのか、良い意味で『BLACK RADIO III』に特別な新しさを感じなかったのだけれど、彼の生み出すブレのない音楽の中には、彼の熱き想いが強く刻まれている。その中には世の中へ対するメッセージもあり、これまで彼のルーツとなってきた音楽に対するリスペクトも含まれていて、それらが根付いているからこそ彼の音楽は新しくも格式のある上質なニュークラシックといえるのではないだろうか。今年5月には日本初開催となるジャズフェスティバル「LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL」でヘッドライナーとしての出演が予定されている。彼のステージを堪能できるまたとないチャンスがもうすぐ来るかもしれない。
 
 
https://diskunion.net/jazz/ct/detail/1008425686
 
 
ロバート・グラスパー
アメリカ、テキサス州ヒューストン出身のピアニスト、音楽プロデューサー。ジャズを基盤にHIPHOP、R&B、SOULなど様々なジャンルを独自のスタイルで表現する。これまでに4度のグラミー賞受賞歴を持つ。現代のブラックミュージックシーンを代表する音楽家のひとり。
 
 
 

Photo Taijun Hiramoto Select & Text Mayu Kakihata

 

This article is included in

Silver N°15 Spring 2022

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