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La Bouche Rouge / Nicolas Gerlier 16 Interview about “Concept”

La Bouche Rouge / Nicolas Gerlier 16 Interview about “Concept”

今秋、待望の日本1号店が伊勢丹新宿にオープン。ベジタブルタンニングレザーを採用したアイコニックなケースは、ブラックや赤に加え、パステル色など全8色。別売りのカラーリフィル全21色とともに展開されている。
Lip Case ¥13500 Color Refill ¥4500 by La Bouche Rouge (EDSTRÖM OFFICE)
ものづくりの未来を照らす
ステートメントなルージュ
誰も到達できなかった高みに
果敢にチャレンジしていく

サステイナビリティ。近年ものづくりの現場で、このワードが飛び交うようになって久しい。環境や労働者に配慮した“持続可能な”ものづくり。10年前とは比べものにならないほど多くの企業が、大量生産によって生まれる弊害に真剣に向き合おうとしている。しかし一方で、生産すべての工程にサステイナブルなルールを敷くことは、コスト面から考えても現実的ではない。それはビジネスの世界で暗黙の了解であったが、その概念を覆し、ビューティの新たな地平を切り開いているブランドが存在するをご存知だろうか。
 
「ラ ブーシュ ルージュ」。2017年、パリにて創業したラグジュアリーコスメブランド。シグネチャーとなるのは、サステイナビリティとエレガンスを両立させた“究極のリップスティック”。生産の全プロセスから、環境や人体へ悪影響なマイクロプラスティックを排除。パラベンやパラフィン、防腐剤、動物性油脂も一切使用しない限りなくオーガニックなリップは、詰め替え式というユニークな手法と、職人の手によって生み出されるレザーケースの魅力も後押しとなり、ケイト・モスやクロエ・セヴィニーにも支持され、ビューティ界に静かな革命を起こしている。クリエイティブの総指揮をとるのは、ロレアルのリュクス事業部でキャリアを積んだニコラス・ジェルリエ。フランス語で「赤い口」を意味する同ブランドには、一体どんなメッセージが込められているのか。ファウンダーでもある彼に話を聞いた。
 
「ラ ブーシュ ルージュは3つのストーリーで成り立っているんだ。1つ目は環境への配慮、2つ目はテクノロジーの融合、3つ目はクラフツマンシップ。作り手として未来への責任を果たしつつ、プロダクトとしても高みを目指していく。パリでは何か訴えかけるような魅力を持った人のことを、“君はla bouche rougeだね”と形容したりするのだけど、このブランド名には僕らのサステイナブルな活動が世界に響くものであってほしい、そんな願いが込められているんだ」。

ラ ブーシュ ルージュのリップは詰め替え式。土台のケースを選んだら、お気に入りのリフィルをセット。初回こそ少々値が張るが、次からは中身をチェンジするだけで良いので経済的。ゴミも最小限に抑えられ地球にも優しい。 プラスチックゼロの精神はパッケージでも健在。リフィルのケースはもちろん、商品が収納される白いボックスも、すべて紙を使った素材で提供されている。無駄な要素を排除したミニマルなデザインが、商品を引き立てる。 パッケージの裏にはブランドが掲げるステートメン トが。デザインは雑誌『セルフ サービス』のアートディレクター、 エズラ・ペトロニオが担当。ビッグメゾンも信頼を寄せる彼のセン スは、リップ側面の紋章風ロゴでも確認できる。

 
 

プラスチックゼロの試みが
世界をゆるやかに変えていく

ラ ブーシュ ルージュが自社製品からマイクロプラスチックを徹底的に排除する理由。それは深刻な海洋汚染に対して責任をとらなければ、という強い使命感からくるものだ。「いま、世界の水の84%がマイクロプラスチックによって汚染されていて、その原因の第3位にはコスメ業界から排出されるゴミが絡んでいる。前職のときからその問題について幾度となく議論してきたけど、ここ数年でやっと数字でも証明できるようになり、流れを変えるには今しかないと、ブランド設立に踏み切ったんだ」。
 
ニコラスは、リップの成分からマイクロプラスチックを排除するのはもちろん、詰め替え用ケースも植物性由来のものにチェンジ、工場で使われる型取り用シリコンも金型に切り替えるなど、製作のどのプロセスを切り取っても、一切マイクロプラスチックを使っていないという、徹底したものづくりのプラットフォームを構築した。「ラ ブーシュ ルージュの商品には、容れ物から生産背景、パッケージに至るまで、一切プラスチックは登場しない。ちなみに今、これを可能にしている企業はほかに存在しないと思う。しかも僕たちは環境に配慮するだけではなく、リップに業界初となるセラムを配合し、使えば使うほど唇が潤っていくような、皮膚に良い効果をもたらすプロダクトを完成させたんだ」。企業として社会的責任をきっちり果たしながら、最高級のクオリティと使い心地を約束する。業界から注目を浴びる理由は、サステイナビリティの追求だけにとどまらず、最新テクノロジーを掛け合わせ、プロダクトの理想形を見事に示したからに他ならない。そのブランドとしての矜持は、立ち上げ当初から続けているという、とある活動からも伺い知ることができる。「Eau Viveインターナショナルという組織とチームを組み、リップが1本購入されるごとに、アフリカのトーゴという村に100リットルの水が届くシステムを作ったんだ。これによって顧客も自動的にサステナビリティなアクションを共にできる。素晴らしいことだよね」。普段からステンレス製のボトルに水を入れて持ち歩いていたり、カートリッジ式のチタン製ボールペンを愛用したり。環境保護に対し高い意識を持って生活している彼だからこそ生まれたアイディアは、コマーシャルとは一線を画す説得力にあふれている。
 

定番となっている21色のリップカラーの中には、女優のクロエ・セヴィニーや雑誌『セルフサービス』とコラボレーションしたものも。好みの色がみつからない場合は、写真のようにカラーチャートを見ながら、気に入った色をオーダーすることも可能。

 
 

自分のイニシャルを刻み
変化を慈しみながら愛用する

ラ ブーシュ ルージュの魅力を語るとき、やはり無視できないのがその端正なビジュアル。サドルステッチが施された上質なレザーケースは、オブジェにも似たタイムレスな輝きを放ち、人々を魅了する。「ケースは熟練した職人によって1つ1つ手作業で作られているよ。材料となるのは、植物由来の原料でなめした環境に優しいベジタブルタンニングレザー。エルメスがオーナーを務める工場と提携し、製作工程で余ったパーツを譲り受けて再利用し、あの美しいケースは作られているんだ」。
 
レザー職人に限らず、卓越した技術を持つアルチザンは年々減少傾向にあり、彼らの活躍の場も少なくなっているという。そんな背景も、代々受け継がれてきた技を守り、次世代につなげていかなければならないという、使命感に火をつけたのかもしれない。「クラフツマンシップの継承は、ブランドのコンセプトを語る上ではずせない柱の1つ。おそらくラグジュアリーコスメ業界の中で、ハンドメイドでここまでのクオリティのものを作っているのは、ラ ブーシュ ルージュだけだと思います」。
 
こうして幾重にも仕掛けが施されたルージュは、リップとレザーケースの多彩なマッチングと、店頭でのイニシャル刻印、好みのリップカラーを指定できる個人オーダーサービスなど、パーソナライズの充実を図ることで、さらに女性たちの心をくすぐることに成功。パリから始まった小さなムーブメントは、伊勢丹新宿店のローンチを皮切りに、ここ日本でもさらに盛り上がりを見せようとしている。
 
思い入れのあるリップを1つ持ち歩き、大切に愛でて使っていく贅沢。インタビューの最後に、どんな女性にこのリップを使ってほしいかとニコラスに尋ねたら、こんな返事が帰ってきた。「サステイナビリティにまったく興味がない人にも、僕たちのストーリーが少しでも伝わるといいなと思う。ラブーシュルージュのリップを持ってること自体が、その人のマニフェストを表しているようなものだから。バッグの中に入れて持ち歩き、さっと出して塗り直す。その一連の動作を楽しむのもいいし、“それってどこの?”って聞かれて、コミュニケーションが広がるとなお嬉しい。小さいことかもしれないけれど、僕たちのプロダクトが世界を変えるきっかけの一歩となること願っています」。
 
 
 

ニコラス・ジェルリエ
パリ生まれ。2017年にコスメブランド「La Bouche Rouge」を設立し、ファウンダー兼クリエイティブディレクターとして活躍。趣味はアート鑑賞で、好きなアーティストはヴィヴィアン・サッセンと歌川広重。プライベートでは3人の子供を持つ父親でもある。

 
 
 

Photo Tomoaki Shimoyama Interview & Text Yuri Tanaka Edit Mayu Kakihata

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