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New Classics
of the World 04
Ramdane Touhami
(Officine Universelle Buly)

New Classics
of the World 04
Ramdane Touhami
(Officine Universelle Buly)

片足は過去にあり、
片足は未来にある
ラムダン・トゥアミ

Photo Marsy Hild Thorsdottir

 
パリを拠点にする総合美容専門店のオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの水性香水を手に取ると瞬時に感じられるフレンチファンタジー。フランスの古典絵画を連想させるラベルや白いガラスボトルからは、19世紀のパリから現代へとタイムトラベルしてきたプロダクトなのではないかと錯覚してしまう。
 
そんなクラシカルなアートやデザインにフォーカスを当てながらモダンに表現をするビュリーのプロダクトや店舗の空間は、本号のテーマである「New Classic」を象徴する好例だと言える。900品を世界123店舗で販売している国際的なビュリーはなぜ現代でこのようなNew Classicなアイテムを作っているのだろう。そのこだわりと考えに関してディレクターを務めるラムダン・トゥアミに話を聞いた。

Photo Kozo Takayama

 
1803年に調香師ジャン=ヴァンサン・ビュリーに創業された当時、ビュリーは革命的な技術の進化を受け入れながら、発明的なアプローチでお酢をベースとする香水「香り酢」や様々なスキンケア製品を開発し、世界中から注目されていた。その後、ブランドの休止を経て1世紀程の眠りから2014年にはラムダンと妻ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックによって自然素材を使用した総合美容専門店としてリニューアルされた。ビュリーを通して2人は世界中を周り、失われつつある伝統美容のノウハウや原料などの知識を集めて現代の人へ届けている。
 
「古いブランドを刷新する時、ただ古いプロダクトを作り直すだけじゃダメなんだ。進化させないと意味がない。そういう意味で私達の片足は過去にあり、片足は未来にある(ラムダン)」。ラムダンが語る過去と未来をまたぐ姿勢はビュリーのプロダクトから空間にまで感じられる。「例えばビュリーの香水ボトルのパッケージングはすごく古く見えるが、中身は現代の技術でしか成し得ないテクニカルなものだ。たまには、モダンなパッケージングの中に古いプロダクトを入れたりもする。このような考えはビュリーのDNAであり、店舗のデザインでもみられる」。
 
この考えが一番はっきり体感できるのが、代官山店の内装(写真上)である。店内が二等分されているように見えるが、これはフォトショップによる合成ではなく、2つの世界や文化、時間を感じられる一つの空間だ。右半分はフランスの職人がウォルナット、大理石、テラコッタなど上品な素材を使用して、19世紀フランスの薬局をイメージして作られたレトロなデザイン。左半分は日本の職人によってコンクリートとアクリルで仕上げられた近未来的な日本をイメージしたデザイン。この左右に分割されている内装は棚やディスプレイケースに並べられているビュリーのプロダクトによって一つに結ばれている。「New」と「Classic」のデザイン、文化、時空が共存するこの空間はまさにビュリーが考えるNew Classicを体現したクリエイションだと言える。
 
 

100年後のフリーマーケットでも
発見してもらいたい

 
一時期日本に住んでいたラムダンは日本文化から大きな影響を受けている。特に、神道から由来する「本物」は彼にとってキーワードのようだ。「日本の文化を知って、日本人のモノに対しての執着心や“本物”を見極めたいとする考えの背景には、神道を感じることができる。神道では、すべてのモノに神が宿ると信じているから、本物を見極めたいと思うんだ」。
 
その考えはビュリーでのアプローチに反映されている。フランス国立図書館やルーヴル美術館、そして世界各国のフリーマーケットなどでリサーチを行うラムダンは、何千年も受け継がれてきた美容知識を探り、自身の足でその場へ学びに行っている。それによって現代に多く流通する人工的なものより効果的な美容法を学び、ビュリーで新たな技術を加えて進化をさせている。最終的にそのリサーチと開発の成果はストーリーとしてカタログや店舗を介してスタッフから聞くことができ、ビュリーのプロダクトが自分の手に届くまでの歴史と研究が実感できる。時間、ストーリーに職人の手が加わったものを届けることこそがラムダンが考える本物の商品なのである。
 
ラムダンに100年後ビュリーはどのように覚えられていてほしいか聞いてみると、こう答えが返ってきた。「まだ続いているといいね!他社のようにプラスチックをボトルに使うものは絶対100年後のフリーマーケットには残らないよ。だが、古いビュリーのガラスボトルや大理石の瓶は見つかるかもしれない。店舗がなくても私たちのプロダクトはフリーマーケットなどにあって欲しい。私がフリーマーケットで色々な発見をするように100年後の誰かにビュリーのボトルを発見してもらって、『これの最新版を作ろう!』と思ってもらいたい。それが私の夢だ」。
 
過去をリサーチし、今のユーザーに本物を届け、それが未来までインスパイアできるように最高品質のものを作ることを目指すビュリー。その長いタームでもの作りを行う姿勢は「New Classic」のDNAと言っても間違いでないだろう。

ビュリーのブジー・パルフュメ(フレグランスキャンドル)、オー・トリプル(水性香水)、や櫛が19世紀パリを連想させる肖像の周りに並べられているワンカット。

2021年に完成されたビュリーの赤坂オフィス。ブランドのビジュアルはクラッシックだが、そのプロダクトが考え出されるオフィスはヴィトラやイームズなどのモダンデザインに囲まれた空間である。

 
 
ラムダン・トゥアミ
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーのディレクター。アートディレクションから空間デザインまで多様な役割を果たすビュリーのディレクター。
12歳の頃から自分のアイディアを実現してきた彼は、今では8つの会社を持ってデザイン、ファッション、園芸、美容、など多様なカテゴリーを渡って活躍している。
@officine_universelle_buly
@ramdanetouhami
 
 
◯Officine Universelle Buly
https://www.buly1803.com/jp/
 
 
 

Interview & Text Mikuto Murayama

 

This article is included in

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