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Interview with
Luke Meier (OAMC)

Interview with
Luke Meier (OAMC)

未来に残すべき
ファッションの形

“現代におけるヘリテージ”ということを考えた時、真っ先に思い浮かんだのがOAMCであり、デザイナーのルーク・メイヤーであった。長く着られる上質な素材、それを生かす伝統に裏付けられたテーラリング、そして、シンプルかつモダンなデザイン。それらを兼ね備えた魅力が詰まった彼が生み出す服は、時代を超えて未来でも愛されるに違いない。久々に来日した彼に話を聞いた。

 

完成させたのちも
進化させていく

 

「英語を母国語にしている私たちからしてみると、“ヘリテージ”というワードは“オールド”などと同じように“古臭い”という意味に感じます」。今回本誌でテーマにしている“ヘリテージ”というキーワードについて、ルークはこのように語り出した。そしてこのように続けた。「でもポジティブに変換すると、自分達では変えることができない、変える必要がない揺るぎないものが存在していて、それがいまだに継承され続けている。それは素晴らしいことだと思います」。過去から現在へ、そして未来へ。OAMCの服作りには、確かにそうした息遣いを感じることができる。例えばブランドの代名詞とも言えるピースメーカージャケット。ヴィンテージのミリタリーアイテムをカスタムし、再構築したジャケットは、ほぼ毎シーズンにわたってOAMCの中で継承され、展開され続けている。これはまさしく我々が考える現代のヘリテージであり、アイコンである。そのことを伝えると、彼は深く頷いた「。もしかしたら日本で使われる“ヘリテージ”という言葉は、私たちは“オーセンティック”と言い換えた方が前向きな言葉として捉えられるかもしれない。“ヘリテージ”をアップデートしたものが“オーセンティック”という感覚です。でもヘリテージを進化させるには高いクオリティとセンスが必要だし、一歩間違えるとどうしようもない駄作になってしまう可能性もある。そうならないように常に気を付けて服作りをしています」。

 

では彼にとってヘリテージな存在とは何なのか?そんな直球の質問をぶつけると「ウェストコーストのスケートボードカルチャー。何百年もある歴史があるものではないけど、僕にとってはそれがヘリテージです」という答えが返ってきた。ストリートで生まれたスケートボード。インディペンデントで、自分がカッコいいと思うスタイルを信じ表現する自由な感覚。前キャリアから表現されてきた彼のルーツに脈々と根付くそれこそが、見た目が美しいだけのファッションブランドとは異なる、我々を惹きつけるOAMCの魅力の一つであることは間違い無いだろう。

 

そんなOAMCの服作りのインスピレーションの元は“ダイアログ=対話”にあるという。「ダイアログはクリエイティブにおいて、とても必要なもの。その相手は人だけではなく、その時自分が置かれている場所や自然など本当にさまざまですが、それらと対話を深めていくことによって、いろんなことが見えてきます。例えば来季のコレクションでは、山に行くことを想定して作った服がありますが、そのインスピレーションは、みんなが新型コロナウイルスで自粛をしているとき、人と距離をとって自然と一体化できる場所として、山がいいんじゃないかと感じたから。自分自身も自然の中に身を置くことは大好きなんです」。ルークは人や社会、そして自然と対話し、丁寧に向き合うことで、現代にマッチしたウエアを生み出している。そして、彼のものづくりにおいてもう一つ大切なことがある。それは“アイテムを完成させたのちも進化させていく”という意識を持って制作に取り組んでいるということだ。「一つのものを完成させて世の中に発表したからといって終わりではなく、それが世の中に出ることによって、それを目にした人が会話を始め、新たな何かを生み出すことに繋がっていく。雑誌などのメディアも同じだと思っています。テーマを掲げて行うコレクションも雑誌作りも発表する時期は決まっているので、絶対に間に合わせなくてはならないのですが、掘り下げてみると実はそれってもっと長い時間のかかるプロジェクトかもしれない。その掘り下げた思いを常に持ち、発表し続けるようにしています」。自分自身が生み出したものに責任を持ち、常にアップデートさせて、彼は現代のヘリテージたるウエアを作り続けている。

 

過去から美しいものを見出し、
この先の未来へと繋げる

 

過去と現在をつなぎ、ファッションを通して表現を続けるルーク。では彼はその先にある“未来”のファッションについてどのように考え、どのようにアクションを起こしているのだろうか。「環境について考え、サステナブルに取り組むということは、今の時代にものづくりをする上で切っても切れないものだし、今やみんなが考えていることですよね。でも単純にサステナブルな素材を使って作られた服だからといって、完全にサステナブルな服とは言い切れない。素材を織る人が健全な場所で健康に働けているのか、輸送する際に公害を発生させて別の環境問題を起こしていないか、プライスは適正なのか、など本当に総合的にいろいろなことを考えないとサステナブルとファッションの連動はできないし、それって本当に難しいことだと思っています。だからこそ私は、自分ができる範囲のことを一つ一つ丁寧にやっているんです」。そんな思いから生まれたのが、“RE: WORK Collection (リワークコレクション)”だ。先シーズンより展開されているこのコレクションでは、廃棄されたり、現代では美的感覚の合わなくなった衣服を新しく作り変え、モダンなものに昇華させることをコンセプトとしている。すでに存在する衣服、生地、トリムなどを利用することで、新たに素材を生産することを最小限に抑えるこれらのプロダクトは、同時に彼らの制作方法に影響を与えたデザインを探求する旅でもあるという。

 

「リワークのプロダクトは私たちが何もしなかったらゴミ箱行きになってしまう洋服に目をつけて作っているんです。それらはただ捨てるだけだと公害になってしまうので、時間がかかるけどそれぞれの素材に合わせて1点1点作っています。本当は生地から裁断して作る方がよっぽど簡単なのですが。それくらい難しいチャレンジではあるけれど、これが今の僕が実現可能な、未来に向けたファッションの形だと思っています」。染色、ディテール、シェイプなど、職人的なアプローチを強化して作られたアイテム群。ルークの言葉通り、リワークコレクションで展開されるウエアは、オリジナルのヴィンテージピースの形状に合わせて、カスタムフィットし、調整されて作られており、標準化されたパターンはない。分解、再装備、調整、構築を経て、オーバーダイされ生まれ変わったプロダクトは、高い技術に裏打ちされた作りの良さとモダナイズされたシルエットが印象的な、美しさとタフさを兼ね備えたものへと仕上がっている。それはヴィンテージのミリタリーアイテムを使用した代名詞のピースメーカージャケットも同様。その丁寧な作りに彼らの環境への真摯な姿勢がうかがえる。過去から美しいものを見出し、ルークらしいやり方で再活性化させ、この先の未来へと繋げる。このアップサイクルアプローチもルークの表現する社会的メッセージである。そしてその行動の根底にあるのはやはり過去をアップデートするという考え方なのだ。

 

¥238400 by OAMC (EDSTRÖM OFFICE)
 
衣服を再利用し、モダンに進化させたリワークコレクション。こちらは80年代のM-65のライナーから生み出されたピースメーカージャケット。洒落た2トーンカラーに加え、立体的なスリーブデザイン、パッチワークポケットなど、高い機能性を持った作りの良さも魅力。
ヘリテージを
アップデートさせ
働き方も生き方も
進化させる
職人技とモダンを組み合わせた
日本の意外性が面白い

 

新型コロナウイルスの影響で久々の来日を果たしたルーク。これまでに幾度も来日を重ね、親日家として知られる彼に、改めて日本の好きな場所について尋ねてみた「。一つだけ選べと言われると東京になってしまうかもしれない。東京ですごくいいなと思うのは、大きな商業施設がある大通りから1本裏道に入るだけで、すごく静かでホッと休まる場所があるところです。そんな相反する2つが共存する街って世界中探してもあまりないんじゃないでしょうか。ニューヨークなんてどこの通りに行っても常に緊張感が漂っていますからね。東京はそんな二面性が素晴らしいと思います。また、以前は少しだけ日本国内も旅行しました。(藤原)ヒロシさんと一緒にスノーボードに行った北海道はすごく素敵な場所でしたし、能登半島でそこにある自然に触れたり、紙漉きの職人の方に会ったりしたのも素晴らしい経験だったと思います」。日本の魅力が次々と言葉として出てくるほど、ルークは日本に魅せられている。そして、それは服作りにも大いに反映されている。実際OAMCには日本の素材を使ったプロダクトが多数ある「。日本には職人技とモダンなものを組み合わせたものや場所が多いと感じます。それは私にとってすごく興味深いこと。私のクリエイティブにも大きな影響を与えています。ヨーロッパでは職人が作ったレザーシューズに合わせるのはクラシックなスーツと決まっているように、固定概念に沿ったルールを守って物事が進められることが多いのですが、日本では昔ながらの素材をモダンなウエアに使用されることもありますよね。意外性のあるアイディアにいつも驚かされます。それらを発見するのはとても面白いので、必然的に日本の素材を使うことも多いんです。何よりクオリティが高いですから」。近年はダブルタップスやフラグメントデザイン、森山大道など日本のブランド、アーティストとのコラボレーションも展開しているOAMC。日本の魅力を掛け合わせ、新たなプロダクトを生み出すその姿勢は、過去のヘリテージを進化させ、現在、そして未来へと展開するマインドと通ずるものがある。

 

OAMC以外にも、さまざまなプロジェクトを手がけるルーク・メイヤー。ものづくりの姿勢はプロジェクトによって異なるのか。そんなことを尋ねると「全て同じ。何をするにしても必ず同じマインドでいることが大切だと思っています。そこに線引きはない。例えば車を作って欲しいと言われたって同じように作りますよ」との答え。自分自身が表現するものは唯一無二。物静かなイメージの通り、インタビュー中も言葉を選びながら紡いでいく姿が印象的だったが、その回答から内に秘めた絶対的自信を垣間見た気がした。

 

昨年子供が産まれ、生活が一変したというルーク。「今までだったら夜中の2時までデザインスタジオにいても全然平気だったけど、子供が生まれてからスタジオに夜中の2時までいることはあまりなくなりましたし、2時間くらいでデザインが出来上がることも増えました。別に夜中まで作業をすることが悪いとも思っていないし、そんな経験があってよかったと思っていますが、こんな風に仕事を進められることができるとわかったのは大きな発見でした」。これまで仕事とプライベートの時間の境はなかったが、ある種明確に線引きすることで、人生は豊かでバランスの取れたものになっているという。父親になって計画的に集中して仕事に取り組むようになり働き方に変化が出たようだ。「最近はドレスを作ったんです、かわいいでしょ」。子供の写真を見せながらそう話す彼の表情はとても柔らかなものだった。ヘリテージをアップデートさせ、働き方も生き方も進化させながら、ルークはこれからも表現を続けるだろう。それらは彼の子どもが生きる未来にもきっと残っているはずだ。時代を超えたマスターピースとして。

L to R
¥118300 by OAMC (EDSTRÖM OFFICE)

 

リワークコレクションは多数のアイテムで展開されている。このジャケットは70年代のスイスのヴィンテージのアーミーシャツをベースに再構築し、染色したもの。独自のグリーンが味わい深い。

 

¥80600 by OAMC (EDSTRÖM OFFICE)

 

左のジャケットとセットアップで展開されるパンツ。メランジコットンがタフな印象を与える1本は、現代にアップデートされたストレートなシルエットが美しい。取り外し可能なベルトもポイント。

ルーク・メイヤー
伝統に敬意を払いながらモダンなセンスをミックスさせ、ルーツであるストリートマインドを落とし込んだ上質なウエアで世界中から支持されているOAMCのデザイナー。

 
 
 

Photo Yuto Kudo Taijun Hiramoto Interview & Text Satoru Komura
This article is included in

Silver N°18 Winter 2022-23

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