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ANIMA
THOM YORKE THOM YORKE ANIMA 4th album Released 19 July 2019
Length 48:00 XL Recordings

ANIMA
THOM YORKE THOM YORKE ANIMA 4th album Released 19 July 2019
Length 48:00 XL Recordings

伝えるべき「今」を乗せたアートミュージック

先日渋谷の街に突如このような言葉が記された広告が現れた。「どうして夢は消えてしまうのか?これは昔からよくある話です。
私たちは毎晩のように夢の中ではるか彼方の非現実的でおかしな世界を旅しています。しかし、朝になるとその世界の細部を思い出すことができません。ストーリーすらも覚えていないこともあります。しかしこれはもう過去の話です。ANIMAは『ドリーム・カメラ』を開発しました。 これらのフリーダイヤルにお問い合わせいただければ、夢を何度も何度もお楽しみいただけます」。
 
『ドリーム・カメラ』とは一体何の事か、想像を掻き立てられる意味深な広告で あるが、これはトム・ヨークの新作アルバム「ANIMA」リリース前の予告プロモーション。これが世界各国の主要都市などに展開され、渋谷にもこの広告が貼られていた。デザインは派手なものではなかったが、実際にフリーダイヤルに繋ぐと音声ガイダンスと新作アルバムの一部が試聴できるシステムになっていた。
 
トム・ヨークはレディオヘッド時代から新作を出すごとに膨大な宣伝広告を流す音楽業界のやり方に納得していなかった。20年前にレディオヘッドとして『Kid A』をリリースした際も公式シングルのリリースを発表せず、代わりに風変わりなショートビデオをオンラインにアップしていたこともある。そんな変わらず斜め上を行くトム・ヨークは、今年のフジロックへの出演でも大きな話題となっていた。2年ぶりにリリースされたソロ作品『ANIMA』は、今作も長年の相方としてお馴染みとなったナイジェル・ゴドリッチと共に製作され、いつもに増して内向的なサウンドが多くを占めたアルバムとなっている。不穏な気配に思わず胸騒ぎのするビート・機械音のループ、浮遊感とノイズを展開させ、不気味にすら聴こえるそのサウンドにトム・ヨークのアンニュイなヴォーカルがよく馴染んでいる。トム・ヨークの繊細で神経質なキャラクターが投影された作品だ。
 
彼は今回のアルバム制作に関して一部のメディアには政治や社会の問題を題材にしているとも明かしている。「根本的な構造的変化がない限り、物事は変わらないという考えを持つしかないわけでね。こんなにもたくさんの道化師たちがいる時代にそれを実現させるには、怒りを持つことでしかできないんだよ」。
 
Netflixでは『ANIMA』の着想元である「夢」をテーマにしたショート・フィルムが公開され、意思無く動く人間の集団にトム・ヨークが飲み込まれることに必死に抵抗する描写が描かれている。「僕らはデバイスに言われたことに従うようになり始めていて、振る舞い方まで真似するようになってしまったという現状もある」。トム・ヨークは今回のアルバムを通じて、現実世界をバーチャルが凌駕してしまっていること、つまり政治や社会問題に対しても多くの人間が当事者としての意識を持たず、自ら判断し行動する力が失われつつあり、デバイスの進歩から無差別に発信される情報に何の疑いもなく従い始めている現代の危機的状況を表現し発信しようとしているのではないだろうか。重ための内容ではあるが、聴き返しているうちに癖になってしまう不思議なアルバムだ。ジャ ケットデザインにはスタンリー・ドンウッドとドクター・チョックによる鉛筆画、レコード盤は鮮やかな発色のオレンジワックス二枚組と、アートプロダクトとしても楽しめるのも嬉しい作品。
 
 
 

トム・ヨーク
1968年10月7日生まれ。イギリスを代表するオルタナティブ・ロックバンド、レディオ・ヘッドのフロントマンを務める。近年はソロとしての活動も精力的に行ない、社会貢献活動に も積極的な姿勢をみせている。
www.amazon.co.jp/Anima-AnalogThom-Yorke/dp/B07SZGSZC9

 
 
 

Photo Taijun Hiramoto Select & Text Mayu Kakihata

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