

いつも同じ格好をしている人。会うたびに違う服を着ている人。ファッションスタイルは千差万別だが、どこかに自分らしいトレードマークになるようなアイテムやルールを持つこと。身につける意味を持って着る。それによって、スタイルは格段に奥深さを持つことだろう。
ここでは、昨今のファッションスタイルに影響を与え続ける人物たちが愛したアイテムの話をする。自分の名刺替わりとなるアイテムを持つ重要さを彼らから学びたい。
人間、大切なのは中身であって見た目は二の次だ、という常識的な考え方も、極道ジャーナリスト、ハンター・トンプソンのロックスターな姿勢を見ると薄っぺらい美辞例文に見えてしまう。トレードマークはティアドロップのサングラスにバケットハット、ジョニー・デップ扮する姿が印象に残っている人も多いだろう。
彼が活躍した60年代後半から70年代初期のアメリカというのは、ベトナム戦争にヒッピー文化の台頭と激動の暗い時代。真実は何か、メディアから何を取捨選択すべきかを求めて、人々が路頭に迷っていた頃、伝説として語り継がれるフリージャーナリストは、目前のリアルを書くべくタイプライターを殴り続けた。ジャーナリストとしてのスタイルはローリングストーン誌に連載されていた『ラスベガスをやっつけろ!』で71年に確立されたとされる。かくしてハンター・トンプソンはゴンゾー・ジャーナリズムの代名詞として異端とされた。その取材方法は、自ら取材対象の中に身を投じ、時にはフィクションを織り交ぜながら、出来事を伝えていくというやり方。まったく新たなスタイルを持ってリアルを人に伝えていく。
そんなならず者と言えば、このアイテムというわけだ。自分の仕事の流儀とファッションのスタイル、そこに共通性があり、アイテムを見ればその人間の顔が思い浮かぶ。これもまたハンター・トンプソンが密かに我々に刷り込んだ巧妙なワナであるのかもしれない。
ハンター・S・トンプソン
(1937年7月18日 – 2005年2月20日 (67歳没))はアメリカ生まれのゴンゾージャーリスト。ニュージャーナリズムの旗手。
Photo Taijun Hiramoto
Styling Shuhei Yoshida
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Illustration Éi Kaneko
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Text Ryo Tajima
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