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Beautiful Nature and Unique Sounds of Hokkaido

Beautiful Nature and Unique Sounds of Hokkaido

圧倒的な大自然とローカライズされた音楽性
小口大介が考える北海道の魅力ある場所

阿寒湖のランドスケープから周辺の自然の豊かさやスケールを感じる。湖や渓流にて釣りを楽しんでいる瞬間が最も阿寒の自然を感じられるのだそう。写真内のキャンピングカーは、小口と仲間たちで来年春の一般公開に向けて試験稼働をしている「Toal camper service」の車両。車両のレンタルに加え、旅を共に計画するツアープランナーとしての役割も担っていく。

 
 

2拠点生活を経て気づいた
北海道ならではの魅力

 
列島の最北端に位置し、日本で最も広大な土地を有する北海道。人々が生活する地域と壮大なスケールの自然が隣り合わせで存在し、ひとたび広大な原野の中の一本道をひた走れば、まるで外国に迷い込んだような錯覚に陥いる。そんな北海道において、その魅力を発信している人物がフリーランスでプロデューサーやPRディレクターとして活動する小口大介だ。もともと北海道で生まれ育った小口は、現在では東京と北海道の2ヶ所にベースを置き生活を送る。そんな今のライフスタイルの中でこそ見えてきた北海道の魅力とは。
 
「北海道の魅力で特筆すべきは圧倒的な大自然と、札幌を中心として存在しているローカライズされた音楽カルチャーだと思います。自然方面で言えば、阿寒摩周国立公園という釧路市にある国立公園。その中に阿寒湖という湖があって、とにかくこの湖周辺の自然が美しい。来るたびに心が洗われるような感覚を味わえるし、森の中や美しい川にひとたび入れば僕が今趣味としてのめり込んでいる渓流釣り(フライフィッシング)ができたり、野生の動物が間近で生息している光景を目にすることができます。東京で生活を送るようになってから、よりその魅力に気付かされました。札幌から車で4時間くらいの場所にあるのですが、大自然を感じながら車で移動するのもいいですし、何より都市と大自然を行き来するスタイルがとても北海道らしいと思っています。そしてその阿寒湖周辺は北海道の先住民族、アイヌの人々の居住地でもあって独自のカルチャーが根付いている。ここでしか体験できないような自然や文化に触れられるのでわざわざ来る意味のある場所のひとつですね」。
 
そんなアイヌの人々が紡いできた独自の民謡などの文化を筆頭に、北海道には独自の音楽文化が栄えてきた歴史がある。本州から切り離されている島のような地形だからこそ他の干渉を受けずに独自の進化を遂げてきたのだろう。「今の北海道では音楽で言えばやはり札幌が文化の中心になっている感覚があるのですが、有名なところで言えばTHA BLUE HERBというヒップホップユニットであったり、Kuniyuki Takahashiさんというインプロビゼーションアーティストなど、日本全国や世界で活躍していても活動のベースをずっと札幌に置いていたりするんですよね。歴史的な要素に加え、そうしたいい意味での土着的な要素が存在しているんです」。
 
そうした一連の札幌にまつわる音楽カルチャーの台風の目的な存在であり、ルーツとも言えるべき存在が札幌すすきのにあるミュージッククラブ、プレシャスホールだ。「北海道で音楽をやっている人にとって知らない人はいない、カルチャーを発信する箱です。この箱から影響を受けたミュージシャンやアーティストは北海道では数知れず、これからの札幌を担っている若手たちがちゃんとそうした文化を継承して次の世代に受け継いでいけるように、札幌にはプレシャスホールを中心として世代別に音楽を楽しめる場所がいくつもあるんです。またそうした積極的に若手をフックアップしているクラブであったり、老舗のバーも含めて、札幌で音楽に携わっている人たちは強い横のつながりがある。全員でカルチャーを守っていこうというアットホームな意識をすごく感じるんですよね。でも北海道の人々の間でみんな大切にしてるのは結局は自然だったりするんです。自然からインスピレーションを受けたり、辛い時に自然が助けてくれるという精神文化。そこがやはり圧倒的に東京と違うポイントというか。みんな北海道に生きていることに誇りを持っているし、地元の文化をリスペクトしている。そう言った意味では阿寒湖周辺の自然やアイヌ、札幌の音楽カルチャーは相互に影響を与え合っていると言えるし、根底の部分では繋がっていると言えるのではないでしょうか」。自然を愛する精神性と音楽カルチャーのクロスオーバー。今回はそんな自然と音楽の軸から小口が2拠点生活を経て再び強く感じさせられた、北海道でしか味わうことのできない魅力ある場所を紹介していく。

Ainu Kotan [Akan]
日本が世界に誇るべき
自然が生み出した美しいカルチャー
アイヌコタン


コタンはアイヌ語で集落という意味を持つ。民芸品店や郷土料理を振る舞うレストランが軒を連ねる集落の頂上にはアイヌの人々の守り神、シマフクロウが祀られている。

アイヌ伝統の紋様は木彫りや刺繍によって衣服や様々な製品に反映される。紋様の中でも渦を巻いている部分はモレウ、菱形の部分はシクという名称がある。こうした代表的な形を組み合わせて作るのが伝統的なアイヌの紋様で、組み合わせは無限に存在する。


2021年2月に行われたウタサ祭りの模様。道内外から毎年多くの人が訪れ、アイヌの人々と交流を行う。写真はアットゥシと呼ばれる特有の民族服を着用しアイヌ民謡を観客に向けて披露しているところ。民族衣装に身を包んだKOM_Iの姿も。第3回目となる次回のウタサ祭りは2022年2月12・13日に開催予定となっている。 Photo Taro Mizutani

 
本州北部と主に北海道の先住民族であるアイヌ。日本で広く流通するようになった日本語とは系統の異なるアイヌ語という言語を持ち、自然界の万物に魂が宿っているという精神文化を発端とする舞踊や刺繍や工芸など、独自のカルチャーを生成している文明・文化である。そんなアイヌの人々が今なお寄り合って生活をしている集落がアイヌコタンだ。阿寒湖のほとりに位置するアイヌコタンでは、アイヌの人々が観光客に向けて民芸品を販売したり、彼らの料理を提供したり、伝統的な舞踊を披露しその収益によって生活を営んでいる。
 
「この集落では、アイヌの人々はもちろんですが、アイヌではなく彼らの文化に魅せられ共生をしている人々も多くいます。木彫りや刺繍のアートワーク、アイヌ民謡を今の感性でアレンジして新しいものを生み出そうとしている人達がいて、ここには伝統と進化していく文化がともに存在しているんですよね。自然とそこで暮らす人々からは、こうしたデジタル化の進む今の世の中では学ぶことがとても多いです」。そう語る小口は、2019年よりそうしたアイヌ独自のカルチャーをより多くの人々に知ってもらうため、ウタサ祭りという音楽をベースとしたイベントを主催している。「アイヌの人々と和人のミュージシャンを招致してコラボレーションしてもらうイベントをウタサ祭りと称して毎年2月に開催しています。厳冬期の阿寒では-20度を下回るような気温になりますが、そんな厳しくも美しい自然を堪能できる状況の中で毎年様々な方に参加してもらっているんです。来年3回目を迎える本イベントですが、過去には東京からKOM_IやGEZANのマヒトゥ・ザ・ピーポー、環ROYなどに参加してもらいました。アイヌの音楽性はある意味レイブミュージック的な側面も持っているから、みんなが一体となって体験することができる。毎回参加した誰もが、アイヌの人々が紡いできた独特な音楽性やそこにある自然、そこにある食に完全に惹かれてしまっています(笑)。阿寒を訪れてくれる人やこうしたイベントによって少しでも彼らの文化が様々な人の目に触れ、素晴らしい文化が広まってくれるのを祈っています」。
 
北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉2-1-3
akanainu.jp

Ryogoku Sohonten [Akan]
アイヌの郷土料理、阿寒の地が育んだジビエ
両国総本店


 
アイヌの人々はもともと狩猟民族であったこともあり、熊やアザラシ、鹿などの動物や野菜や山菜などの植物を主な食料として生活を送ってきた。その名残から阿寒周辺では土地の郷土料理として今なお多くのジビエ料理を振る舞うお店が軒を連ねている。その中でも小口が足しげく通うのが両国総本店だ。
 
「これまで自分の中で鹿肉ってどこか臭みがあるイメージで敬遠していたのですが、両国総本店で鹿肉の鉄板焼きを食べてからはそのイメージが覆りました。阿寒の豊かな自然で育っている蝦夷鹿ということもあると思いますが、もう一つ重要なのがハンターの腕。弾一発で仕留められるか否かによって新鮮さが全然変わってくるようです。ここのお店では地域のハンターさんと契約して一番良い状態で仕入れている。こんなに新鮮な鹿肉を食べられる場所はそうそうないと思います」。蝦夷鹿は通常仕留めた後にすぐに捌き、鮮度を損なわないよう冷凍してから出荷されるのが基本のようだが、旬のシーズンの10月・11月の間のみ生の状態のまま仕入れるそう。味わいも格段に変わるようだ。運が良ければ鹿のハツ(心臓)を食べられる日もあるとのこと。「若い料理長が今キッチンを仕切っているのですが、阿寒から一番近い都市の釧路市のクラブでレコードでDJをやっていたりするんですよね。料理一筋というのもかっこいいですが、こうした音楽にまつわる活動もしているところなどがとても阿寒らしさを感じるし、好きなところです」。
 
北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉 2-1-3
0154-67-2773

PROVO [Sapporo]
札幌の音楽シーンの“今”を体験することができる場所
プロボ



 
北海道を中心とした国内外のDJのイベントスペースとして、またミュージシャンのライブやアーティストの個展などカルチャーの発信地としての役割を担っているPROVO(プロボ)。音楽やアートに携わる人々に発表できる場所を確保し、オンラインではない、実際のスペースから生まれる文化を守っていきたいという思いを継続し、今年で18周年を迎える歴史ある空間だ。広々とした店内にはオリジナルで製作したスピーカーやDJブース、ソファやテーブルが無造作に置かれ、アットホームな空間の中で演者と客が一体となって新しいカルチャーを生み出していけるような場所となっている。
 
またプロボは、ディープなカルチャーの間口を拡げるポジションを担っており、フェスでのステージ・ブース展開や、FMラジオプログラムのプロデュース、またレーベルとしてCDのリリース等多岐に渡る飽きさせない活動が常に人を集める要因にもなっている。そして少し遊び方がわかってきた頃に兄貴分のクラブ、プレシャスホールに送り込むという。「アンダーカバーともコラボレーションしていて、今注目されているthe hatchという札幌発のバンドもプロボがホームであったりします。札幌の音楽カルチャーが集約されて、プロボを発信の場・媒介としてちゃんと若い世代に引き継がれていっている。まさに現在進行形で成長していっているこれからのカルチャーを体験できる場所だと思っています」。今の札幌で興るインディペンデントでパワフルな生のカルチャーを体験するなら、プロボで間違いないだろう。
 
北海道札幌市中央区南6条1-2 3F
011-211-4821

Luvworkssound [Sapporo]
土地柄を感じさせる
あくなき音へのこだわり
ラヴワークスサウンド


 
知る人ぞ知るオリジナルオーディオのファクトリーLuvworkssound。まるでテイラーでスーツを仕立ててもらうように、聴きたいジャンルや求める音質をヒアリングし注文に沿った音を体感できるサロンとして営業している。試聴は50年代の管球式mcintoshとALTEC製スピーカーで行い、予約日の3日前から真空管に火を入れることでとろけるような音質になるそう。不定期に喫茶店としても営業を行なっており、開店時には道内外からその音を求めて人が訪れる。「厳しい寒さによって冬は屋内で過ごすことが多い環境からか北海道には素晴らしいオーディオ文化が多く存在します。オーナーの伊藤さんは30代という若さで音に対して並ならぬこだわりを持っていて、そこがすごく札幌的。彼のこだわり抜いた音質は一聴の価値有りです」。
 
北海道札幌市東区北 12条13-1-5
@luvworkssound

JIM CROW [Sapporo]
ソウルの魅力を伝え続ける
すすきのの名店
ジム クロウ


 
「温泉に浸かっているような心地よさがこの場所にはある」。そう小口が話す、すすきののバーJIMCROW。程なく34周年を迎える老舗で、その歴史を物語る5000枚を超えるレコードが所狭しとストックされている。選曲ジャンルは主に70-80年代のソウルミュージック。さらにブラックコンテンポラリーからアシッドジャズ系のソウル、90年代以降のR&Bやネオソウルからその場の雰囲気によって選曲を変えていく。「北海道に住んでいた頃通い詰めていたお店で、オーナーの安藝さんからブラックミュージックとは何かを教わりました。いつ来ても変わらない空間と良い音楽があって、温泉のようにくつろげる場所ですね」。ソウル一筋の店主によるナイスな選曲の中で、お酒とゆっくり流れる時間を堪能する。札幌の夜のシメは、JIM CROWが正解だ。
 
北海道札幌市南5条西2丁目
011-531-8271
 
 
 

Select Daisuke Oguchi Photo Tetsuo Kashiwada Interview & Text Shohei Kawamura

 

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