時間と共にその白い輝きが燻され、重厚感を増していくシルバージュエリー。その中でも100年以上の歴史を持つネイティブアメリカンジュエリーに魅了され、それに日本人としてのアイデンティティを重ねたものづくりを行うのが、林田吉史によるラリースミスだ。彼が作り出すシルバーアクセサリーは、どのような経年変化の美学に基づいているのか。
今回見せてもらったのは、林田が10年間愛用している“カゼキリ”というシルバーのフェザーネックレス。時間と共に酸化し燻されたその銀は、より深みを増し、存在感のある輝きを放っている。「いろんな移動をして、いろんな人に会って、そういう時間を経ていくうちに付いていった色だと思うんです。共に過ごしてきた時間を純粋に感じますよね。長く使ったらこうなるってだけのものですけど、時間が経つにつれてより愛着を持てるようになれました。モノを超越するというか、思い出とか思い入れが重なってくる。そういうメッセージを身につけている感覚です。
これまでにいろんな人のためにカゼキリを1つ1つ手で彫り込んできました。同じモノは2つとないんです。それらのネックレスが人の手に渡った後の姿も多く見てきましたけど、どれもカッコイイんですよ。良い色って、機械ではなくて人が身に付けたことで表れてくるのだと思います」。世の中に自分と同じ人がいないように、ラリースミスのカゼキリも2つとして同じモノは存在しない。そのオリジナリティこそが、林田のシルバーの深みを強めていく。「使う人の思いや感覚も大事なんだと思います。手に入れてから長く大切に所有する事で、他人とは違う自分だけの思いが詰まった特別な1枚羽になっていく感じが好きなんです」。
ラリースミスを象徴するアイテムの1つであるカゼキリは、空の王者であるゴールデンイーグルが舵を切るために最も重要な役目を果たす風切り羽に由来する。「ものづくりをする上で、自分なりのメッセージを込めることが大切だと思います。この風切羽には“未来を切り開いていく”というコンセプトがあります。長く大切に使えば、年輪みたいに燻しが何層にも折り重なり、自分だけの色を持つカゼキリになると思います」。その使い方次第でカッコよさに磨きがかかり、カゼキリというシルバージュエリーに唯一無二の輝きを与える。経年変化したラリースミスのシルバージュエリーには、そんな魅力が詰まっている。
林田吉史
2009年にLARRY SMITHをスタート。ネイティブアメリカンの伝統的な手法に敬意を払い、時間をかけてスタイルとスピリットを一点一点に掘り込むモノづくりを続けている。
Photo Taijun Hiramoto | Interview & Text Yutaro Okamoto | Edit Satoru Komura Yutaro Okamoto |