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lost & found
Jorja Smith the debut studio album, Released 8 June 2018, Recorded 2016 - 2018, Length 46:00, 
Label FAMM, Distribution The Orchard

lost & found
Jorja Smith the debut studio album, Released 8 June 2018, Recorded 2016 - 2018, Length 46:00, 
Label FAMM, Distribution The Orchard

出会ったその日に何度も聴いた

レコードを予約して買うなんて何年ぶりだろうか? Jorja Smith(ジョルジャ・スミス)は、僕におそらく20年ぶりに予約をしてまでレコードを手に入れたいと思わせた素敵な音楽を作った人だ。

 

僕は本当に好きな音楽はレコードで買うようにしている。20年近くその習慣は続いていたが、この数年は新譜で、レコードで買いたいと思えるような音楽にあまり出会えていなかった。僕がレコードで買う音楽の基準は「時代を越えて好きでいられるかどうか」だ。

 

あくまでも個人的な主観でしかないけれど、僕は歴史的名盤と呼ばれるレコードをたくさん持っているし、20年以上DJを趣味にしてきたから、それなりにたくさんの名曲たちを愛してきたつもりだ。自分自身でDJする時も好きな曲をかけること、数年後に自分が聴かなくなるであろう音楽はかけないことをポリシーにやってきた。

 

ジ・インターネットやブラッド・オレンジ、フランク・オーシャンなんかは大好きでもちろんレコードで買った。この数年はこうやって数えるほどしかレコードで買うアーティストはいない。そんな中で出会ったジョルジャ・スミスの『Blue Lights』という曲は、出会ったその日に何度も聴いた。好きな曲を一日に何度も聴くなんて行為は20代の頃を最後に記憶がない。それほどまでに僕の心を捉えたのだ。

 

ジョルジャ・スミスは1997年、イギリス、ウォルソール生まれのアーティスト。ネオ・ソウルグループ2nd naichaのリードシンガーである父を持ち、レゲエ、ソウル、ロックなどを聴き育ち、ローリン・ヒルなどから影響を受けたと話す。

 

2016年にデビューシングルとなる「Blue Lights」をリリースし、本格的に活動を開始。ドレイクやスクリレックスにこぞって絶賛され、注目を浴びる。2018年に入るとブリット・アワードが有力新人を投票により選出するクリティック・チョイス・アワード賞(過去にはアデルやサム・スミスも受賞)を獲得。その後はケンドリック・ラマーがプロデュース兼キュレーションを務めたサントラ『Black Panther』においても「I am」でヴォーカルとして参加した。

 

そして満を持して6月に発表したのが、この『lost & found』だ。ファッションシーンからの注目度も大きいようで、6月のパリ・メンズファッションウィークで、キム・ジョーンズ、ヴァージル・アブロー、スケプタたちと一緒に写真に写る姿も確認できる。そんなファッション感もあってかリアーナと比較されることも多いようだけど、僕は彼女にシャーデーのような切なさとインテリジェンスを感じる。

 

彼女の音楽は、20年以上前から僕が、熱心なシャーデーのファンだったことを思い出させた。今年の5月、マイアミに撮影に行った際、僕がジョルジャ・スミスを聴いていると、同行したカメラマンが興味を持ち、帰国した後も聴き続けファンになったらしい。気づけば、そのカメラマンは僕たちの撮影依頼に先んじて、先月サマーソニックで来日した彼女のオフィシャルライブ写真を撮っていた、というのも笑い話のような美しい話だ。そのフォトグラファーは国内外を問わず、数多くの本物と言われるミュージシャンたちを撮影してきた日本でも指折りのフォトグラファーであるということも伝えておきたい。それほどまでに彼女の音楽はたくさんの人の心に響いている。

 

ジョルジャ・スミスの『lost & found』は20年後もエバーグリーンな名盤として世に受けつがれ、音楽の歴史の1ページとなるだろう。良い音楽は、季節や匂いや風、すべての感覚とともに記憶される。このSilverの創刊号が出る頃には、最高に気持ちいい夜風が吹いているはずだ。僕の一番好きな季節。この音楽を聴きながら、ゆっくりとあの坂道を登ろう。また来年、この音楽と風を感じれば、平成最後の夏がどんなに暑かったかを思い出すだろう。

 

 

ジョルジャ・スミス

1997年、イギリス、ウォルソール生まれ。2016年デビュー。2018年ブリット・アワード・クリティック・チョイス・アワード受賞。

 

 

Photo Taijun Hiramoto
Select & Text Takuya Chiba

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