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Luke Meier
OAMC Creative Director 時を大切にする人の
リスペクトタイム

食事、家族、仕事、恋人、趣味、睡眠...我々は日々の暮らしの中でさまざまな人やことに時間を使っていくわけだが、時間を使う上で大切なことは何だろう。答えは人の数ほどあるかもしれないが、重要なのは誰にも平等な時間という価値を、自分の中でしっかりと理解することなのではないだろうか。ここではそんな時間について、多忙な中で日々考え、その哲学をブランドのディレクションにも活かしている海外のディレクター2人に色々と聞いてみた。彼らは限りある時間をどんな人やモノと、どのように過ごしているのか。彼らにとって時間の価値とは何なのか。時間について深く考え、行動する彼らから、人生を豊かにするヒントを見つけてほしい。

Luke Meier
OAMC Creative Director 時を大切にする人の
リスペクトタイム

食事、家族、仕事、恋人、趣味、睡眠...我々は日々の暮らしの中でさまざまな人やことに時間を使っていくわけだが、時間を使う上で大切なことは何だろう。答えは人の数ほどあるかもしれないが、重要なのは誰にも平等な時間という価値を、自分の中でしっかりと理解することなのではないだろうか。ここではそんな時間について、多忙な中で日々考え、その哲学をブランドのディレクションにも活かしている海外のディレクター2人に色々と聞いてみた。彼らは限りある時間をどんな人やモノと、どのように過ごしているのか。彼らにとって時間の価値とは何なのか。時間について深く考え、行動する彼らから、人生を豊かにするヒントを見つけてほしい。

時間は唯一の通貨であり、唯一の贅沢
ルーク・メイヤー

柔らかく、暖かそうなウールとメタルのボタンに刻印された“YOU ARE HERE”の文字。OAMCのクリエイティブディレクターとして活躍し続けるルーク・メイヤーに、時間の価値について取材をオファーしたところ、送られてきたのがこの写真だ。これはOAMCの20年秋冬シーズンのイメージビジュアルの中からの1カット。最新の服の上に踊る“あなたはここにいる”というメッセージは、その服を着るものだけに与えられた特別な瞬間を表現したものと言えるだろう。世相を映し出すファッションで“瞬間”を切り取るという意味において、今回のコレクションは、本誌のテーマである“時間”と共通するものもありそうだ。
 
 

すべての瞬間を全力で楽しむ

そんな最新のコレクションと時間の関係について聞く前に、まずは彼に時間というものをどのように捉え、どのように使っているのかについて聞いてみた。 
「すべての時間は貴重です。私は一瞬を無駄にする余裕がないので、家族や友人と過ごす時間も、OAMCやジル・サンダーでエネルギッシュな人々と一緒に仕事をする時間も、全力で楽しむようにしています。全ての瞬間が重要です」。2つのブランドのクリエイティブ・ディレクターを兼務し、多忙を極めるスケジュールの中でもすべてにおいて一度しかない時間を楽しむ。彼は限られた時間に対して常にポジティブに向き合っている。家族と過ごす時間という意味では、夫人のルーシー・メイヤーはジル・サンダーでともに働くパートナーでもある。家族と仕事の時間の使い分けについてはどのように考えているのだろうか。
 
「分離はありません。私たちは幸運なことに、常にお互いをインスパイアし合い、常にアイディアとクリエイティブについて話をすることができる状況にあります。もちろんビジネスの会話はスタジオのみでしていますが、私たちのクリエイティブな時間と家族の時間は常に相互に関連しています。仕事と休息の日についても違うことはありません。私は自分の仕事を自分の人生のように楽しんでいます。アイディアについて考え、新しいアイディアを受け入れ、刺激を受け、人々と出会い、旅行する。すべてつながっているのです」。自分の仕事を自分の人生のように楽しむ。それは世に生きる人々にとって、1つの理想の形であろう。そのように前向きな姿勢で生きる彼だからこそ、前述の「全ての時間を全力で楽しむようにしている」という言葉もさらに真実味が増す。ウエアデザインについてはほとんどの作業をスタジオで行っているが、デザインチーム用のブリーフなどを自宅で作ることもあるという彼。ルークにとってオンとオフという概念は存在しない。服作りというクリエイティブな時間も、家族とのプライベートな時間も、すべてがルーク・メイヤーという1人の男の人生を充実させるための重要な時間なのだ。
 
 

デザインには永続的な品質が必要

伝統的なテーラーリングからルーツであるストリートの雰囲気を漂わせるものまで。ルークのデザインするウエアは、オーセンティックでありながら、どこかモダンであり、そしてアクティブさも兼ね備えている。何よりもシンプルながら上品さを湛えたその服は着る場所も時代も選ばない。「デザインには永続的な品質が必要です」という言葉通り、彼が生み出す服には長く着られるという時間の概念が込められている。よいものを長く着る。当たり前だが難しいこのテーマを実践するため、ルークは素材や縫製にも強いこだわりを持ち、服作りに取り組んでいる。その丁寧なものづくりへの姿勢も、今最も注目されるデザイナーとして、世界的に高い評価を受ける所以だ。長く使い続けるということに関連して言えば、彼は現在築100年の家に住み、ヴィンテージの家具も多数所有しているという。「家も椅子も強くてよくできていると感じています。今の環境は私にとって、とても気持ちのよいものです」。“長く使い続けられる”、“長く愛し続けられる”というキーワードは、ルークのクリエイティブな服作りだけではなく、彼のライフスタイルを語る上でも外せないものなのだ。
 
“長く使う”ことも美学であるルークだが、やはり彼にとってすべての時間は一瞬の輝きの積み重ね。生きた分だけ増えていくその瞬間が連綿と続き、長い時間となって豊かな人生へと結実するのだ。「時間は唯一の通貨であり、唯一の贅沢です。年を取れば取るほど、理解する気がします」。使わなくては減っていく。世界中の誰もに平等に与えられた決して貯めることのできないこの通貨の価値は、さまざまな経験を経て、わかっていくものだ。彼はこれからもあらゆることを全力で楽しむことだろう。それが人生の贅沢であることを彼は知っている。

ハードな現代において、着る人に力を与える今回のコレクション。力強さを表現しつつもモダンな感覚は忘れないルークらしいセンスが光る。エッジの効いたウールのテーラードパンツ、爪先にメタルを取り付けたレザーシューズは視覚的にも強い印象を与える。

着物の腰紐にインスパイアされたというベルトでウエストを絞ったトップコート。日本の伝統を取り入れ、今へと昇華したそのアイディアはさすがの一言。ボディに採用されているシャイニーコーテッドコットンは、以前同様日本とイタリアで開発されたもの。

 
 

ファッションは時代を映し出す

OAMCの2020年秋冬シーズンのテーマは「力」と「保護」。予測不可能なことが起きる現代を生き抜く上で必要な2つのキーワードをもとに作られたこのコレクション。COVID-19の世界的流行前にすでに考えられていたこのテーマだが、偶然にも時代とマッチすることとなった。「この2つのコンセプトは常に存在するものであり、相反するものでもあり、そして生きていくために両方とも必要なものでもある。現代のチャレンジングな場面や逆境に対して私たちは強くいなければいけない。常に成長して自分を強化することが必要です」。ルークが語るように、日々を強く生きるためのウエアがずらりと並ぶ。
 
上の写真に見られるシャープなウールテーラーリングやメタルアクセントのシューズもそんな強さを象徴するアイテムだ。そしてルークの思いの詰まったこの最新コレクションは、時間という視点からも語ることができる。例えば日本の伝統的な着物の腰紐からインスパイアされたベルトがポイントとして取り付けられているコーテッドコットンやウールフェルトのトップコート。ファッションを通して過去と現在をつなぐというその手法は、ルークならではの古きよきものへのリスペクトを感じさせる。特筆すべきは森山大道とのコラボレーション。日本を代表する世界的写真家、森山が女性の手を切り撮ったハイコントラストなモノクロ写真を大胆に落とし込んだウエアは、日々生きていく中で訪れる強い“瞬間”を表現したものと言ってよいだろう。そしてこのウエアの制作はルークにとっても特別な瞬間だったという。「コレクションを作る中でいくつか大切な瞬間がありましたが、一番特別だったのが森山大道さんと繋がって一緒に働けたこと。これは特にパワフルでした。彼の作品の強さと生っぽさは今の時代に合っていると感じたんです」。ファッションは時代を映す鏡である。これまでにもその時代時代でムードやニーズに沿った様々なスタイルが生まれては消えてきた。そして2020年、我々はこれまでに直面したことのない非常にタフな局面にいる。そんな現代に発表されるOAMCの力強いウエア群。これらは時が過ぎても残り続けることだろう。今という時代を生きた者たちのそれぞれの記憶とともに。

撮影した空気までをもそのまま瞬間パッケージしたようなエネルギーに溢れたウエアは、日本を代表する写真家、森山大道とのコラボレーションアイテム。コットンマテラッセやオープンスティッチニッティングなど、様々な技術で表現されたボディにも注目だ。

 
 
 

ルーク・メイヤー
OAMCのクリエイティブディレクター。モダンなセンスをMIXさせ、生み出すハイクオリティなウエアは、世界中で高い人気を集める。今最も注目されているデザイナーの1人。

 
 
 

Photo OAMC Interview & Text Satoru Komura

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