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Tsuyoshi Noguchi
Once in a Lifetime T-shirts 出会った瞬間しか手にできない 一期一会のTシャツ

その瞬間にしか出会えないものに価値がある。それはTシャツでも同じこと。写真に魅せられ、世界中のフォトグラファーのプリントを数多く所有しているスタイリスト野口強は、同様にフォトTシャツのコレクターとしてもよく知られている。数量限定でリリースされたコラボものから、有名ミュージシャンのもの、個展で手刷りで刷られた1点ものまで。出会った瞬間を逃せば、一生手に入らないかもしれない。その価値は時間とともにどんどん上がっていく。まさに“一期一会”。そんなTシャツについて、貴重な品の数々とともに大切な思いを語ってもらった。

Tsuyoshi Noguchi
Once in a Lifetime T-shirts 出会った瞬間しか手にできない 一期一会のTシャツ

その瞬間にしか出会えないものに価値がある。それはTシャツでも同じこと。写真に魅せられ、世界中のフォトグラファーのプリントを数多く所有しているスタイリスト野口強は、同様にフォトTシャツのコレクターとしてもよく知られている。数量限定でリリースされたコラボものから、有名ミュージシャンのもの、個展で手刷りで刷られた1点ものまで。出会った瞬間を逃せば、一生手に入らないかもしれない。その価値は時間とともにどんどん上がっていく。まさに“一期一会”。そんなTシャツについて、貴重な品の数々とともに大切な思いを語ってもらった。

その時にしか買えない
Tシャツは必ず買う 野口強

Richard Avedon
1994年、NYのホイットニー・ミュージアムで開催されたフォトグラファー、リチャード・アヴェドンの個展を記念して販売されたTシャツ。アヴェドンの撮影したKiller Joe Piroが大胆にプリントされた1枚は、その希少性とデザイン性の高さから25年以上経った今も高い人気を集め、ネットオークションでは高値で取引される。

Bruce Weber
80年代、絶大な支持を集めた写真家ブルース・ウェーバーのフォトTシャツ。ブルーやピンクでプリントされたインパクトあるグラフィックが印象的。中央は映画「LET’S GET LOST」の公開時にアニエス・ベーより発売されたもの。彼のTシャツは当時、原宿の「アストアロボット」などのショップでのみ購入できたという。

 
 

Tシャツを額装して楽しんでいた

「これはアヴェドン、これはテリー・リチャードソン、これはメイプルソープ…」Tシャツを紹介する野口強の口からは次々と世界的フォトグラファーの名前が飛び出してくる。今回の取材に際し、持参してくれたTシャツは20枚以上。もちろんそれは膨大なコレクションの中のほんの一部にほかならない。なぜ野口はフォトTシャツに魅せられているのだろうか。そんな問いからインタビューは始まった。
 
「もともと写真集が好きで、Tシャツも好きだから。そういう写真家のTシャツって、セレクトショップでも少しは売ってはいたけど、基本はギャラリーや写真展でしか出会えないものだったので、最初はそういった場所で手に入れていました。80年代ですね。あと昔は高価な写真プリントを買えなかったという理由もあった。フォトTシャツを額装して、自分なりに楽しんでいました」。現在こうした写真展限定で販売されたTシャツは、驚くほど価値が上がっている。例えば前ページに掲載したリチャード・アヴェドンのTシャツは、94年にNYのホイットニー・ミュージアムで個展開催時に販売されたものだが、今ではオークションサイトで数万円の値がつけられている。「最初は数千円だったのにね。でも金額って結果論として上がっていくもの。自分はどんな写真展に行っても、その時にしか買えないものは必ず買うんです。バンバン売られるものより、短い期間のスポットアイテムの方がそそる。そういえば、この間あるTシャツが100万円で落札されていたけど、自分はそういう買い方はしないです。実体験のもとゲットしたいから、いくらコンディションがよくても100万円のTシャツは買わない。例えばこのカート・コバーンのTシャツはナンバーナインのアニバーサリーTだけど、奥さんのコートニー・ラブを撮影した時にサインしてもらったもの。そうやって付加価値を自分で付けていくのもいいと思うんです」。その瞬間でしか味わえないものを実体験の元手に入れる。お金では決して買えない価値がそこにはある。

Kurt Cobain
妻のコートニー・ラブのワンピースを着用したカート・コバーンの姿が印象的な本作は、ナンバーナイン設立9周年のタイミングでヒステリック・グラマーとコラボし、リリースされた限定のアニバーサリーアイテム。仕事でコートニー・ラブを撮影した際に書いてもらったというメッセージが目を惹く、野口だけの超貴重な1枚。

Richard Avedon
70年代、リチャード・アヴェドンが撮影したジュングループのコミッションワークである「ジュンロペ」のCM映像をコラージュしたTシャツ。そのCMが好きだった野口が本人に直接オファーし、形にした1枚。レディースブランドのロペでの展開のため、サイズが合わず、残念ながら着ることはできなかったという。

Hedi Slimane
2011年リリースされた、野口が手がけるStie-loとエディ・スリマンのコラボTシャツ。ユニオンジャックをギターにかけた写真がプリントされた本作は、木のフレームをレザーで全部包み、エンボス加工され、シリアルナンバーを入れたボックスに収納されて販売。日本限定100セット、21万円という価格でも話題を集めた。

Terry Richardson
LAで2012年に開催されたテリー・リチャードソンの写真展を訪れた野口がプリントに一目惚れ。仕事を一緒にしたことがあったため、本人に直接連絡してOKを取り付け完成した1枚。ビューティー アンドユース ユナイテッドアローズで販売された。こちらの写真は、写真集「TERRYWOOD」でも目にすることができる。

Sam Haskins
1964年に出版されたサム・ハスキンスの名作『Cowboy Kate& Other Stories』のカバー写真を使用したTシャツ。もともとプリントを購入・所有していた野口が、ギャラリーを通じて夫人と連絡を取り使用の許諾を得たという。レディースブランド、マウジーからリリースされ、数万枚のセールスを記録する人気商品となった。

 
 

愛すがゆえに自ら生み出す

フォトTシャツを愛し続ける野口は、好きが高じて自分でも作るようになりたいと考えるようになったという。「写真展に行っても、“こっちの写真でTシャツを作った方がいいのにな”、とか思うようになってきて。スタイリストの仕事と繋がりを生かして、カメラマンに直接頼んで、自分の事務所でTシャツを作るようになった。写真展で写真も買ってるから、ギャラリーを通してアプローチしたこともありました」。上に掲載したフォトTシャツはそんな野口が制作に携わったものの一部。リチャード・アヴェドン、エディ・スリマン、テリー・リチャードソン、サム・ハスキンス。ファッション業界では知らないものはいないであろう錚々たる顔ぶれだ。特に一番左のアヴェドンのTシャツには深い思い入れがあるという。「70年代の“SOUL TRAIN”というダンス番組で、アヴェドンが撮影したジュン ロペのCMが流れていたんです。若い頃そのCMがすごく好きだったから、アニバーサリーで仕事の依頼を受けた時、その映像を使ってTシャツを作りたいと思ってダメもとでアヴェドンにオファーしたら、“いいよ”って言ってもらえた。高校生の時に憧れていたものを形にできるなんてラッキーだったし、完成した時は嬉しかった」。自分が憧れ、大好きだったものを自分の仕事として世に発表した1枚は、ただのフォトTではない彼だけの価値がある。
 
 
一番苦労したというエディ・スリマンとのTシャツ。「エディがサンローランをやめた時に作ったんです。彼はTシャツのボディの生地、プリント、それぞれにこだわりがあって。“単にTシャツを売りたくないから、アートとして売ってくれ”っていうリクエストがあったりして。エディションにして、写真のカードを入れて、ギャランティにして、本人にサインを書いてもらって、ボックスに入れることにしたんです。限定100枚で作ったんですが、データのやりとりも大変で、完成するまで2年くらいかかりました」。時間をかけたという意味でも思い出深い1枚とのこと。LAの写真展を見て本人に連絡し、実現させたというテリー・リチャードソンとのフォトT、そしてもともと写真プリントを持っていたことから、ギャラリーを通して夫人とやりとりして作り上げたというサム・ハスキンスとのものなど、ここに紹介した4枚には濃厚なストーリーが詰まっている。他にもロバート・メープルソープ、ボブ・リチャードソンにジャンルー・シーフ、森山大道など、数多くの世界的フォトグラファーとTシャツを作ってきた野口。フォトTシャツを愛すがゆえに自ら生み出す。彼にとってはそれにかける時間もまた特別なのだ。

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