

いつも同じ格好をしている人。会うたびに違う服を着ている人。ファッションスタイルは千差万別だが、どこかに自分らしいトレードマークになるようなアイテムやルールを持つこと。身につける意味を持って着る。それによって、スタイルは格段に奥深さを持つことだろう。
ここでは、昨今のファッションスタイルに影響を与え続ける人物たちが愛したアイテムの話をする。自分の名刺替わりとなるアイテムを持つ重要さを彼らから学びたい。
スーツのセットアップに黒縁メガネ、インテリジェンスに感じさせられる佇まい、音楽家たちの肖像を眺め、そのスタイルに思いを馳せる。50年代に活躍し22歳でこの世を去った”メガネをかけたロックンローラー”ことバディ・ホリー。フレームのサイドがツンと上向きに上がったウェリントンタイプのメガネ姿は、後世、ジョン・レノンがメガネをかけることを納得する理由の1つになったとも伝えられている。
ビル・エヴァンスの黒縁メガネ&スーツセットアップについては、誰もが見たことがあるであろう『ポートレイト・イン・ジャズ』のジャケットに写されている。同作品は1959年にリリースされているが、当時のジャズマンはまさしくファッションアイコンであった。音楽家として人々の前に立つ人間が着る正装としてのスーツ、そこに組み合わされた知性的な黒縁メガネ。
彼らのワークウェアとしてこのスタイルは確立されていったが、それは当時の最先端の新たな存在として人々の目に映り定着した。
一方、エルヴィス・コステロがデビューしたの70年代後半、パンクムーブメントが世界中を席巻する中、黒縁メガネにスーツのセットアップというスタイルは、ロックミュージシャンとしては異質であり、それこそバディ・ホリーを彷彿させると言われた。根底にあるのは他と違うこととちょっとした必然性。スーツに黒縁メガネ、それは知的なミュージシャンのポートレートによく似合う。
エルヴィス・コステロ
(1954年8月25日(64歳)-)はリヴァプール生まれのミュージシャン、作曲家、プロデューサー。77年にデビュー、ロックの王道を歩み続ける。
ビル・エヴァンス
(1929年8月16日 – 1980年9月15日(51歳没)) はアメリカのジャズピアニスト。数多くの傑作を残したモダンジャズ界きってのアーティスト。
バディ・ホリー
(1936年9月7日 – 1959年2月3日(22歳没))。アメリカのロックンローラー。いわゆるバンドスタイルの礎を築き後世のロックに多大な影響を与えた。
Photo Taijun Hiramoto
Styling Shuhei Yoshida
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Illustration Éi Kaneko
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Text Ryo Tajima
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