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Interview with Shinpei Ueno about What is STREET?
Creatives of Skateboarding

Interview with Shinpei Ueno about What is STREET?
Creatives of Skateboarding

現場で起きることやスケートの対象物
それがまさに自分にとってのストリート
多角的にスポットを見つめ
クリエイティブを生み出す

日本を代表するスケートカンパニーであるエヴィセンスケートボードの中心人物であり、映像プロダクションやアパレルブランドとして機能するタイトブースプロダクションを運営するなど、まさしく日本のスケートシーンを牽引する上野伸平という存在。2020年東京オリンピックの正式種目としてスケートボードが選出されたことや、ファッションやメディアなど様々な場面でストリートという言葉が多用されていることで、今まで届かなかった多くの人達にまで広がっているストリートという概念。それぞれが独自の解釈をする中で、そもそもストリートという概念を彼はどのように捉えているのだろうか。「自分たちはずっとストリートでスケートしていたので、そういう場所自体をストリートだと認識しています。スケートの対象となるスポットに対して警備員がいたり、警察がいたり、通行人が邪魔だったり。一筋縄ではいかない自然現象に近い感覚ですね。ストリートスポットをスケートするためには、様々な工夫や知恵が必要。どの時間なら警備員が手薄になるかを調べたり、縁石が経年劣化やグラインドでボロボロになっていたら、ホームセンターで買ったパテで前日の夜中に補修したりしながら撮影に行く場所。それが自分にとってのストリートです。あとストリートマナーというか、暗黙のルールみたいなものもありますね。みんなが大切にしているスポットで問題を起こさない、警察や警備員とも揉めない、ゴミなんかも残さないとか。他にもたくさんあります」。
 
上野にとってのストリートとは、スケートをする際の対象物に過ぎない。「スケートパークでは絶対に味わえないフィーリングというか、ストリートでスケートボードに乗っているとあらゆる悪条件との戦いになるんですよ。状況判断の連続、歩行者や車を注意しながら、突然地割れして凸凹になった路面もクリアしなければならない。そういうのを踏まえてストリートとはこれだなって思う。でもストリートの感覚は人によって違うから、それぞれに自分のストリートがあると思います」。
 
 
スケートボーダーが街を見る視点は、普通の人々とはまるで違う。人が素通りしてしまうような場所でも、多角的にスポットを見つめクリエイティブを生み出す。そうしたDIY精神がスケーターたちの本質であるのだ。「スケーターは環境に適応する能力が非常に高いと思います。縁石の素材をチェックして滑りすぎる時はデッキテープでこすったり、ワックスを忘れてしまってグラインドが思うように滑らない時はコンビニにろうそくを買いに行って代用したり、道路に飛び出した瞬間に車が来てしまうからどうするかを考えることだったり。自分達がストリートな存在であるなと感じるのは、スケートボード用に作られていない街の建築物や環境を利用して美術をしているところだと思います。例えば街をプッシュしているときにブラウン管のテレビが捨てられていたりしたら、それをグラインドする。これこそがスケートボード。1を10じゃなくて0から1にするのがスケートボードの本質だと思っています」。現場で起こることがストリートであるという一貫した考えがあるからこそたどり着く、ゼロから生み出す芸術というスケート観。その考え方は上野の映像製作や洋服作りにも色濃く反映されている。

about Filmmaking & Clothes
大先輩から見て盗んだ
映像製作のノウハウ

上野の製作するスケートビデオ『LENZ』シリーズは、日本はもちろん世界各国から多大な賞賛を浴びていることでも知られている。その1つの要因として考えられるのは、板を弾く音とBGMのシンクロ率であったり、ストーリー性のある映像展開などスケートボードに携わらない者が見ても楽しめる映像作品に仕上がっていること。ではその映像製作におけるクリエイティブはどこから学び、どういう点にこだわって製作しているのだろうか。「FESNの森田貴宏さんというスケート界の大先輩がいて、森田さんの映像を見て撮影の技法だったり、サンプリングやサウンドトラックとの総合性などの映像製作の基礎を目で学びました。今はインスタグラムやユーチューブなど誰でも手軽に映像作品が見られる世の中なので、一本一本の映像作品が消費的になってしまっている。だからみんなそこまでスケートビデオの製作に対して貪欲になっていない気がしています。それはそれでいいと思いますが、自分にとってのビデオ製作は神聖な信仰に近い行為だと思います。夜の撮影でスポットに発電機とライト機材を山ほど持ち込んでロケ地にセッティングしたり、仲間のアーティストを起用してビデオパートのために撮り下ろしてサントラを製作し、スタジオでマスタリングしたり、フィッシュアイレンズの撮影アングルなんて天文学的な数字のバリエーションがあるけど、どう撮影すれば正しいかを研究する。メイクのシーンでも着地のあとどこで映像をカットするかということもディレクターのセンス。着地に合わせていたシンバルの音をもっと強調したりと、言い出したら止まらないんですが(笑)。映像は1フレームの描写だったり、少しの要素の違いが大きく作品のクオリティを左右します。誰も気にならないところまで気にして製作しているのは、スケートビデオへの愛なんです。そうやって作られた作品は見てくれている人もなんとなく他とは違う何かを感じとってくれると思うから」。
 
 

映像作りにもリンクする
洋服づくりのプロセス

映像プロダクションのタイトブースでは、上野がディレクション、デザイナーを務めるアパレルも展開。スケートを含めた上野自身の日々の生活スタイルから感覚的に出たインスピレーションをプロダクトに反映している。「洋服に関しては基本的には自分の作りたいものを作っています。生地の選定から、デザインまで、自分の感覚を完全にフィードバックしています。あとはやはり実践に基づいた作り方。実際に街に出てスケートをしている時に動きにくかったり、このポケット邪魔だなとか結構あるわけじゃないですか。そういうことを自分がスケートしている時に調子が良くなるようにカスタムしています。例えば通常のポケットに、プラスDVDが入るサイズのファスナー付きのビッグポケットを付けてるんですが、これが最強なんですよ。海外だとパスポートを入れたり、小銭を入れたり、出先でCDやDVDなど通常のポケットに入らないものも収納することができる。自分の中での実用性も含みつつ好きなものを作るのが基本ですね。でも一番は自分が好きな服を着てスケートの撮影がしたいんです。洋服作りと映像作りはリンクしています。この生地だったらプッシュしている時にいい感じに風になびくとか、ジャケットがめくれた時に裏地が黄色だったら映像に黄色の差し色が入るとか。このスポットに紫のベロアのトップスだったら絶対映像が良くなるだろうなと思えば、次のタイミングで紫のベロアのアイテムを作ります。そういう感覚で服づくりをしていますね。あらゆるスポットに対応するためにコレクションを作っていると言っても過言ではないです(笑)」。こうした映像と洋服のリンク性を磨いていくという感覚を、上野は幼い頃から見てきたスケートビデオから養っていったそう。「昔からスケート雑誌とかビデオを見るときはそういうところに目がいってました。すごく洒落た格好をしているのに、汚いスラム街みたいなスポットでグラインドしていたり、ニット帽の色を道のポールの色と合わせていたり。そういうスケーターを見て渋いなと思っていました。中学生までサッカーをやっていたんですが、いちいちTシャツをズボンに入れなさいとか、靴下はしっかり上まであげなさいとか、そういうのが嫌でスケートをしてたので、スケーターは自分の理想になりましたね」。

Left:国内外で高い評価を受けた2009年発表の『LENZ』と2013年発表の『LENZ2』。現在は次回作を今年中の完成に向け鋭意製作中であるという。カメラとして使用しているのは、上野いわくスケート撮影用のビデオカメラとして最高の組み合わせであるという『SONY DCR-VX1000』と『Century』のウルトラフィッシュアイレンズ。『LENZ』シリーズではこのカメラで撮影することをコンセプトの1つに置いているそう。
 
Center & Right:TIGHTBOOTH PRODUCTIONからリリースされるアパレル。フィルミングの際に色が映えるよう多彩なカラーバリエーションで展開されていることがわかる。着用してみて初めてわかる細かな気配りのきいたディテールが魅力だ。

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