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Interview with
Yasuhiro Mihara
Designer
Interview about Life in Work

世界のクリエイターたちの
新しいワークスタイル

時代が変われば、それに伴って働き方が変わるのは世の常。オンラインが普及したことによって在宅勤務が可能になり、パソコンの画面で打ち合わせをするなんて一昔前であれば考えられなかったことだ。社会が少しずつ柔軟になることで、どんな場所で、どんな服で、どんな時間に、どのように働くかを考える必要も増してきた。クリエイティブに自分らしく働くためには、どういうワークスタイルにするべきか。ここでは、ファッションや音楽のシーンで活躍する世界中のクリエイターたちのワークスタイルに迫る。彼らのワークスタイルから新しい時代のヒントを感じ取って欲しい。

Interview with
Yasuhiro Mihara
Designer
Interview about Life in Work

世界のクリエイターたちの
新しいワークスタイル

時代が変われば、それに伴って働き方が変わるのは世の常。オンラインが普及したことによって在宅勤務が可能になり、パソコンの画面で打ち合わせをするなんて一昔前であれば考えられなかったことだ。社会が少しずつ柔軟になることで、どんな場所で、どんな服で、どんな時間に、どのように働くかを考える必要も増してきた。クリエイティブに自分らしく働くためには、どういうワークスタイルにするべきか。ここでは、ファッションや音楽のシーンで活躍する世界中のクリエイターたちのワークスタイルに迫る。彼らのワークスタイルから新しい時代のヒントを感じ取って欲しい。

影響を受けやすいからこそ自分らしくいられる空間に
三原康裕

東京、パリ、ミラノ、ロンドンとこれまで世界中で独自のクリエイションを発揮してきた日本を代表するファッションデザイナー三原康裕。彼のクリエイションは常にユーモアがあり、手がけるブランド“メゾン ミハラヤスヒロ”のデザインはもちろん、ショーの演出にはいつも三原ならではのユニークさが光る。次はどんな服をどう観せてくれるのか?ファンはもちろん、世界中のファッション関係者が三原のクリエイティブに毎シーズン、心を弾ませているのだ。ブランド設立から24年経った今年。現在、三原はどういう環境で、独自のクリエイティブを続けているのか訊いた。
 
メゾン ミハラヤスヒロのアトリエがあるのは、新宿区大京町某所。決してファッションエリアとは言えないこの場所に拠点を移したのは、昨年7月末という最近の話。それまでは神宮前を制作の拠点にしていた。なぜセレクトショップやブランドのアトリエが多い神宮前エリアから移転したのか。「広い場所が欲しかったという理由もありますが、ファッションすぎる場所から離れたかったんです。原宿や神宮前のエリアは外を出歩くと、インスタ映えを意識した写真を撮っている子たちやそれを狙った店が多く、なんだか情報の中で生きているような場所に感じていたんです。そういう場所にいて自分の感覚が流行に流されてしまってはダメだと思い、神宮前での制作拠点を変えたいと思っていました。僕は、環境にとても影響されやすい性格です。そのことをわかっているから、情報に流されず自分らしくストイックに集中できる仕事の環境が大切なんです」。
情報過多ともいえる現代のデジタル環境に加え、現実世界でのトレンド中心地である東京・原宿エリア。移り変わりの激しい、リアルタイムのトレンドを知るには絶好の場所だが、その反面、作り手にとっては余分な情報が入りやすいというのも頷ける。「よくデザイナーって旅に行ったりするじゃないですか?次のコレクションのインスピレーションを得ようとして。影響されやすい僕はその行為が苦手なんです。例えば、旅行でインドに行ったとする。そうすると僕の次のコレクションは、絶対にインドがテーマになるはずです(笑)。この間も、ダニエル・ジョンストンの展示を見に行こうと銀座まで行ったんですが、入り口で展示を観るのが怖くなって入らずに帰ってしまった。好きだからこそ、刺激を受けるのが怖いのです。影響を受けたモノを作りたくなってしまうのは目に見えているだけに、浅はかなモノを世に出したくないという思いが強い。かといって受けたインスピレーションを内に秘めたままにしておくと消化不良にも繋がる。だから今は、何かに影響を受けずに自分の哲学を持ってものづくりを行うことを大切にしています」。

 

三原の頭脳ともいえる
自身のワークスペース

では、現在の場所にアトリエを移転して約1年が経ち、どういう変化があったのか。「僕は、デザイナーという側面以上に、経営者としての側面があります。経営者としての考えはすごく集中できました。神宮前のオフィスだと、変わり続けるファッションの渦中にいたので経営のことまで頭が回らなかったと思います。コロナ禍で人のいない原宿を見た時はかなりショッキングでした。それに比べ、このエリアはコロナ禍だろうと人の多さが変わらなく、精神的な変化を抑えることができたように思う。冷静な判断ができる環境にいることは、スタッフにも安心感を与えられていると思います」。デザインチームやパタンナーチームなど、なるべく1つの場所でクリエイションを完結できるよう広い空間となっているメゾン ミハラヤスヒロのアトリエ。この広い空間の中心に個室のように設けたのが三原の部屋だ。三原の部屋へ入ると、たくさんの本や一目で軍モノとわかる服のコレクション、アート作品などが目に映る。「このスペースは僕の脳味噌だと思っています。脳味噌っていうのは、記憶を思い出そうとしても、なかなか出てこなかったり、忘却したり。そうならないために、僕は常に過去に見た古着や画集などを近くに置いておきたいんです。ここにあるのはごく一部で、家や倉庫にはもっと多くのコレクションがあります。服や画集など、見る度に新しく感じることもあるし、どんどん増えてはアトリエのみんなに見せたり貸したりしているモノたちです。僕がミリタリーウエアを好きな理由は、機能性や民族としての考え方がデザインに表れているところ。例えば、アメリカだと合理的な縫製や機能面がデザインに表れています。イギリスだと逆に、国家予算が少ない分、非合理的でテーラーリングに近い造りなんです。軍モノの服を着たいというよりも、そういった服を見ることで、作った人の考え方を知るのが好きなんです。“なんでこんなところにタグを付けたんだろう”とか。見たことのないディテールを持った古着を見るとゾクゾクしますね。洋服の専門学校に行っていない僕にとって、ものづくりの先生というのは、誰でもなくモノそのものなんです。今でも見直しては学びたくなるような、そういうモノたちをここに置いています」。影響されやすいという三原が、影響を受けることを許した、クリエイションに大切なモノたち。洋服関連の書籍が多く陳列される本棚に一緒に置かれるぬいぐるみや、バンクシーのフィギュアなどに、三原ならではのユーモラスな世界観を感じる。「他人からしたらズボラに思う空間かもしれません。でも僕にとっては計算して行き着いた空間なんです。今の時代のワークスペースは、個人のデスクがなかったり、パソコンを持って好きな場所で仕事ができるというスタイルが増えてきていますよね。その行為にすごく憧れる。でも、僕にはそれができないんです。古い人間なのかもしれないですが、同じ空間で考え続けることが好きなんです。本という存在も思い出せないものを思い出すのにちょうど良いと思っています。今だとインターネットで検索すれば、すぐに見つかるかもしれません。でも、ネットで検索することが負けだと思っている部分もあるんです(笑)。何かの本にある情報を、本棚からごちゃごちゃと探している行為自体が好きなんです。そうしている間に、またほかのいろいろなことを思い出すじゃないですか。グーグルで何でも情報が出てくる現代ですが、服作りを始めた頃に出会った当時のこと、買った当時の喜びも一緒に思い出したい。それがここにある服や本だったりするんです。だからあえて混沌とした空間にしている。まさに僕の頭の中みたいなものです」。

左_壁にはこれまでに制作した靴やハットのほか、タイプライター、動物の骨など様々なインスピレーションを刺激するモノが陳列されている。中_ファッション関連の参考書や雑誌、 芸術関連の書籍を中心とした本が並ぶ本棚。右_バンクシーや怪獣のフィギュア、ジュエリーデザイナーFusam El Odehによる鉛筆で作られたドレスなど、三原ならではのユーモアを感じるモノも多くアトリエ内には揃う。

 
 

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