

いつも同じ格好をしている人。会うたびに違う服を着ている人。ファッションスタイルは千差万別だが、どこかに自分らしいトレードマークになるようなアイテムやルールを持つこと。身につける意味を持って着る。それによって、スタイルは格段に奥深さを持つことだろう。
ここでは、昨今のファッションスタイルに影響を与え続ける人物たちが愛したアイテムの話をする。自分の名刺替わりとなるアイテムを持つ重要さを彼らから学びたい。
昨年であったか、100億をゆうに超える額でバスキアの絵が落札されたのは。ヘロインのオーバードーズを起こして逝去し、27クラブ入りを果たしたブルックリンの若き天才。バスキアが生きた80年代、サブカルチャーのシーンにおいてはアートに限らず、音楽、映画とあらゆる方面において、次なる時代のポップスが産声を上げていた。ことNYのアートシーンはカオスを迎えており、現代へ連綿と続いていくポップアートの土台、及びマスターピースが誕生した。
バスキアはスタイルという点において、他の芸術家たちとは一線を画している。どこにでも売っているようなTシャツ、ゲームユニフォームにジャケットを羽織って、そのまま絵を描いたり、大きいサイズの高級スーツを選んで雑に引っ掛けて足もとは裸足であったり。
87年にはコム・デ・ギャルソンのモデルとしてもコレクションに登場している。今なおファッションアイコンとして、その存在に憧れを抱くのは、ファッションとして生まれたウエアを自分だけのやり方で着こなし、スタイルとして確立し続けたからだろう。セレブリティにはこだわりがあったようで、アルマーニのスーツを好んで着ていたり、アンディ・ウォーホルと浅からぬ付き合いがあったという話も誰もが知るところ。クールでストリートなアーティストのオリジンはここにある。そのスタイルはエレガントでいてラフ、粗野かつ繊細という二面性を持って語られる。
ジャン=ミシェル・バスキア
(1960年12月22日 – 1988年8月 12 日(27 歳没)はNY、ブルックリン生まれのグラフィティアートをモチーフにした芸術家。
Photo Taijun Hiramoto
Styling Shuhei Yoshida
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Illustration Éi Kaneko
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Text Ryo Tajima
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