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Maserati
MC20 cielo

Maserati
MC20 cielo

イタリアの伝統と文化を革新する
マセラティ最上級のライフスタイル

地中海に浮かぶ、楽園シチリア島。この地でマセラティの最新モデルMC20 cielo(チェロ)の試乗イベントが行われた。cieloとは空を意味するイタリア語であり、晴れ渡る地中海の空のイメージ。この最新モデルはMC20のカブリオレ、空と風を存分に感じられるオープンカーだ。実際にシチリアで乗ったMC20 cieloは最高だった。単純に速い車に乗る興奮と、ヨーロッパの街並みとシチリアの自然を走り抜ける気持ちよさ。街並みにも自然にも映える、この車の美しさ。

 

ヨーロッパの車、特にイタリアの車の色は綺麗だ。これは私がずっと思ってきたことだ。色ということでいえば、洋服もそうだ。MADE IN ITALYの色の美しさと仕立ての良さは、現代においても他の追従を許さない。それは、豊かな地中海文化と芸術の国の歴史と伝統が生み出したものに違いないだろう。写真に写る代表的なボディカラーの名前はアクアマリーナといい、ただの水色ではなく、光っている水面ような、スモーキーなグレーのような、受ける光によって色が変化していく、なんとも趣深いカラーリングだ。そのカラーリングの色の表情はとてもきれいでスタイリッシュ。このMC20 cielo、色にも大変なこだわりがあるとのことで、最終形までに3度の塗装過程があるという。

 

試乗イベントの中には、ヨットでの地中海クルージングや、天体観測といったロマンと溢れるコンテンツが散りばめられていた。なんと余裕のある贅沢、品の良いラグジュアリーとはこういうことかと、芸術の国イタリアの底力を見せられた気持ちになった。利便性や経済性を追求しすぎた現代社会においては非現実的なこの嗜みを背景に持つマセラティブランドはクルマという工業製品でありながらも、「美しい」とか「心が躍る」、そんな人間の本能に訴えかけてくる文化のひとつなのだと思えた。

 

街でもアウトドアでも、便利で荷物がたくさん積める車。昨今はそういう車が増えすぎたように感じる。でも子供のころを思い出してみると、速くてカッコいい車、スポーツカーに、誰しもが憧れたはずだ。MC20 cieloはそんな子供のような気持ちを蘇らせてくれる。そして、今だからこそ、子供のままの心で、スポーツカーへの憧れを追求するのは、遊び心を持った粋な大人の嗜みだと感じさせてくれる。

 
 
 

Text Takuya Chiba

 

マセラティは、伝統あるイタリアのスポーツカーメーカー。1914年に、5人のマセラティ兄弟によって設立された。いまも強いブランド力を失っていないのは、競争力の高いプロダクトを生み出す力を保ち続けてきたからだ。2022年に発売されたばかりのMC20 cieloは2人乗りで、エンジンを乗員の背後に載せたスポーツカーだ。しかも、乗ったままで地面が触れそうな低い車高と、うえにはね上がるドア、それに走行中でも電動で開閉できるルーフなど、デザインにもとても凝っている。
ハードトップを格納するときはフードが90度ちかく開くのだが、そこに大きくマセラティのシンボルであるトライデント(海神ポセイドンが持つ三叉のホコ)が描かれている。ハードトップの開け閉めのたびに、その伝統のトライデントが、後続車や通行人の目にとびこんでくる。とてもファッション性を感じさせる楽しい遊び心だ。

 

マセラティの名声は、数々のレースでの優勝に由来している。とりわけ有名なのは、シチリアで行われていた国際的な公道レース「タルガフローリオ」。1937年~40年と4年連続で優勝をものにしている。このレースは1906年に、当時イタリア王国でもっとも豊かなひとりだったビンチェンツォ・フローリオという実業家が始めたもの。過酷なレースで、勝利は栄光だった。ポルシェだって、1956年のレースを皮切りに、60年代のタルガフローリオでの活躍を記念して、911タルガというモデルを作ったほど。その名前はいまも続いている。

 

マセラティのトライデントは、そんな歴史も想起させる。まさにマセラティが誇るべき遺産だ。そのトライデントがフードの開け閉めとともに大きく見えるのだから、周囲のクルマ好きも、瞬間的にマセラティの歴史が脳裏によみがえって、嬉しくなってしまうのではないだろうか。

 

グランツーリスモを開拓した
マセラティのヘリテージ

 

クルマ好きにとって、MC20 cieloのおおきな魅力は、過去からのつながりを感じさせるボディデザインにある。マセラティでヘッド・オブ・デザイン(デザインの統括担当)を務めるクラウス・ブッセ氏によると「過去のレーシングカーのイメージを援用しました」となる。とても低い位置にグリルがあって、その左右にヘッドランプがおさまったフェンダーなどに、過去のモデルとのつながりが感じられるのだ。

 

戦前はレースカーというと、葉巻型のボディがあって、車輪は外側。1950年代になって車輪をフェンダーで隠すようになる。ヘッドランプをつける場所といえばフェンダーしかなかった。そのむきだしの機能性が、クルマ好きの心をくすぐる。だからこの時代のレースカーは、いまも人気が高いのだ。MC20 cieloは、その頃のイメージを活かしたデザインだという。「同時に意識したのは、グランツーリスモ(GT)というジャンルを開拓したのがマセラティだったというヘリテージです。マセラティは、1947年にA61500ピニン・ファリーナ(別名1500グランツーリスモ)というモデルを発表しました。レースカーでなく、長距離も走れる高性能車という画期的なモデルでした」ブッセ氏は、美と運転の楽しさと快適性こそ、マセラティが作るGTの魅力で、MC20 cieloでは、そのすべてを意識した、と話す。本当にいいクルマなのだ、MC20 cieloは。

 

こんな楽しいクルマに
乗らないでどうする

 

クルマに多少なりとも興味あるひとならわかってくれると思うが、まずエンジンの感覚がすばらしい。3リッターV型6気筒エンジンは、レースの最高峰F1マシンでも使われている燃焼技術が採用されたもの。「ネットゥーノ」とマセラティが名付けたこのエンジン、アクセルペダルを踏み込んでいくと、ビューンっと威勢よく回転が上がって、パワーが途切れなく湧き出てくるかんじだ。

 

かつてのレーシングカーを意識した、というデザイナーの言葉を性能面でも裏切らない、痛快な感覚だ。ステアリングホイールを切ったときの俊敏な動きや、安心してカーブを曲がっていける操縦安定性などを味わうと、SUVとか高級セダンがいいよね、なんて言っている場合じゃない、という気すらしてくる。こんな楽しいクルマに乗らないでどうする、と言いたいほどだ。トップを開けたときの気持ちよさも特筆もの。ウインドシールドが低いので、運転中に少しだけでも視線を上に動かすと、ウインドシールドの枠の上に空が見える。
クルマっておもしろくて、運転しているとき、空が見えたり、風が感じられたりするだけで、爽快に感じられる。私は、今回、本誌の千葉編集長とふたりで、このMC20 cieloに乗ってシチリアを走った。日本人にとってもさまざまな記憶を想起させるシチリアの南のほうを、オープンで走っていると、なんだかとてもロマンチックな気分になったものだ。

 

このクルマの「cielo(チェロ)」なるネーミングも、私の気分を盛り立ててくれた。従来だったら、MC20 cieloのようなオープンモデルは、スパイダーと呼ばれた。イタリアやフランスで好まれる呼び方で、地を這うような低い車高をもつ、2人乗りのオープンのことだ。マセラティにもスパイダーの名をもつモデルがあるけれど、今回選ばれたのは、独自の「cielo」というサブネーム。冒頭にもあるようにcielo(チェロ)とはイタリア語で空のことだ。

 

オペラ好きのかたなら、ポンキエッリの「ラ・ジョコンダ」の第2幕で披露される「チェロ・エ・マール(空と海)」なんてアリアを思い浮かべるかもしれない。恋人を待つ想いを歌う内容だ。実際、マセラティのMC20 cieloの電動ルーフを開けて、上を見上げると、「ぼくの天使は空から降りてくるのだろうか」という歌詞が思い出されるのだった。むかしからイタリア人は空を見上げて、ロマンチックな空想に浸り、アリアを書き上げたり、もっと前には、神話を作ったりしていたのだろうなあと思いながら、赤茶けた景色のなか、MC20 cieloを走らせたのだった。

 

クルマはスタイルがないと
はじまらない

 

人によっては、鎧のようなクルマを好むかもしれない。あるいは、荷物をたっぷり積んでキャンプに行ったりできるクルマがいいという人もたくさんいるはずだ。もちろん、安全性や機能性も、クルマの大事な部分である。それでも、やっぱりスタイルがないとはじまらない。そう信じる私のような人間にとってMC20 cieloは大いに魅力ある存在なのだ。

 

スポーツカーの最大の魅力は無駄なところ。と言った人がいる。たしかに、ファミリーでは乗れないし、オフロードは走れないし、ゴルフバッグを4つ積むこともできない。できないことが多い。でも、観る、触る、乗る、さまざまな場面で、ひとの気持を昂揚させるのも“性能”と呼べるなら、これほど性能の高い乗りものはない。ファッションが好きなら、スタイルを持つことの重要さを理解してもらえるだろう。

 

シチリアにおけるドライブのゴールは、マリーナディラグーザなるヨットのマリーナ。そこではマセラティが開発に協力した「ムルティ70」なる70フィートのマルチハルのレース用ヨットが待っていて、陽光の下、私たちを地中海の“クルーズ”に連れ出してくれた。マセラティのもつ技術力が可能にした、ぜいたくな体験だ。
 

まさに先に触れたアリア「空と海」ではないか。オペラの国イタリアの生まれというのが関係しているからだろうか、MC20 cieloは、感じさせてくれるものが多いクルマなのは確かだ。人生の退屈さを吹き飛ばしてくれる、希有な存在である。

 

www.maserati.com/jp/ja

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