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Interview with Samuel Ross
about creativity サミュエル・ロスのクリエイティブの裏側

Interview with Samuel Ross
about creativity サミュエル・ロスのクリエイティブの裏側

 

2015年、A-COLD-WALL*(ア コールド ウォール)を立ち上げたSamuel Ross(サミュエル・ロス)。Virgil Abloh(ヴァージル・アブロー)のもとで2年間、クリエイティブアシスタントを務めた経歴を持つ。
彼が手がけるA-COLD-WALL*はイギリスのカルチャーをベースにストリートとハイモードな世界観を取り入れたスタイルを提案し、工業資材などからインスピレーションを得たデザインを盛り込み、今や世界中の人に知られるところとなった。
そんな彼と、革新的なデザイナーを招き、彼らがデザインしたカプセルコレクションも世界各国の限られた店舗で独占的に販売するプロジェクトであるDIESEL RED TAGとのコラボレーションが実現。ナイロンとデニムがミックスされたハイブリッドなプロダクトがラインナップされている。
このコラボプロジェクトでは、どのようなクリエイティビティが落とし込まれているのか。また、サミュエル・ロスの物作りのバックボーンにあるのは何かについて話を聞いた。


 

互いのクリエイティビティを刺激し合うことができた

 
DIESEL RED TAG x A-COLD-WALL*のラインナップは、生地に施された加工やディテールに異素材を取り入れられているハイブリッドなデザインが魅力的だ。まずは、サミュエル・ロスにとって今回のコラボレーションがどのような意味を持っているのかを聞いた。

 

「今回のプロジェクトの目的はA-COLD-WALL*(以下、ACW)がブランドとして成長していっていることを見せることなんです。2015年にスタートして、コレクションを重ねるごとにファッションブランドとして、ACWは洗練されています。それを示す1つとして、DIESEL RED TAGとタッグを組むことができたと感じています。プロダクトを制作していくにあたっては、DIESELのスピリッツと共鳴しながら、シルエットやレイヤリングなど服作りのプロセスを通じて、その個性をどのようにしてACWらしく表現していくことができるのかを考えました。そこにチャレンジしていくことが、私にとって重要なことだったんです」。

 

サミュエル・ロスが重んじたDIESELの”らしさ”とは何だろうか。また、それをどのように自分らしく取り入れてデザインに昇華させていったのだろうか。

 

「DIESELが過去30年間、プレミアムカジュアルウエアというカテゴリーで世界中に与えてきた影響は計り知れません。ただ、DIESELは歴史のあるトラッドなブランドというわけでもありません。世代を超えてアピールすることができるブランドであり、私にとってタイムレスな存在なんです。それが私が感じたDIESELの特徴なのかもしれないですね。今回、コラボレーションを進めるにあたって、自分に何が期待されているかを考えたんです。ACWのプロダクトではナイロンやテクニカルな素材を使って表現をしてきたのですが、DIESELと言えばデニムが有名です。ある意味、方向性が異なるクリエイションを提示している2つのブランドなわけです。ですが、その違いの中にも必ず共通項があるものです。その差異を見つけることがすごく大事なことで、そこに私ができることがあるはずだ、と考えたんです」。

 

そこでサミュエル・ロスが見出した共通項がプロダクトを構築していく際のプロセスだった。そもそもACWは建築デザインなど工学的観点からウエアのデザインがクリエイトされている。工学的見地から見て、DIESELとACWは、物作りに対する共通する姿勢を持っていたのだと言う。

 

「つまり、製造工程、加工、最後のテスト、すべてを含めたうえでの素材の構築方法に共通の価値観があったんです。あとは、そのファブリック同士をどのようにミックスさせていくかが重要になってきます。DIESELが得意とするデニム素材に、ACWらしさを感じるナイロン素材をどう組み合わせてオリジナルなプロダクトを作るのかを考えました。そうすることで両ブランドの哲学が感じられる真新しい物が作れると考えたんです。互いのクリエイティビティを刺激し合うことができて実に面白い作業でした。また、デザインするにあたって、1992年以降に作られたDIESELの膨大なアーカイブを見させてもらいました。当時のプロダクトからインスピレーションを受けながら、そこに新たなエッセンスを加えるようと考えて進めていったんです」。

 


DIESELの“デニム”と“ACW”のナイロンという両者を代表する素材をMIXさせたDIESEL RED TAGとのコラボレーション。2つのブランドの世界観が高い次元で融合したコレクションはまさに唯一無二。

建築工学的な視点も取り入れたプロダクトだけに、ローンチイベントの会場は無機質な廃工場。展示にも建築資材が使用されるなど、アイテムの背景にあるストーリーがわかりやすく表現されていた。

 

サスティナビリティは現代のファッション業界の使命

 
このコラボレーションで製作されたプロダクトには植物染料が使用されている。環境に配慮した物作りを行うところに、昨今話題になっているサスティナブルファッションの要素も感じられたのだが、それについて思うことはあるのだろうか。

 

「確かに今回は植物染料をしていますし、DIESELのデニム作りのやり方を見ても、サスティナブルファッションとマッチしている部分が感じられます。ACWに関して言えば、プラスチック素材のパッケージを無くそうとしていて、リサイクルされた素材を選ぶようにしているんですよ。仕入れる段階から、サスティナビリティとか環境に関する倫理観が、我々と同じような考え方をしているメーカーを選んでいるんです。ブランドとして、ウエアに使用する素材の開発や革新に関しては今後も力を入れていく予定です。そして、ACWをよりラグジュアリーな方向へシフトしていきたいと考えています。もちろん、ただ真新しいファブリックを作るのではなく、それをいかにして環境に優しい形でやっていくかを重要視していますね。これは現代においてファッション業界にいる者の使命ではないでしょうか」。


 

工学の考えのもと、いかに完璧なプロダクトを作るか

 
そんなサミュエル・ロスの物作りにおけるインスピレーション源とは何だろう。

「それはACWの変遷と共に変わってきています。発足当時はアートプロジェクトとしてクリエイトしていたので、その頃では自分の人生で得てきた経験から着想を得てきました。私はイギリスで育ったんですが、今だに階級社会の風潮は残っているんです。そんな社会の中で、私は様々な階級の仲介役として立ち回るような人生を歩んできました。イギリスが抱えている現代社会の歪み、自分が感じてきたことを表現していたのがスタート時のACWです。ブランドを3、4年と続けていくうちに、私もデザイナーとしての経験値が上がってきた今、着想源になっているのは、自分が学んできた事柄ですね。私はファッションスクールではなくデザインスクール出身なので、やはりエンジニアリング(工学)の考えのもと、いかに完璧なプロダクトを作るか、というのが目標でもあり、インスピレーション源になっています」。
 
サミュエル・ロスは自身のバックグラウンドにあるエンジニアリングの哲学を今、プロダクトへ昇華しようと考えている。そんな物作りの空間には、どんな音楽が流れているのだろうか。
 
「今、好んで聴いているのはクラシックなんです。変わらずかけているのはサウンドスケープ、いわゆる環境音楽みたいなものですね。坂本龍一さんの音楽も好きですよ。あとは友人のKelvin Krash(ケルビン・クラッシュ)が、仕事中に聴くと冴えるんじゃないかというミックスを作ってくれて、それを流していますね。彼は文学や世の中の事象を音に変換するのが天才的にうまいアーティストです。次のSS、AWコレクションの音楽も彼が作ってくれています。ちなみに私も10年以上音楽制作をしていて、過去のランウェーでは自分で製作した音楽を使っています。シンガポールのDSMでは私のアルバムを取り扱ってくれているんですよ」。


Dexter Navyによるハイクオリティな映像も制作された本プロジェクト。ウエアだけにとどまらない多角的な表現も魅力だ。

 
洋服だけではなく音楽も制作するサミュエル・ロスだが、そうしたクリエイションを継続していく原動力はどこにあるのか。
 
「やはり、7割くらいは両親からの教えだと思います。父は工業デザインの学位を持っていて、母は社会学の学者だったんです。私は、そんな2人からホームティーチングを受けていた時期があるんですけど、そこでクリエイティビティとはどういうものか、また物事をうまく進めていくにはどうすれば良いのか、問題を解決していく方法などをしっかりと教育されました。その経験は今も自分の原動力になっています。もちろんブランドを運営していくうえで、それ以上の発想や力も必要だとは思うんですが、ベースにあるものですね。残りの3割は成し遂げたときの達成感です。自分が思い描いたクリエイションを実現させたときの喜び。これは何物にも変えられませんね」。

 
DIESEL RED TAGのコラボコレクションから彼のルーツまで。論理的に語られてたその言葉には経験に裏打ちされた哲学と確かな説得力があった。次は何をやるのか? 彼が思い描く新たなクリエイションに期待せずにはいられない。

 

Photo Hideaki Nagata

Interview & Text Ryo Tajima

 

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