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Interview with Shinsuke Takizawa about What is STREET?
Street Culture and Style

Interview with Shinsuke Takizawa about What is STREET?
Street Culture and Style

『PiNHEAD』、『VACANT』、「ロンドン・ブック』など、80年代に滝沢が衝撃を受けたマガジンの数々。パンクやニューウェイヴをはじめとした音楽とリンクするロンドンのストリート・ファッションや、東京をメインとした日本のアンダーグラウンド・シーンで活躍していた人々の姿が掲載されており、カオス感、アナーキック精神など、当時の空気感を感じることができる。
ストリート・ファッション
とはもう言わない

そもそも「ストリートとは何なのか」、というこちらの切り出しに、少し考えて「そうなんだよね」と応えた「ネイバーフッド」代表の滝沢伸介。1994年にブランドを立ち上げて以来、ストリート・カルチャーとリンクしながら、独自の世界観を作り上げてきたストリート界の重鎮から出てきた最初の言葉にふいを突かれた。「逆に質問ですけど、ストリートってなんだと思います?」……言われてみれば、確かにすぐに答えは出てこない。「僕の視点からいくと、ストリートはストリート・ファッションですよね。カルチャーとすごく密接に繋がっていて、何か理由があって派生したスタイル。そういうものの定義だったと思うんですけど、でもここ数年、ストリートという定義がカテゴライズに当てはまらないのかなとも感じていて。普段『ストリート』と言っている人も、このブランドは何?と突き詰めていったら、『じゃあストリートって何?』ってなると思うんですよ。今、ファスト・ファッションなども含めると、ファッションの世界ってすごくいろいろカテゴライズされていますが、その定義というものは、もはやこの数年で崩壊している感じがします。カテゴリー化することが、難しい段階にきているのではないでしょうか」。これまでに存在していた、カテゴライズの崩壊。確かに1980年代から2000年代にかけては、ストリート・ファッションは今よりももっと明確な位置づけにあったような気がする。それが2010年代に入り、ストリート・ファッションとハイファッションが交差するようになり、わかりやすく言えばパリコレなどでもストリートのエッセンスを取り入れたデザインが多く見られるようになったのは事実だ。その中で「ネイバーフッド」は、バランスよく時代と調和し、我が道を歩んできた。それはきっと、ブランドの根本に揺るぎない信念があるからなのではないだろうか。
 
滝沢は10代の頃、ストリートから派生したカルチャーやファッションに大きな影響を受けた若者の1人だった。その記憶は、80年代に遡る。「ロンドンの音楽とともに生まれてきた、パンク、ニューウェイヴ、モッズなどのリアルなストリート。それに衝撃を受けたのが最初ですね。音楽で言えば、セックス・ピストルズとか、ザ・ストラングラーズとか。10代の頃、兄貴の部屋にあったレコードを偶然見つけて、「何だ、これは!?」と聴いてみたんです。それと当時はほとんど情報もなかったので、雑誌を見ては衝撃を受けていましたね。あの頃は日本だと、アイドルや、いわゆるヤンキーのスタイルばかりだったので、ロンドンのストリート・ファッションは、自分にとってとにかく格好良く見えた。だって見たこともない服を着ているし、見たことのないヘアスタイルだし。当時は今よりも、海外がすごく遠く感じる時代だったので、すごく洒落て見えたのは事実ですね」。

『ネイバーフッド』とも深い繋がりのある写真家、長濱治氏による写真集『HELL’S ANGELS 地獄の天使』。1968年~1980年単独アメリカへ渡り、サンスランシスコとニューヨークのヘルズ・エンジェルスを撮影したもの。バイカーたちの生き様が写し出された貴重な一冊。

 
インタビュー当日、持参してくれた当時の雑誌や写真集の中には、80年代後半から90年代にかけてのロンドンのパンクスや、ブリストルのヒップホップ&サウンドシステムカルチャー、東京を中心としたエッジの効いた人々の姿があった。「当時で言えばすごくアンダーグラウンドなカルチャーだったと思うんです。その中で一番エッジが効いていたのがロンドンだった。日本でそれに近い人となると、メロンの中西俊夫さんや、藤原ヒロシさんとかですね。それでそういう人を追いかけていくと、点と点が繋がっていったんですよ。あと音楽で言えば、当時のワイルド・バンチのようなスタイル、マガジンで言えば『iD』、『FACE』などに掲載されていたオリジナリティがあるスタイル……そういうものはすごく意識したし、そこからファッションを学びましたね。この時代の人たちは、DIY精神があって人と同じものを着ないというか、それぞれが少しづつ違う。よく言われているミックス・ファッションはここから生まれたのかなとも思います」。

ブリストル出身の写真家、ビーザーによる80年代後半のブリストル・サウンドシステム・カルチャーを捉えた写真集『WILD DAYZ Photo by BEEZER』。当時ローカルで活動を繰り広げていた、マッシヴ・アタックの前身となるクルー、ワイルド・バンチの面々をはじめ、ダブ、レゲエ、ヒップホップと独特のミックス感が魅力なブリストルのストリート・ファッションを見ることができる。

 
 

DIY精神から生まれる
オリジナルとミックス感

滝沢さんがロンドンへ初めて行ったのは、1985年のこと。当時、全身「ヴィヴィアン・ウエストウッド」を着ていたことから、渡航の1番の目的は、「ワールズ・エンド」で服を買いに行くことだった。「そのときのロンドンは、すでにパンク・ファッションも落ち着き、ファッションも次の時代へと変わりつつあった時期でした。アメリカからヒップホップが入りはじめたり、ジャマイカからやってきたレゲエがさらにミックスしはじめたときで、例えばブリストルにいたワイルド・バンチなんかは、スポーツウエアを着ているんだけど、少しニューウェイヴぽい要素が入っていたり、ネリー・フーパーなんかは、そこに『ワールズ・エンド』の服を組み合わせていたりして、ニューヨークとは少し違う感じが格好良かったんです。『ボーヤ・スポーツ』のキャップに、『ジャムズ』のショーツ、靴は『ワールズ・エンド』の三枚ベロスニーカーを履くとか。だから僕の中であえてストリート・ファッションを言うならば、音楽とリンクしているってことですよね」。

 
ストリート発の音楽をバックグラウンドに、その世界観を彼らのひとつの表現としてファッションに落とし込んだものがストリート・ファッションというのは、ストリートの重要な意味のひとつだろう。その定義を落とし込んでみれば、現在のストリート・ファッションを新しい角度で見ることができる。
「これは個人的に思っていることなんですけど、ここ最近の『グッチ』や『ルイ・ヴィトン』などのハイブランドや、『シュプリーム』なんかは、今のヒップホップ・カルチャーとリンクしていますよね。なので、ある意味ストリート・ウエアになるのかなと思っています。もちろん『シュプリーム』は、もともとスケートボートのブランドだからストリートからの派生なんだけど、ヒップホップや、最近は一部ダンスミュージックを聴く人たちも着ているし。80年代以降、音楽とファッションはあまり密接ではなかったと思うんですけど、ようやくリンクしてきた感じはしていますね。すごく大きな括りの中で“違った視点”から見ると、『グッチ』も『ルイ・ヴィトン』もストリート・ファッションなんですよ。それをファッション好きや、スニーカーヘッズの子たちが見て真似をする。それが現代のストリート・ファッションだなとは思いますね」。
 

昨年、開催されたフューチュラの個展『GENERATION Z』にて展示及び、販売された、Futura x NEIGHBORHOODのインセンスチャンバー。フューチュラのアイコンであるPointmanの背後から煙が出るシリアルナンバーが入る100個限定のスペシャルコラボアイテム。
音楽とは別に、「ネイバーフッド」というブランドを考えたとき、はずせないストリート発のカルチャーがある。それがモーターサイクル・カルチャーだ。ブランドが始まって以来、毎シーズン打ち出されるコレクションからモーターサイクルのエッセンスが途切れたことは一度もなく、実際に滝沢自身、現役でバイクに乗っているし、パーツを集めてはカスタムをしてオリジナルのバイクを作っている。滝沢が世界でも有数のモーターサイクル・コレクターであることは有名な話だ。「僕の中でモーターサイクルは、80年代に衝撃を受けたロンドンのカルチャーとイコールというか。バイクをカスタマイズすることとかは、まさにDIY精神だし、そこに魅力を感じたんですよね。ファッションで見れば、バイカーの人たちが自分たちのチームのカットオフを作って着ることなんかは、リアルにストリートだなと思います。これはモーターサイクルだけでなく、ジャンル問わずストリート・カルチャーで共通しているのがチーム感なんですよ。そのスタイルのルーツが、ストリート・ファッションではなくストリート・スタイル。彼らの生き様を表しているというか。ブランドの一番の根本にあるのは、こういうものなのではないかなと思います」。

 
ところでインタビューをしている最中に、「ストリート・ファッション」という言葉は、誰が、いつ頃から言い出したのかという話題になった。「これあまり考えたことなかったんだけど、海外でもストリート・ファッションって言うのかな。あまりストリートって感じで括っていない感じがしますよね。だから“ストリート・ファッション”って日本が生み出したものなんですよ。たぶん雑誌の『Boon』とか、『ASAYAN』とかメディアが生み出した日本語。自分たちもストリートにはいただろうけど、自ら『ストリート・ファッション』とは言ってこなかった。だから、ストリート・ファッションっていうのはもう止めようよ(笑)。大きな括りでファッションをやっていて、表現方法が違うというだけでいいんじゃない。たまにあるんだけど、日本にしかない感覚ってあるじゃないですか。微笑ましい部分はとっておいていいけど、恥ずかしい部分もいっぱいあるので。それをグローバルレベルにした方がいいのではないかなと、最近は思います」。
 
今や世界中で使われている「ストリート・ファッション」という日本発信の言葉だとしたら、それに一躍かったのは「ネイバーフッド」をはじめとする、90年代後半から2000年代にかけて「裏原」と呼ばれたファッション・ムーヴメントを築き上げた、日本発のブランドなのではないだろうか。しかし時を経て、東京のストリート・ファッションの形は変化と進化をし続けているようだ。

「ネイバーフッド」のプレスルームに飾ってある、滝沢と深い交流のあるコスタス・セレメティスの作品。ストリートのアイデンティティを持ち合わせながら、90年代初期より活動をするアーティストだ。

 
 

精神をストリートに置き
自らクリエイトし続ける
ここ最近は、「パム」、「ザ・グレート・フロッグ」といったストリート・カルチャーを根源に持つブランドとのコラボレーションが記憶に新しいが、中でも昨年リリースされたフューチュラとコラボレーションしたインセンスチャンバーは、アート作品としても成り立つものとして世界的に話題を呼んだ。滝沢はこれまでに、ジェイソン・ジェシー、ジェフ・デッカー、「ファクト」のエリック・ブルネッティなど、根本的なストリートを熟知し、そこからコアに自身の表現をしているアーティストとコラボレーションをしてきている。中でも長年の付き合いでもあるフューチュラは、「ストリートと言ったら、誰を想像するか」と尋ねた際、「フューチュラ」と答えるくらい滝沢にとっては特別な存在であるアーティストだ。
「90年代中盤くらいからですね。ニューヨークと原宿のコネクションができ始めたころからの付き合いです。フューチュラがすごいのは、ずっとストリートにいて表現し続けているということ。そしていつも何かをクリエイトし続けている。それがすごくいいし、好きなところですね。この間のアートショーも最高だったじゃないですか」。
これから春に向けて「ネイバーフッド」より、コスタス・セレメティスとのコラボレーション・アイテムがリリースされる。今年でブランド創立25周年を迎えた「ネイバーフッド」が選んだ最初のコラボレーション相手は、グラフィティをはじめとしたストリート・アーティストから、現代アーティストへと転身したコスタスだった。「今回のコラボレーションは、ブランドが25周年を迎えたということもあり、『ネイバーフッド』原宿の本店にずっと彼(コスタス)の作品を飾ってあることから、何か一緒にできたらいいなと思いまして。作品的にはソリッドなものが多いですけど、そこが好きな部分ですね。お互い付き合いも長いので、そこまで力まずに一緒に楽しんで作れたと思います。ブランドでコラボレーションをする際は、フレンドシップ的な感じでやっているんですよ。その中で意外性があったり、何か面白いことができそうだなという発想で考えています」。

「ネイバーフッド」原宿店にも長いこと展示されている、コスタス・セレメティスの代表的なアートワーク、「デススター」で使用されているポリスパリケードをビジュアルエフェクトによりプリントした M-51。¥60000 by NEIGHBORHOOD (NEIGHBORHOOD HARAJUKU) Photo Taijun Hiramoto

 

ストリートについて一連の話を聞いたあと、「植物は、取っ散らかるからいいんじゃないの?」と、インタビュー当日に持ってきてくれた植物の本を引っ込めようとした滝沢。しかしこれまでの話を聞いていると、なんだかストリートの根っこにあるWAY OF LIFE(=生き様)的な部分が繋がっているような気がしてならない。例えば、ひとつの植物を手塩にかけて他とは異なるオリジナルを育てる部分などは、まさにDIYであるし、精神的なストリートと同じ気質だと感じてしまう。「確かに自分で手をかけて育てるという発想は、宇宙規模では繋がっているんだよね。バイクも自分でカスタムして、自分だけのものをクリエイトしてっていう感じだし、そのクリエイトするというところでは同じかもしれません。生きているうちに何かクリエイトし続ける。そして、興味のあるものを少しずつ、バランス良く掘り下げていく。それがいいんじゃないのかな」。
 
他とは違う表現で、そこに自分の魂を込めクリエイトし続けること。時代は変われど、ストリートのイズムを受け継ぎながら生きていくとは、そういうことなのではないかと、滝沢は長きに渡って伝え続けてきている。
 
 

滝沢伸介
『NEIGHBORHOOD』 代表/デザイナー。
1994年にブランドをスタートして以来、モーターサイクル、ミリタリーなどに影響を受けたスタイルが、国内はもちろん海外でも根強い人気を誇る。www.neighborhood.jp

 
 
 

Photo Shin Hamada
Interview & Text Kana Yoshioka

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