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Interview with
Narukiyo Yoshida
(NARUKIYO’S Owner)

Interview with
Narukiyo Yoshida
(NARUKIYO’S Owner)

常に交わる酒と人
吉田成清

「うおい、兄貴。ありがとね。味噌汁もつけようか」、「おばちゃん、今日もありがとう。バナナもお土産で持っていって」。暖かい筑後弁で、次々とランチタイムに弁当を買いに訪れるお客さんに笑顔で答えていく。青山通りから路地を1本入ったところの半地下に店を構える「なるきよ」。のれんより目立つ段ボールに書かれた手書きのポップが軒を飾り、足を踏み入れると、壁には無数の落書きとカウンター。下世話だが粋な雑多な空間。そんな見た目とは裏腹にこの店には、著名人やクリエイターなど業界人、さらには海外からもメゾンブランドのクリエイティブチームなど様々な人が訪れる。パリコレに同行し、その腕前を振るったこともある店主、吉田成清。オープンから18年、人々が集うこの店から東京を見続けてきたなるきよは今の東京に何を思うのか。


 
「僕は福岡出身やけど、東京ってやっぱ魅力的だった。僕が上京した92、3年の東京は洋服、カルチャーだけじゃなくても、生まれてくるものが東京じゃないといかんかったものが多かった。毎日が祭りみたいに寝たらもったいないような街やった。すごく、息しとったばい。僕がパリへ行けるチャンスを頂けたのも、やっぱり街でいろんな人と会う機会が多かったからね。今はコロナでそういうとこが欠けてるよね。面白い人、街にいないような気がするたい。仕方ないけどね」。
 
東京から来てから28年経った今もバリバリの筑後弁で話すなるきよ。この飾らないスタイルも魅力なわけだが、福岡ではなく、東京で店を開いた理由について聞いてみると「福岡は嫌いじゃないばってん、食材もいいし、すごいとこだと思うけど、福岡だったら今はないかもね。福岡は親もおるし、甘えれた街やった。東京だから真剣になれた。もう1日1日が挑戦。お店も軒並みあるし。裸で上京したから、東京きたときは自分で地図書かなきゃいけない。原宿、渋谷、新宿、池袋、浅草、五反田…天神が8個くらいあるし、それぞれが全然違う。場所によってお姉ちゃんとの遊び方も違っとったばい。すごい街と思った。そんな中でクラブのカウンターで、ナンパするぐらいの感覚で気の利いた音楽が流れる店が作りたかった」という。
 
味もさることながら、「なるきよ」の居心地のよさはこういったところに現れている。そして彼は料理人と呼ばれることを好まない。
 
「京都で何年も修行して、何十万取るような人たちを料理人っていうのはわかるけど、10年そこそこお勤め(修行)して、店を開いただけで、料理人ってそんなおこがましいもんやなか。うちはエンターテインメントね。人を好いとうし、やっぱその人たちが来る夜を酒と彩れることが一番よかね。いろんな人がいて楽しいし、常に交わるもんって酒であり、人であり、その中でお手伝いすることが好きなんよね」。
 
30s、40sのファッションを好み、ヴィンテージを愛し、音楽にも精通し、DJも行うなるきよ。ファッション関係者、音楽関係の常連も数知れず。「なるきよ」はまさに社交場として機能している店なのだ。
 
「不思議よね。まあ都合がいいのかもしれんね。感覚が合う人が集まってくるよね。東京はみんながよくしてくれる。甘えれるんじゃないかな。アレックス・ロスだって、作業着のスウェットに描いてくれたりしてね。店にはジャン・アンドレがくれたアートもあるし、トイレの壁にはステューシーも描いてくれた。最初は本当みんな立って飲みよったくらいやけど、仲間が持って来てくれたけん、今は椅子もある。みんながよくしてくれる。このコロナの中でも、今来てくれてるお客さんたちが応援してくれてるのを感じてます。上手に言えんけど、“やってんの?じゃあ行くわ”って二つ返事で飛んで来てくれる人たちがごまんとおるし、本当“1円でっちゃ余計にもうとんなさい”くらいの気持ちで来てくれたり、ありがたい。この場を借りるならね、頭を下げてお礼をいいたいよね。毎日が飽きないし、まだ19年目ばってん、まだ俺たちは30年も50年もやりたい。やっと東京に馴染んで来たのかもよ」。

ランチタイムには弁当も販売中。店の外に貼られた段ボールの手書きのポップにニヤリとさせられる。他の店にはないあえての下世話で粋な演出は「なるきよ」の真骨頂。カウンターの落書きだらけの壁や、所狭しと貼られたうちわ、ユニークなオブジェ、日本らしい熊手も飾られた気取らない空気と店主の人柄が、人を呼び寄せる。


 
ホームページもない、インスタグラムもない。宣伝はゼロ。それでもなるきよの人柄に惹かれ、今日も様々な人々が集まる。最先端都市と呼ばれる東京だが、こんなビルの一角で人が繋がり、アナログに楽しめる場所がある。こんな姿も東京らしさのひとつだ。
 
吉田成清
福岡県朝倉市出身。28年前にフェリーを使いバイクと共に上京。様々な店で約10年間のお勤め(修行)期間を経て、2004年に「なるきよ」をオープンさせる。古着好きとしても知られ、ファッションにも造詣が深いほか、音楽をこよなく愛し、これまでに2枚のMIXCDも制作。DJとしてイベントに出演することもある。
 
▼店舗情報
なるきよ
東京都渋谷区渋谷2-7-14中村ビルB1
03-5485-2223
営業時間:18:00~24:30
定休日:不定休
 
 
 

Photo Shingo Wakagi Interview & Text Satoru Komura

 

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