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Interview with Kei Henmi
about Reminders of Time 時間を超えて大切にしたいモノたち

テクノロジーが進み、便利な世の中になった今。機能的なモノやお洒落なモノは手軽に買うことができるようになった。そこで改めてもう1度、モノの価値について考えてみたい。誰しもが長年大切にしているモノを持っているのではないだろうか。きっとそれは、購入した時の思い出があったり、長年思い焦がれたストーリーだったり、時間を超えて使い続け自分の一部になっているモノ。また、ヴィンテージのようにそのモノ自体が時代を超えてきたのであれば、経年変化やそのモノが持つ時代背景も我々を魅了するだろう。そう考えると、モノの価値には「時間」という存在が大きく関係していると言えるはずだ。PART1では、時間とモノに向き合う5人とモノの価値を考えた。

Interview with Kei Henmi
about Reminders of Time 時間を超えて大切にしたいモノたち

テクノロジーが進み、便利な世の中になった今。機能的なモノやお洒落なモノは手軽に買うことができるようになった。そこで改めてもう1度、モノの価値について考えてみたい。誰しもが長年大切にしているモノを持っているのではないだろうか。きっとそれは、購入した時の思い出があったり、長年思い焦がれたストーリーだったり、時間を超えて使い続け自分の一部になっているモノ。また、ヴィンテージのようにそのモノ自体が時代を超えてきたのであれば、経年変化やそのモノが持つ時代背景も我々を魅了するだろう。そう考えると、モノの価値には「時間」という存在が大きく関係していると言えるはずだ。PART1では、時間とモノに向き合う5人とモノの価値を考えた。

邊見 馨
「Timeworn Clothing」代表。ワークウエアをルーツとする「At Last&Co.」、ミリタリーやスポーツをルーツとする「Butcher Products」、アクセサリー類の「Timeworn Clothing」3ラインすべてを手掛ける。
時間をかけて回り道することで
自分の好きなモノがわかってくる
邊見 馨
アメリカンヴィンテージの雄
が考える魅力を感じるモノたち

Respect Timeというテーマで時間の価値を探る今号を制作するにあたって、真っ先にインタビューすべき人物はこの男、邊見馨だと確信を持った。現在、自身が手がける「Timeworn Clothing」では、アメリカンヴィンテージに向き合い、これから先の時代へと使い続けられる洋服を生み出している。その時間を超えてきた服に対する熱意の視線は、ブランド名を見てもわかる。これまでもこれからも洋服と向き合い続ける邊見に話を聞いた。彼はその古きアメリカのスタイルを掘り下げていく中で、どんなところに惹かれていったのか?
 
「10代後半から自分がそういった洋服を好きになっていく中で、教科書だったのは映画ですね。出てくる車、バイクが格好良かったり、時代背景に合った服や建物全てに影響を受けてきました。(フランシス)コッポラの『ランブルフィッシュ』や『アウトサイダー』。もっと古い映画で言うと『ザ・ワイルド・ワン』や『ワンダラーズ』、『ラブレス』のような青春っぽいのが好きでした。それに、その頃、原宿周りで遊んでいると格好良い先輩達や仲間達もいて。みんな趣味が良くて、そういう人たちに衝撃を受けた思いが、いまだに続いているっていう感じかな」。
 
今とは違い、80年代後半の頃の話だ。携帯やインターネットも普及していない時代に、自らの足で動き、人に会い、モノを実際に見ることで情報を吸収していった時代。そうやって得たものは、スマートフォンを通して大体のことが知れる今とでは、比べ物にならない程の衝撃を覚えるはずだ。「原宿や渋谷、新宿での夜遊びが一番吸収できる場所だったね。面白い場所があって、面白い人がいた。今とは違って渋谷や原宿が大人の遊び場っていうノリでした。世間は、モードが流行っていた時代に、色褪せたジーパンを履いてパックTを着てサマになっている。そんな格好良い人が少数だけどいて、憧れていたわけです。そういうところに行くんだから、自分も恥ずかしくないように格好をつけていかないとっていつも思っていました」。10代の頃に影響を受けた、映画で観たアメリカのカルチャーや先輩達。そういった格好良いものに対しての憧れを情熱に、これまで突き進んできた邊見の歴史を垣間見ることができる話だ。そしてその後、20代半ばに邊見は渡英をする。その時の経験が、現在に至るまでの趣味を突き詰める姿勢へと影響したようだ。
 
 

渡英した経験が育んだ
寄り道をすることの大切さ

「20代はこれから生きていく中で、人生を決める大事な時期だと思います。そんな頃に、全く知らない土地で言葉も通じないようなところで学んだことが大きかった。日本人も少なく、情報もない時代は、イギリスで日々生活すること自体が大変でした。初めは英語を覚えて帰ってくるだけでも良いか、くらいの気持ちだったのですが、住んでいるうちに、いろいろな目標が出来始めて。寄り道をすることもあったけれど、それで新しい発見をした時には、全て直結していないこともありなんだと感じるようにもなりました」。
 
好きなことを続けること、それも勿論大事だが、様々な寄り道も大切なんだと邊見はいう。「みんなから見れば、自分は好きなことをずっと続けてきたと見えているかもしれない。でも、そんなことはないんだよ。20代は全然違うモノを好きだった時もあるし、違うスタイルに手を出したこともある。その中で長く続くものもあれば、続かないものもある。けど、そういうことを続けているとさ、徐々に自分の癖みたいなものを理解できるようになってくる。『俺はこういうのが好きなんだ』とか『これで良いのかな』っていう風に経験が増えていくじゃないですか。それで良いんだと思います。振り幅を広げられるし、ボキャブラリーを増やせるわけだから。そうやって経験を増やすことで、歳を取るにつれて自分が好きなものが見えてくると思うんです」。現在、アメリカンヴィンテージを語る上で最重要人物として名前が挙がる邊見にも、紆余曲折な経験を経てきた歴史があるようだ。そうして今回の時間に対する視点へと話は進む。時間の価値とは何なのか?古ければ良いというわけではないはずだ。
 
「洋服も道具に近い気がしていて。着ていくと色が褪せていって格好良くなるモノとならないモノがあるのは確かだね。それに、いつの日か自分でも古いモノ自体を、もう古いとか、新しいとかで判断しなくなっています。
『これは、自分が好きなモノ、好きなスタイル』っていう見方をしているのかな。感覚的な話ですから、説明するのは難しいです。ただ、30年代、40年代、50年代にできたモノが、その後60年以上空気に触れて劣化したり、古ぼけたりしたところが、なんか良く見えるっていうことはあるのかもね。要はフィーリングです」。
 
 

邊見が追求し続ける
クオリティの高いものづくり

そうして、今年でブランドを開始し10周年を迎える「Timeworn Clothing」では、ワークやスポーツ、ミリタリーという軸を行き来しクオリティの高い服作りを行っている。その服作りに一貫して言える事は、長く使えるモノであるという事。「リーバイス®︎のジーンズだって、100年残ることを目指して作ったのかはわかりませんが、事実、ヴィンテージとして残っています。その背景には、クオリティの高さ、頑丈さがある。道具に近いモノですね。しっかり洋服を作れば、何年も着ることができる。そういうモノを作りたいと思っています。それに、ミニマムなデザインというのは、長い間親しまれるし、気分が離れても戻ってこれるもの。ディティール云々よりも、オーセンティックな感じのものは、時代を超えていけるモノなんだと思います。そういう時代を超えてきたモノから影響を受けて、自分が着たいと思える素材、シルエット、縫製で服を作っているんです」。若い頃に受けた、古き良きアメリカンカルチャーへの憧れを軸に、邊見が思う「Timeless」な格好良さを徹底的に詰めるクリエイションには、昔から根強いファンが多い。その揺るぎないクリエイションの追求は、店舗に備わる什器や自分たちで発行するブック『TALES OF TOMORROW』などを見ても一貫した拘りが伝わってくる。お洒落に見せる事は、ちょっとしたお金があれば簡単に出来ることだが、それが格好良く見えるかは別の話だ。邊見自身や周辺の人物、ブックに登場する人物達は、皆がスタイルを持ち、男が唸る格好良さがある。邊見にとって格好良さとは何か。
 
「一貫してみんなに言える事は、何かにたくさんの時間を費やしているよね。真剣に何かと向き合って長く取り込んでいる人は、それが滲み出ている。スポーツにしたって、趣味にしたって。男っぽいものが好きっていうところが共通しているかな。ちょっとやさぐれている方が好きなのかもしれません。自分の人生はやさぐれから始まっているので(笑)」。そうして服装の話にも繋がる。「自分の格好も、歳を取るにしたがって、スーツを着たり、ネクタイを締めることに抵抗がなくなってきた。自分の風貌に合ってきた感じがします。着たい服でも今の自分に似合う似合わないがあるから、年齢や経験で似合うようになるまでが難しい。そこが洋服の楽しいところ。でも、実は自分が楽しめていれば似合うか似合わないかは二の次で良いんです。そして、両方が出来るようになると洋服がもっと面白くなるんだろうね。だから、自分もいまだに練習中なんです。楽しむことが大事。気が付いたら『あれ、オレ結構似合ってんじゃん』ってなる時がくるから。時間を使ってたくさんの楽しい回り道をする。チャレンジは大事だよ」。
 
 

Chevrolet
Styleline 1950s

「もう9年くらい乗っています。エンジンは小さくて、スピードも出ないんですけど乗ることで気分の上がる1台です。ちょっと目立ちすぎて困るんだけど(笑)。これはアメリカで見つけました。バイクもそうですが、40年代後半から50年代初期ぐらいの年代に魅了されますね。気に入っているのがこのグリーンの色。それとフォルム。車内から見る景色も、同じ景色なのに特別な時間を感じる。非現実的な瞬間が良いんです」。

Rolex
Oyster Army 1930s

「30年代のロレックス、アーミーケースと言われるタイプです。イギリスに住んでいた時に買いました。ユニークダイヤルと言い、上がアラビック文字で、下がローマ文字。アーミーケースというけれど、これは軍に納品されていたものではないようです。腕時計はこういうものを含め何本か持っているんですが、第一印象で良いと思えるのはこの1本。これはサイズが小さいので、シャツの中だろうが出入りが楽なところも好きですね」。

 
 

Levi’s®
501XX 1930s

「サスペンダーボタンが取れた頃の30年代後半のジーンズです。こういうモノが自分のクリエイションのベースになっています。デニムは削ぎ落とされたミニマムなデザインで、いつの時代も変わらない。まさにアメリカらしい王道なスタイルです。自分が納得の行くクオリティのもの、タイムレスなものを提供し続けたいという哲学に当てはまるモノなんです。自分が着たいものづくりをこういうものから勉強させてもらっています」。

At Last&Co.
Leather Jacket

「皮ジャンは、Timeworn Clothingを始めた頃から作っています。これはショート丈のスポーツレザージャケット。スタイル的にも40、50年代を参考にし、ウエストバンドが入り、内側にシングルのブランケットを入れています。シンプルでどこに行くときも着れるモノですが、根本はバイクに乗る時用に考えられた背景があり、風を通さず防寒性も高いので、自分でもバイクに乗る時に着るアイテムです」。

 
 

Left At Last&Co. Right Hercules 1930s Denim Work Jacket

「ヘラクレスというストアブランドで、1930年代のデニムジャケットです。アメリカのワークウエアでも基本中の基本と言えるモノ。これは、手に入れた時から自分の中で気持ちが盛り上がる1枚なんです。その1枚を参考に、5年前くらいにAt Last&Co.でも作りました。着続けても飽きないですし、デニムは、着れば着るだけ、時間が経つほど新品よりも格好良くなっていく。旅行にも必ず持っていったりします」。

 
 
 

Photo Masami Naruo
Interview & Text Takayasu Yamada

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