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The Aesthetics of Ageing 経年変化の美学

モノは使われるほどに傷つき、色は褪せ、ついには輝きを失ってしまう。そうしてまた新しいモノが手に取られ、古いモノは捨てられるだけでなく、記憶の中からも消えてゆく。これは、消費社会と呼ばれる現代だからこそ生まれる不幸な価値観だ。そして、そこに対するアンチテーゼが経年変化という美学である。
経年変化とは、時を重ねるうちにモノの性質や性能に変化が起こることを指す。その不可逆な関係性に価値を見出し、自分と共にモノを育てることができれば、それは劣化するどころか新たな表情を見せ始める。それこそ、モノに対する愛情というものだ。そのことを意識したものづくりを行う4人に経年変化の美学を聞いた。

The Aesthetics of Ageing 経年変化の美学

モノは使われるほどに傷つき、色は褪せ、ついには輝きを失ってしまう。そうしてまた新しいモノが手に取られ、古いモノは捨てられるだけでなく、記憶の中からも消えてゆく。これは、消費社会と呼ばれる現代だからこそ生まれる不幸な価値観だ。そして、そこに対するアンチテーゼが経年変化という美学である。
経年変化とは、時を重ねるうちにモノの性質や性能に変化が起こることを指す。その不可逆な関係性に価値を見出し、自分と共にモノを育てることができれば、それは劣化するどころか新たな表情を見せ始める。それこそ、モノに対する愛情というものだ。そのことを意識したものづくりを行う4人に経年変化の美学を聞いた。

Hideki Tohno
PHIGVEL Designer

7 years of use
Truckers Wallet
1950年代のトラッカーウォレットをベースにし、控えめな型押しの柄やボタンを1つにすることによって、モダンな上品さを生んでいる。東野が7年間使用したことで、ブラウンが徐々に表に出てブラックと混ざり合った深い色合いを生んでいる。
Wallet [Designer’s Own] by PHIGVEL (PROD)
経年変化は人の内面を映し出す
東野英樹

キャッシュレス化が進み、スマートフォンさえあればお金のやり取りが済む現代。効率的で便利だが、どこか無機質でスタイルもない。だからこそ、長く使い込まれた革財布を扱う仕草に男らしさを感じるのかもしれない。フィグベルのトラッカーウォレットは、そんな無骨さを感じさせながらも、繊細で上品さを兼ね備えている。同ブランドのデザイナーである東野は、アイテムを作っていく上でこのようなことを心掛けていると言う。「友人やスタッフの着用しているモノを見て、色の変化や生地感の微差を検証し、時間が経ったときの状態を想像しながらものづくりをしています。そうして生まれるアイテム一つにしても、人による扱い方や着用の仕方で全く違う雰囲気を醸し出すんです。しっかりとケアをしながら丁寧に使ってもらえたら嬉しい。そうすることで愛着だけでなく、品が生まれると思うんですよね」。長く使えばプロダクトを持つ人の主観的な感情である愛着だけでなく、品が滲み出るという東野。つまりは経年変化したアイテムから、それを使う人間の本当の姿が見えてくるというわけだ。そんな視点でモノを見たことがなかったが、そうして見てみると実におもしろいし、モノに対する興味も強くなる。今回見せてもらったトラッカーウォレットは、東野自身が7年間使用しているというモノ。ヌメ革の色味は深みを増し、コインケース部分のファスナー跡がくっきりと刻まれ、いつもズボンのポケットに入れ、肌身離さず持っていたことが伺える。モノを大切に身につける東野のライフスタイルや気骨を感じさせる独特の美しさがある。「50年代のトラッカーウォレットを参考にしたのですが、当時のモノはサイズが大きいので、モダンで収まりのよいサイズ感が欲しくなって作りました。また、艶と色のフェード感も意識しています。昔のエンジニアブーツやワークシューズなどでトップの色が抜けて下地の色が出てくるような風合いが好きなので、それをウォレットに置き換えました。モノが溢れている今だからこそ、一点一点によりフォーカスして作っていきたいですね。それがアイテムを大切にすることにも繋がるのではないでしょうか」。モノを大切にし、丁寧に扱うことによってそのモノを持つ人も輝く。タフで品格のあるフィグベルのプロダクトは長く使うことによってそんな魅力を引き出してくれる。長く愛用され、かっこいいと感じさせるような経年変化は、それを持つ人間が魅力的だからこそ生まれるものなのだと改めて痛感させられた。
 
 

東野英樹

2002年に“NEW CLASSIC”をコンセプトとしたPHIGVELを創設。普遍的なアメリカンカジュアルを再解釈したアイテムは、良質な素材が用いられ、パターンやディテールが繊細に作り込まれ、男らしさと上品さを兼ね備えたモダンなクラシックを体現している。

 
 
 

Photo Taijun Hiramoto Interview & Text Yutaro Okamoto Edit Satoru Komura Yutaro Okamoto

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