Loading...

Yataro Matsuura
Producer ヴィンテージウォッチはなぜ時代を超えて愛されるのか

時間を知るための道具であり、装飾品ともいえる腕時計。しかし、スマートフォンで容易に時間を知ることが出来るようになった現代において、腕時計を身に着ける意味は何か。人それぞれ理由はあれど、腕時計を身に着けることで、より時間に対して真摯に向き合うことが出来るはずだ。その行為自体が人生を豊かにするきっかけにも繋がっていく。そして、数ある腕時計の選択肢の中でも、何を選び身に着けるかも重要だ。デザインで選ぶか、時計が持つストーリーに魅力を感じるか、もしくは思い出で選ぶ選択肢もあるはず。ここでは、時を経て受け継がれてきたヴィンテージウォッチの魅力を紹介する。男たちは、機械式のヴィンテージウォッチに何故惹かれていくのか?

Yataro Matsuura
Producer ヴィンテージウォッチはなぜ時代を超えて愛されるのか

時間を知るための道具であり、装飾品ともいえる腕時計。しかし、スマートフォンで容易に時間を知ることが出来るようになった現代において、腕時計を身に着ける意味は何か。人それぞれ理由はあれど、腕時計を身に着けることで、より時間に対して真摯に向き合うことが出来るはずだ。その行為自体が人生を豊かにするきっかけにも繋がっていく。そして、数ある腕時計の選択肢の中でも、何を選び身に着けるかも重要だ。デザインで選ぶか、時計が持つストーリーに魅力を感じるか、もしくは思い出で選ぶ選択肢もあるはず。ここでは、時を経て受け継がれてきたヴィンテージウォッチの魅力を紹介する。男たちは、機械式のヴィンテージウォッチに何故惹かれていくのか?

Rolex Sea Dweller Ref.16660 “COMEX”

すてきな人はみんなロレックスをしていた
松浦 弥太郎

「機械が好きなんです。子どもの頃からずっと。スマホもあるし、街を見渡せばどこかに時計はある。でも、道具として持ってて嬉しい機械。子どもがポケットナイフを持っていたいみたいな気分と同じで、使うことないけれど、持ってると嬉しい。腕時計は、そんな感覚に近いかな。自分にとっての時計の機能は、もう時間を見るってことではなくて身につけることなんです。それを喜んでいるただの子どもみたいな。ただ、着けているとふと、時間の使い方を丁寧にしよう。そんなことを思うんです」。
手仕事によって作り出される精密機器の腕時計。健全な男子であれば、男心をくすぐるのが腕時計である。それに加え、時間に密接な存在という部分も身に着ける意味に繋がると松浦は言う。
「腕時計というのは子どもから大人になった証みたいな存在。自分で行動したり、計画を立てるようになり始めてから、腕時計をつけ始めましたね。その頃から時計を介して、時間とともにあるということを意識するようになりました。時間というのは、無限ではなく、平等に24時間ある中で、その使い方が自分の人生です。時間にいつも追われて過ごすのか、時間を無視してその日暮らしみたいにするのか。まさに、お金みたいな存在ですよね。僕は、お金と時間の使い方は、日々模索しているんですけど、お金より時間の方が価値があると思います。お金は貯められるけれど、時間は貯められない。そう思うと、時間の象徴でもある腕時計は、僕にとって大切な存在なんです。しかも、精密機器だから、ロマンがあるじゃないですか。そんな感じで高校二年生ぐらいの時から腕時計をし始めるようになったわけなんです」。
 
そんな松浦が最も好きなメーカーはロレックス。ロレックスに惹かれるようになったわけを聞くとこう答える。
「10代後半から海外によく行っていました。海外ですてきな人に出会うと、大体ロレックスを着けていたんです。それを見ていつもロレックスに憧れていました」。その後、松浦が20代半ばの時期、日本にアンティークウォッチブームが到来。縁あって、アンティークロレックスディーラーと知り合った松浦は、その販売を一時期手伝うことに。
「その頃からロレックスは憧れでもあり、身近な存在だったんです。コレクションをするというよりも車などと同じで売ったり買ったりを繰り返して来ました。そうこうして足掛け30年ぐらい。長年やっていると時計好きな知人が世界中に増えて、そういう人たちから譲り受けることが多いです」。
そんな松浦のコレクションから紹介してくれた1本は、ロレックスのシードゥエラー。品番は、マニアの中でトリプルシックスと呼ばれる16660である。
「これは、1982年から84年の間に、ロレックスが当時契約していたCOMEXというフランスの潜水調査の会社の為にロゴを入れて生産したモノです。このトリプルシックスの縁無しCOMEXというのは、正規に販売されたモノではなく、COMEXのダイバーのために、およそ100本生産されたうちの1本。マニアックな話になるんですが、ロレックスのCOMEXは、麻雀でいうと役満みたいな存在。手巻きデイトナとかは、玉数がある分、お金があれば買えるんです。でもCOMEXは、玉数がないからなかなか買えないんです。これも知人から譲ってもらった1本です。このシードゥエラーのCOMEXトリプルシックスは、一見デイトナやGMTみたいに主張はないんですよ。知らない人から見たらただの時計というか。古くもないし、80年代のダイバーウォッチですからね。一見普通でなんでもないんだけど、わかる人が見たら物凄く価値があるのがいいですよね。自分の中でのこだわりを満たしてくれる上で、目立たなくて日常使いできる感じに惹かれています。ヴィンテージロレックスはスポーツモデルを何本かコレクションしていますが、このCOMEXが一番好きですね。僕は、人と人との関係性の中で腕時計に出会ったりすることが多いので、そういうストーリーを含めて大事にしたいと思っています」。

 
 

松浦 弥太郎
1965年、東京都生まれ。エッセイスト、クリエイティブディレクター。(株)キホン代表。2006年から2015年まで「暮しの手帖」編集長を務める。

Related article