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Living with Sound
Satoshi Suzuki Manager of LOOPWHEELER

気持ちいい音と
毎日を共にする

音楽は私たちの生活を彩る大切な要素だ。楽しい時や嬉しい時、悲しい時や辛い時。音楽は誰にでも平等で、聴いているだけで気分を高めてくれたり、和ませてくれる。だからこそ自分にとって“良い”音を日々の生活のそばに置くことで、私達のライフスタイルは今よりももっと豊かになることは間違いない。それはこだわり抜いたオーディオから、あるいは音楽を楽しむために作られた特別な空間から聴く音かもしれない。無数にある選択肢の中から、自分なりの“良い”音を日常の中に見出すヒントを探っていく。

Living with Sound
Satoshi Suzuki Manager of LOOPWHEELER

気持ちいい音と
毎日を共にする

音楽は私たちの生活を彩る大切な要素だ。楽しい時や嬉しい時、悲しい時や辛い時。音楽は誰にでも平等で、聴いているだけで気分を高めてくれたり、和ませてくれる。だからこそ自分にとって“良い”音を日々の生活のそばに置くことで、私達のライフスタイルは今よりももっと豊かになることは間違いない。それはこだわり抜いたオーディオから、あるいは音楽を楽しむために作られた特別な空間から聴く音かもしれない。無数にある選択肢の中から、自分なりの“良い”音を日常の中に見出すヒントを探っていく。


 
 

きっかけは衝撃と感動から

 
今回取材を行なったのは、鈴木が代表を務めるブランドであるループウィラーのオフィス。オフィスの扉を開けた瞬間、オーディオからBGMとして流れる心地よい音が耳に入ってきた。席につくなり「まずは実際にこのオーディオセットで一曲聞いてみるところから始めましょう」そう言ってレコードを取り出した鈴木。荒井由美のひこうき雲をかけてくれるようだ。音量を調整し、慣れた手つきで針を落とす。そうすると聞こえてくる音に衝撃を受けた。低音から高音の音質の幅はもちろん、ユーミンの細かな息遣いなど、普段では聞こえない部分まで耳に入ってくるような感覚と言えばいいのだろうか。それによって今まで何度も聞いた曲であるにも関わらず、まるで初めて聞いた曲であるかのような錯覚を起こすほどだった。なぜ鈴木はまず最初に音を聞かせてくれたのか。それは彼自身がオーディオに傾倒していくようになったきっかけの話へとつながっていく。「ちょうどループウィラーを始めるくらいの頃に、兼ねてより親交のあったデザイン会社のグルーヴィジョンズの伊藤さんが、LINNのクラシックというCDチューナーとアンプが一体型になっているオーディオをレッドカラーで別注してリリースしたことがあったんです。その際に伊藤さんの事務所で聞かせてもらったのですが、とてつもない衝撃があったわけですよ。その頃の僕はまだオーディオの世界なんて全然わからなかったから、すごく良い音だなと思って感動しました。ラジオから流れるJ-WAVEのピストン西沢さんの声が男前に聞こえたくらいですから(笑)。それくらい当時の自分には衝撃が走りました」。すべてのきっかけは一度受けた衝撃から。そんな自身の経験があるからこそ、まずはオーディオから鳴る音を聞かせてくれたのだろう。そうして鈴木は、ここから一気にオーディオの世界へと足を踏み入れていくこととなる。

鈴木がオーディオの世界に足を踏み入れていくきっかけとなった、英国の音響機器メーカーLINNのCLASSIK。チューナーとCDアンプが一体型となっている。限定カラーである赤のカラーリングは、グルーヴィジョンズとのコラボレーションの証。当時数十台限定で発売されたものだという。

岩手県一関市に店を構える伝説のジャズ喫茶BASIEの資料や当時のオーディオ誌。20年ほど前の実際にBASIEへ遠征に行った時の写真も見せてくれた。1970年から営業を続けるBASIEには、マスターの菅原正二が監修するオーディオが奏でる音を聞きに世界中から人が集まるのだという。

 
 

経験を経て原点に立ち戻る
生活スタイルに合った音響

 
「岩手県の一関にBASIEっていう伝説のジャズ喫茶があるんです。オーディオが好きな人の中では、知らない人はいないくらい有名なお店なんですが、そこのオーナーの菅原さんという方が日本一のJBL使いとして知られています。この方の出す音を聞けば少し勉強になるかなと思い、仲間とはるばる遠征に行ってしまうくらいオーディオの世界にどっぷり浸かりました。初めて衝撃を受けてから、そんな遠征をしつつ大体5年くらいで自分の限界まで突き詰めましたね。オーディオ類はもちろん、電源ケーブルなんかにもこだわりだしてしまったり。コンセントからオーディオにつなげるためだけのケーブルですが、これを変えてあげるだけで音って劇的に変わったりするものなんですよ。電気って意外と普段は意識していないですが、実は強かったり弱かったり結構波があるんですよね。そうすると音質が変わってきてしまいますから、アイソレーションっていう機材を挟ませて電気を整流させたり。そろそろそうなってくると、おかしいよねあの人みたいになってきてしまうんですよね(笑)。そんな領域まで足を踏み入れた時に、ふと息苦しさを感じてしまったんです。音楽って本当は心が豊かになったり、ワクワクしたり、楽しくなったり、本来はそういう楽しみ方をするべきものですよね。その当時音を追求している自分を客観視した時に、今自分は果たして豊かに音楽を楽しめているだろうかって考えたんです。そうした時にこれは少し違うなと、もう一度自分のオーディオ観を俯瞰で見直しました。ずっと今まで僕が追ってきたのは、いわゆるハイエンドオーディオと呼ばれるその当時の最先端のメーカーの最新の技術で開発されたようなものでしたが、音楽の本来の良さを楽しむスタイルにシフトチェンジしたんです。何よりも今はこんな世の中ですし、ライブにもなかなか行くことが出来ないですよね。そうなると家やオフィスでほんの少しの時間でもいいからその空気感を味わいたい。それが自分の中でプラスになるのがいいなと思い、今の自分のオーディオセットはその感覚を意識しています。オーディオから発される良い音をライフスタイルに取り入れることによって、30分という短い時間でも気持ちに変化をつけることができる。ずっと流して聞いていてもいいけれど、今日はこんな気分だから集中的にこの曲だけ聞いて気持ちを切り替えようといった使い方ができるんです。手軽に自分のオンオフを切り替えることのできるツール的な役割にもなります」。ターンテーブルはLINN、プリアンプとパワーアンプはMcIntosh、スピーカーはJBLという現在の鈴木のセットアップは、オーディオを自分なりに突き詰めたからこそ辿り着いた、音楽を純粋に楽しみたいという原点に立ち戻ったスタイルと言える。ライフスタイルに合ったオーディオ選びは、自分にとって良いと感じる音と暮らす生活へとつながる足がかりとなることは間違いない。

 
 
アナログな作業を通して
音と向き合う場面を作る

 
仕事中のBGMや気分をリフレッシュさせたい時に音量を上げて楽しむなど、時と場合によって使い分けているという職場のオーディオ。鈴木の日常の中には、常にオーディオから流れ出る音楽があると言える。そんな鈴木はオーディオに対してどのような魅力があると感じているのだろうか。
 
「僕らの洋服などのものづくりにかける思いと同じ部分である、ミュージシャンやアーティストさんの気持ちや思いに近づくことができるのが魅力だと思っています。アーティストがどんな気持ち、思いをかけてこの音楽を作り、リスナーに届けているのか。表面上はみんなに楽しく聞いてもらいたい、共感してもらいたいとかそういうことであるとは思いますが、実際はそんなことだけではないと思う。聞き流すだけではなく、その真相の部分にある考えや音楽に対する姿勢に少しでも近づけたらいいなと思います。今音楽はダウンロードすらせずに、ストリーミングでいくらでも聴けるような状態だからシャワーのように浴びれる時代じゃないですか。そういうのではなくて、もう少し音楽や好きなアーティストさんに真摯に向き合ってみる。そのためには少しでもCDやレコードに入っている音の中から吸収できる要素を多くしたいですよね。欲を言えば音源に収録されているものを全部出し切って聞いてみたい。そうすることによって何かまた自分の心に刺さるものがあるかないか。あればそれによって何かを学び、また自分が少し成長できるのかもしれないし、アーティストさんに近づけるかもしれない。僕にとってはそのためにこのオーディオ機材が必要なんです。手持ちの端末で音楽をインスタントに聞くよりも、このようなアナログな機器を手作業で起動させたりすることによってちゃんと音楽と向き合う場面が作れる。そういった側面が魅力なのかなって思います。なんでもコンビニエンスな時代だからこそ、一手間かけてちゃんと音と向き合うことによって、多少は面倒くさいかもしれないですが自分の方にも準備ができると思うんです。ジャズ喫茶BASIEの菅原さんも言っていましたが、音楽は、聞くことがひとつ、その次に見る、その次に嗅ぐ、だそうです。嗅ぐまでは僕もさすがにまだ到達できていないですが、オーディオと音は三者三様の無限の楽しみ方があって、自分の理想を追い求めて行けよというメッセージのように感じています」。私たちは常日頃から、美しいものを見て目を、香りの良いものを嗅ぎ鼻を、美味なものを食し口の感覚を研ぎ澄ますことは率先して行なっている。しかし耳に関してはおろそかにしてはいないだろうか。日常の中で垂れ流される音に耳を傾けるのではなく、良質な音をそばに置く時間を設けてみてはいかがだろう。自身に合ったオーディオを模索していくその時間さえも、きっと日々の私たちの生活を豊かにしてくれるに違いない。

Player
LINN Sondek LP12
 
「LINNのLP12はレコードの盤面に刻まれている音を最も精度高く再現してくれるプレーヤーだと僕は思っています。音の中域の伸びがすごくいいし、何よりデザインが洗練されている。皿の部分は飛行機のエンジンの素材でも使用されている特殊合金を削り出して作られていて、プロダクトとしても芸術品のような側面があります。ジャズ喫茶ベイシーの菅原さんも使っているという憧れもあり僕はこちらを使用しています」。

Preamp & Power Amp
McIntosh C22 Stereophonic Preamplifier McIntosh MC275 Vacuum Tube Amplifier
 
「こちら両方ともにヴィンテージの復刻として現在も発売されているモデルになります。アンプは基本的に真空管とトランジスタの選択肢がありますが、トランジスタは比較的新しい技術ですが解像度が高い音質になります。一方真空管は温かみのある重圧な音質が魅力です。マッキントッシュは歴史のあるブランドだから自分たちのオリジンはやっぱり真空管で、いまだに作り続けている。真空管は彼らの誇りでありアイデンティティですから。ものづくりにかける思いがそこにはあるんですね。そういうところに共感できるので選びました」。

Speaker
JBL Baron C38
 
「物自体は1950年代の古いスピーカーですが、中身は全てレストアしてあって現代の音にも耐えられるようにしています。今回のオーディオセットアップでは38センチ口径のD130と075の組み合わせを使ってみたかったので、バロンに辿り着きました。専門的になりますが、バロンは38センチにしてはいわゆる感度・レスポンスが抜群。LINNのプレーヤーとも相性がすごく良いんです。外側の木材も新しく作り直していて、発注してから一年以上かかって手に入れたお気に入りのスピーカーです」。

 
 
鈴木諭
スウェットの伝統的な製法である“吊り編み”の名を冠するブランド、「LOOPWHEELER(ループウィラー)」の代表。ブランド創設時から国内外のファッションブランドや異業種とのコラボレーションを幅広く手がけてきた。オーディオとヴィンテージの空冷ポルシェに関しては知る人ぞ知る愛好家の一面も持つ。
 
 
 

Photo Naoto Usami Interview & Text Shohei Kawamura

 

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