メゾン×ストリートカルチャーの集大成
ハイブランドとストリートブランドのコラボレーションは近年多くみられるようになってきたが、このコラボレーションが1つの終着点のように思える。ディオールのメンズアーティスティックディレクターであるキム・ジョーンズは大学時代、STUSSY UKの中心人物でありイギリスのストリートシーンを牽引するマイケル・コッペルマンが設立したブランド『GIMME 5』で働いていた経験を持ち、その頃の経験が彼のストリートマインドを養っていった。彼のそういった感覚はルイ・ヴィトン時代のシュプリームやフラグメント デザインとのコラボレーション、ディオールでのショーン・ステューシーとのコラボレーションなどからも分かることだろう。そんな彼が満を持して展開する今回のエア ジョーダンとのコレクションは、現在のメゾンやハイブランドとストリートカルチャーのコラボレーションの集大成としての彼なりの1つの答えなのかもしれない。だからこそストリートカルチャーを象徴するといっても過言ではないエア・ジョーダン1をセレクトしたのではないだろうか。高品質なイタリア製レザーを使用したホワイト/グレーのアッパーに、ディオールのモノグラムが散りばめられたスウッシュ。通常“AIR JORDAN”のテキストが配されるウイングロゴは“AIR DIOR”に置き換えられるなどスペシャルな仕様の一足となる。
Air Jordan 1 High OG Dior Sneaker ¥240000 by DIOR (CHRISTIAN DIOR)
再び注目を集めるヴィンテージの復刻
ナイキのエアマックスなどコム デ ギャルソン・オム プリュスのラインでは継続して90年代のストリートを彩った名作シューズとコラボレーションをするなど、同ブランド全体でストリートカルチャーに対してエールを送っている。こちらは1977年に誕生したヴィンテージスニーカーを代表するナイキのワッフルレーサーを切りっぱなしによるスウッシュやオールブラックのディテールで再構築したスタイリッシュな印象の一足。ワッフルレーサー自体も、近年ではヴァージル・アブローが自身のブランドでコラボレーションをするなど、ストリートにおいて再び注目が集まってきている。
Waffle Racer 2 ¥25000 by BLACK Comme des Garçons (Comme des Garçons)
パートナーシップによる新しい価値の創造
2019年秋冬シーズンからスタートした自然をインスピレーション源とするジル サンダーの新ライン、ジル サンダー+。『+(プラス)』には、素材や性能へのこだわりや専門分野に特化した企業とのパートナーシップという意味合いが込められている。昨シーズンに引き続きコラボレーターとしてセレクトするのは、英国の歴史あるブランド、マッキントッシュ。世界でも有数のコートブランドとしても名高い同ブランドだが、キコ・コスタディノフをデザイナーに迎えたコレクションラインなど常に新しい分野への挑戦を続けるストリート的アティチュードが伺える。本アイテムはそんなマッキントッシュのゴム引きコートを、リラックスムード漂うシルエットやワンポイントの白が映える洗練された色使いを用いて再構築した。
Coat ¥359000 by JIL SANDER+ (JIL SANDER JAPAN)
ストリートの新たな価値観を生んだ象徴的アイテム
1997年に登場し、90年代のストリートを彩った赤いラインが特徴のプラダ リネア・ロッサ。2018年に復刻を果たした、かつてプラダスポーツと呼ばれた本コレクションは、スポーツウエアをスタイリッシュに再解釈。今のストリート的ファッション感覚であったり、世間的にも普通になってきている高級ホテルやファンシーなレストランにスウェットやナイロンパンツで行くことやビジネスの場でスポーツウエアを着るという行為も、このプラダスポーツによる功績が大きいだろう。シンプルな佇まいの中にも、止水ジップや大容量のポケットなど機能性は抜群。独特の高級感あるナイロン地のボディに赤いエンブレムのディテールが映える。
Nylon Jacket ¥288000 [Reference Price] by PRADA Linea Rossa (PRADA CLIENT SERVICE)
変遷する時代の中で物事の本質を再考する
『プラスチック』と題され、言葉は時代によってその意味が移り変わっていくという裏テーマが設けられたオフ-ホワイト™の今季のコレクション。綺麗なシルエットのまっさらなブレザーをキャンバス代わりに、NYが生んだグラフィティ界のストリートレジェンドであるフューチュラの作品があしらわれた本アイテムが表すのは、かつては利便性の象徴であったプラスチックという言葉が現代では真逆の大量消費の代名詞として用いられているように、グラフィティアーティストの行うヴァンダリズム(=破壊行為)も肯定的な意味合いに移り変わっていくのではないかというメッセージ。時代によって言葉の意味は変われども、自分が本当に良いものは残していくべきだという物事の本質について再考する機会を与えてくれるアイテムだ。
Jacket ¥262000 Pants ¥121000 by OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOHTM (eastland)
イギリスのリアルなストリートを感じる
ヴァージル・アブローのアシスタントとして活躍していたサミュエル・ロスが立ち上げた同ブランドの根底にはイギリスのストリートカルチャーが根付く。イギリスに現在も存在する階級制度やワークウエアを着ているようなリアルな労働者の仕組みから受けたインスピレーションに、建築構造や工業資材などインダストリアルな要素をミックスさせコレクションを構築。本アイテムからも分かるようにシルエットやパターンがとても構築的。細かなディテールを見てみても抜かりなくデザインされている事が分かる。
Vest ¥44000 by A-COLD-WALL (UNION TOKYO)
ストリートから培ったマインドをモダンに昇華
これまでも様々なアイテムに落とし込まれてきた、ブランドが得意とする身幅が広く着丈の短いボックスシルエット。今季はワークジャケットにインスピレーションを受け、ベースを構築しながらも、洗練されたプリーツ使いや裏地に用いられたストライプ柄のスーツ地、袖口のふくよかなディテールなどデザイナーがストリートから培ってきたエッセンスを昇華させたクラシカルかつモダンな仕上がり。ハリのあるウール地によって着た時に立体感が出るのも特徴。OAMCらしい無駄を削ぎ落としたエレガントさが宿る逸品。
Ward Blouson ¥127500 by OAMC (EDSTRÖM OFFICE)