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Street Chronicle 100 Cases

Street Chronicle 100 Cases

ストリートとファッションを巡るヒストリー
ファッションシーンにおいてストリートが欠かせない重要な存在となった背景には、どんな歴史があったのか。様々な見解があるだろうが、ここではストリートがファッション界に影響を与えた物語性を持つ”事件”であり、同時に現代に繋がっているケースを100項目、抽出して振り返る。

 


 

ストリート史前の出来事
マルコム・マクラーレン
一見、相反するものとして捉えられてきたストリートとモード。現代のように、ファッションシーンにおいてストリートが欠かせない重要な存在になっていった背景には、どのようなヒストリーがあったのかを辿る。ただ、ストリートカルチャーはステューシーをスタートさせた1980年と仮定し、2020年現在に至るまで変遷を追ってみたいと思う。

 

 

と、その前に触れておかなければいけないのが70年代における重要な出来事、いわゆるストリート先史時代の話だ。つまり、HIPHOP誕生とファッションとの邂逅について。キーパーソンはマルコム・マクラーレン。ファッションと音楽の密な関連性、パンクからHIPHOPへと自らのクリエイションを変化させ続けた人物の遍歴について触れておく。マルコム・マクラーレンがセックスピストルズのマネージャーであり、ヴィヴィアン・ウエストウッドとブティック、「LetI tRock(≒SEX)」を運営していたのはご存知の通り。マルコムは明確なパンクのファッション像を作り上げた後、アフリカ・バンバータと出会いHIPHOPに目覚めた。未知のサウンドはマルコムに衝撃を与え、HIPHOPこそ黒人によるパンクだと確信させる。その直後、1982年にNYストリートにいたワールド・フェイマス・シュプリーム・チーム・ショウと制作したのが「Buffalo Gals」。同年、世界初のHIPHOPムービーであり、今でも重要なスタイルサンプルとして認知されている映画『WiLD STYLE』が公開され、グラフィティやブロンクスを中心としたNYストリートのシーンが世界に発信された。

 

 

この頃に「LONDON NITE」のファッションコンテストで優勝した藤原ヒロシがロンドンでマルコムらと親睦を深めている。生まれたてのHIPHOPはストリートそのものであり、真新しいユースカルチャーとして広まっていくことになる。そして、1984年にマルコムらがリリースしたEP『Would Ya Like More Scratchin』ではアートワークを、当時はストリートアート界のフレッシュなアーティストであったキース・ヘリングが担当。1990年リリースのLP『ROUND THE OUTSIDE! ROUND THE OUTSIDE!』ではショーン・ステューシーがアートワークを提供した。この報酬としてマルコムはショーンに何を渡したのだろうか。ストリートマナーに則って、自らがデザインしたスーツのセットアップをプレゼントしていたのでは、と想像して今を思うと楽しくなる。この2作品をピックアップしただけでも、80年代からファッションとHIPHOP、ポップアートがストリートを基軸としてクロスオーバーしていることが窺える。

1984年リリースのMalcolm McLaren & The World’s Famous Supreme Team Show『Would Ya Like More Scratchin』。ジャケットのアートワークは見ての通り、キース・ヘリングが担当。HIPHOPとファッション、ストリートアートの新たなクリエイションの形が提示された。
※LPは編集部私物

1990年リリースのMALCOLM McLAREN & WORLD’S FAMOUS SUPREME TEAMが『ROUND THE OUTSIDE! ROUND THE OUTSIDE!』。アートワークはショーン・ステューシーによるもの。この作品を前にして思えば、現状のファッション的動向に確かな必然性すら感じられる。

 


Malcolm Mclaren

 

1971
Malcolm McLarenがVivienne Westwoodと共にファッションのブティック“Let It Rock”を開店

 

1974
“Let It Rock”の店名が“SEX”に改名

 

1975
Malcolm McLarenがマネージメントするパンクバンド、Sex Pistols活動開始

 

1976
“SEX”の店名が”SEDITIONARIES”に改名

 

1978
Sex Pistols 活動休止

 

1979
FATBACK BANDの「King Tim III(Personality Jock)」がリリース
The Sugarhill Gangの「Rapper’s Delight」ビルボードトップ40入り
World Famous Supreme Team Showがラジオ番組のクルーとして登場
“SEDITIONARIES”が“World’s End”に改名

Shawn Stussy

 

1980
Shawn StussyがStussyをスタート
Malcolm McLarenがBow Wow Wowをマネージメント
Keith HaringがNYでサブウェイ・ドローイングを行い話題に

 

1981
Eric SwensonとFausto VitelloがThrasherマガジンをスタート
Malcolm McLarenがブロンクスでAfrika Bambaataaと出会い、HIPHOPカルチャーに触れる

 

1982
Malcolm McLaren & The World’s Famous Supreme Team Showがシングル「Buffalo Gals」をリリース
世界初のHIPHOPムービー『Wild Style』が公開

 

1983
Malcolm McLaren & The World’s Famous Supreme Team Showが 「Buffalo Gals」収録のアルバム『Duck Rock』をリリース
James Jebbiaがイギリスからアメリカに渡り、NYのスケートセレクトショップ、Parachuteに勤務

 

1984
Malcolm McLaren & The World’s Famous Supreme Team Showが 『Would Ya Like More Scratchin』リリース。
アートワークをKeith Haringが担当日本におけるスケートチームの先駆けである“T19”が結成
Russell SimmonsとRick RubinがDef Jam Recordingsを設立

 

Hiroshi Fujiwara

 

1985
藤原ヒロシと高木完によるタイニー・パンクスが始動
John Mooreによるショップ兼スタジオ、THE HOUSE OF BEAUTY & CULTUREの設立にJudy BlameがChristopher Nemethらと参加
1986
Run-D.M.C.が『Raising Hell』をリリース。HIPHOP黄金期の幕開け

 

1987
藤原ヒロシと高木完による連載『LAST ORGY』が雑誌「宝島」にて開始

 

1988
THE WILD BUNCHの『FRIENDS AND COUNTRYMEN』がリリース
N.W.Aが『Straight Outta Compton 』をリリース。
2015年に同名の映画が公開

 

1989
Michael Koppelmanがロンドンでブランド兼ショップ、GIMME FIVEをスタート。スタッフとしてKim Jonesが勤務James
JebbiaがUNION NYをオープン
高橋盾によるUNDERCOVERスタート

 

90年代のHIPHOP黄金期と
ストリートブランドの興起
80年代も後半に入ると、いよいよHIPHOP黄金期の幕開け。日本でも、藤原ヒロシと高木完が「タイニーパンクス」を結成し、HIPHOPカルチャーは浸透していった。世界各地でストリート発の新たなクリエイションが生まれ続ける中、ロンドンでは1989年にブランド兼ショップの「ギミーファイブ」がスタート。創始者はマイケル・コッペルマン、彼こそがストリートブランドをファッションとして世に知らしめていくことになる人物。ちなみに若かりし頃のキム・ジョーンズも働いていた。彼もまた、ブライトンに住むユースの1人としてパンクハードコアキッズやスケーターとストリートでたむろしていたのだろう。

 

 

一方、NYのソーホーでは、後にSupremeを設立するイギリスから渡ってきたジェームス・ジャビアが「ユニオン」をオープンさせ、世界的にストリートブランドがキッズの支持を獲得していく流れが出来上がっていった。90年代に入り、東京でもストリートカルチャーが興隆期を迎える。1993年にはNIGO®が「ア・ベイシング・エイプ」をスタート、アンダーカバーの高橋盾とともにノーウェアを創業させる。”裏原”が本格的な盛り上がりを見せる最中、翌年の1994年、NYのラファイエットストリートには「シュプリーム」がオープンした。ストリートはファッション界にとっても看過できない大きな存在となり、モードからの呼びかけにより接近していく。その端的な例が、1996年に発表されたヘルムートラングとルイ・ヴィトンのコラボレコードバッグのビジュアルに、グランドマスター・フラッシュが出演していることだ。スケート方面の動向において、フォーカスすべきは、1991年に発表されたスパイク・ジョーンズによる伝説的スケートムービー『Video Days』だろう。中でもマーク・ゴンザレスのパートにジョン・コルトレーンの「Traneing In」が採用されていたことは衝撃的だった。ジャズとスケートにクリエイティビティの共通項を見出して、それまでの定石であったパンクやHIPHOP以外の音楽をスケートビデオにミックスさせたわけだ。その後、スパイク・ジョーンズは1999年に映画監督としてデビュー、初監督作品にしてアカデミー賞にノミネートされ、ストリートからレッドカーペットへ。

 


 

1990
MALCOLM McLAREN & WORLD’S FAMOUS SUPREME TEAMが『ROUND THE OUTSIDE! ROUND THE OUTSIDE!』をリリース。
アートワークをShawn Stussyが担当
Keith Haring死去

 

1991
Suge KnightとDr. DreがDeath Row Recordsを設立
2PACがDigital Undergroundのメンバー(MC NY)としてレコードリリース。
その後『2Pacalypse Now』を発表しソロデビュー
Stussy NYCがオープン
Spike Jonzeが監督のスケートビデオ『Video Days』発表。
Mark GonzalesのパートにJohn Coltraneの「Traneing In」をBGMに採用

 

NIGO®︎

 

1993Zoo Yorkがスタート
NIGO®によるA BATHING APE® スタート。NOWHEREがオープン
björkのデビュー作『Debut』のアートディレクションをJudy Blameが担当

 

1994
SupremeのショップがラファイエットストリートにオープンThe Notorious B.I.G.のデビュー作『Ready to Die』リリースNEIGHBORHOOD創業

 

1995
RAF SIMONSスタート
Larry Clark監督映画『KIDS』公開

 

1996
2PACがMike Tysonのファイト観戦後に銃撃され死去
Helmut Lang×Louis VuittonのDJボックス発売。
ビジュアルにGrandmaster Flashを起用
JAY-Zがデビューアルバム『Reasonable Doubt』をリリースし、翌年にRoc-A-Fella Recordsを設立

 

1997
The Notorious B.I.G.がHIPHOP誌主催のパーティ後に銃撃され死去
Zoo Yorkの1stスケートビデオ『Mixtape』発表
The NeptunesがN.O.R.E.の「Superthug」をプロデュースしビルボード36位に

 

1998
SupremeとKeith Haringがコラボレート

 

1999
Spike Jonzeが『マルコヴィッチの穴』で映画監督デビュー
KAWS×Calvin Kleinのコラボビジュアルポスターが話題に

 


 

ストリートはメインストリームに
キム・ジョーンズとヴァージル
90年代に華咲いたストリートカルチャーは、その柔軟性を活かし様々なカルチャーとミックスされながら進化を続け2000年代へ突入。90年代をリアルタイムで過ごしたキッズは、この年代に入ると次世代のクリエイター、アーティストとして頭角を現し、彼らによってストリートとモードの距離感は、さらに狭められていった。ザ・ネプチューンズ、N.E.R.Dで活躍していたファレル・ウィリアムスはHIPHOPやストリートファッションの新たな価値観を提示しつつ、ハイブランドとも積極的に交流。東京に注目しNIGO®と「ビリオネアボーイズクラブ」を2004年にスタートさせた。同年、NYのソーホーに「BAPE STORE® NEW YORK」がオープンしたことは、東京のストリートにとってメモリアルな出来事だ。そして、キム・ジョーンズは2011年に「ルイ・ヴィトン」のアーティスティックディレクターに就任する。このことにより、2016年には「ルイ・ヴィトン」と藤原ヒロシの「フラグメント」とコラボしポップアップを開催。東京はもちろん、世界を大いに騒がせた出来事だった。

 

 

2013年には、ヴァージル・アブローが「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」をスタートさせ、いわゆるハイストリートと言われるスタイルが世間に浸透していった。2010年代の重大トピックの1つが2017年、世界中で騒ぎになった「シュプリーム×ルイ・ヴィトン」のコラボレーション。もはやストリートとモードのタッグは必然とも言える時期を経て、2018年にキム・ジョーンズは「ディオール」に、ヴァージル・アブローが「ルイ・ヴィトン」のアーティスティックディレクターに就任する。2020クルーズコレクションでキム・ジョーンズによって「ディオール」と「ステューシー」が邂逅を果たし、ショーン・ステューシー自身がディレクションを担当。今年に入って「ディオール×ナイキ」のカプセルコレクション、AIR DIORが発表されたわけだ。

 

 

そんなディオールが先日のパリコレで発表した2020-21のメンズウィンターコレクションでは、キム・ジョーンズが敬愛するアートディレクターでありスタイリストのジュディ・ブレイムに思いを馳せたショーが披露された。ジュディ・ブレイムは前述のストリート先史時代から連綿と続くパンクファッションをアートとして表現していた人物。70年代に生まれたスタイルが現在、メゾンブランドのプロダクトに溶け込んでいったのだ。そして今年、NIGO®は「ルイ・ヴィトン」とコラボレートするとの情報が既にリークされている。ストリートがメゾンに受け入れられ、次第に欠かせない存在となったのはなぜか。それは、ストリートから生まれるクリエイティブに高いアート性があり、圧倒的なオリジナリティと自由な発想があったから。だから芸術の一部として、真に価値のあるものとして、時間をかけて享受されていったのだ。例え、資本がなくとも自身のインスピレーションをDIYで1つの形に作り上げてしまう。これがストリートの根底にあるマインドであり、ストリートカルチャーはそのように生まれ育ち、今日、ファッションにおける大カテゴリーの1つとして確実な存在感を得たのだ。

 


 

2001
N.E.R.D『In Search of…』リリースでデビュー

 

2003
Kim JonesがKIM JONES 2004SSのロンドンコレクションでデビュー
UNDERCOVERパリコレクションデビュー

 

2004
Kanye WestがRoc-A-Fella Recordsよりソロデビューアルバム
『The College Dropout』をリリースし第47回グラミー賞で3部門を受賞
Pharrell WilliamsとNIGO®によるBILLIONAIRE BOYS CLUBスタート
BAPE STORE® NEW YORKがNYのSOHOにオープン
川久保玲がDOVER STREET MARKETをオープン

Pharrell Williams
2006
Pharrell Williamsがソロデビュー
FENDIのパーティーをNIGO®がプロデュース。
カニエ・ウェストがLIVEを行う

 

2007
KIM JONESのラストコレクションがNYで発表
Tyler, THE CREATORがODD FUTUREを始動

 

2008
Pharrell WilliamsがLouis Vuittonよりジュエリーコレクション
“Blason”を発表
Gosha Rubchinskiyが1stコレクション“Empire of Evil”を発表

 

2009
Stussyの30周年を記念しSupremeとStussyがコラボレート

 

2010
SupremeとThom Browneがコラボレート
Lev TanjuがPalace Skateboardsをスタート
NIGO®がHUMAN MADE®をスタート
Aaron BondaroffがLAでネットラジオ、KNOW WAVEをスタート

 

2011
Kim JonesがLouis Vuittonのメンズ部門アーティスティックディレクターに就任

 

2012
初のSupreme×COMME des GARCONS SHIRTコラボ発表、以降、現在に至るまで6度に渡ってコラボレート
DOVER STREET MARKET GINZAがオープン
Raf SimonsがDiorのアーティスティックディレクターに就任
Tyler, THE CREATOR主宰の野外イベント
“Camp Flog Gnaw Carnival”スタート
JAY-ZがデザインしたBrooklyn Netsの新ロゴ発表

Virgil Abloh

 

2013
A$AP Rockyが『Long. Live. ASAP』をリリースしメジャーデビュー
Virgil AblohがOFF-WHITE C/O VIRGIL ABLOH™をスタート

 

2014
Virgil Abloh、LVMHの“Young Designer Award”を受賞
Supremeのスケートビデオ『cherry』リリース
Alex OlsonがBianca Chandonをスタート
VETEMENTSスタート

 

2015
Kanye WestによるYEEZY BOOSTスタート
Louis Vuitton 2015SSメンズコレクションでJudy Blameがコラボレート
Julian KlincewiczがGosha Rubchinskiyの2015AWコレクションの映像を担当

 

2017
SupremeがLouis Vuittonとコラボレート、デザイナーにVirgil Ablohを起用
A$AP RockyとLarry ClarkがDiorの2016-17のAWキャンペーンビジュアルに登場
Louis Vuittonと藤原ヒロシによるFRAGMENTが初コラボ、2017年AWプレコレクションを制作
Pharrell Williams×CHANELの500足限定スニーカー発売

 

Kim Jones

 

2018
Kim JonesがDiorのアーティスティックディレクターに就任
Virgil AblohがLouis Vuittonのメンズ・アーティスッティクディレクターに就任
James JebbiaがCFDA賞でメンズウェアデザイナーを受賞
Gosha RubchinskiyとBURBERRYがコラボ、その後Gosha Rubchinskiyは活動休止
Supremeのスケートビデオ『blessed』リリース

 

2019
Julian KlincewiczがLouis Vuittonの2019SSメンズビジュアルムービーをディレクション
KAWSがDiorの2019SSメンズコレクションに作品提供
FUTURAがLouis Vuitton 2019AWコレクションのショーにてライブペイントを行う
DiorとStussyがコラボ、Shawn Stussyがディレクションを担当

 

2020
Dior×Nikeのカプセルコレクション“AIR DIOR”誕生

 

Illustration Takuya Kamioka Text Ryo Tajima

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