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Interview with

Clemens Poloczek (iGNANT)
about LIFE with GOOD DESIGN

Interview with

Clemens Poloczek (iGNANT)
about LIFE with GOOD DESIGN

Braun
Audio Set

ディーター・ラムスは、クレメンツがデザインについて語るとき、欠かすことのできない人物の一人だ。そのラムスの代表的なデザインの一つである、ブラウンの壁掛けHi-fiセットは、1年間近くセカンドハンドのショップやオークションサイトを探し回り、ようやく手に入れることに成功した。テープの音源は購入当時の60年代や70年代の音楽が入ったまま。クレメンツのインテリアの中で、センターピースといえるクオリティと存在感を放っている。

ラムスに共鳴する美学

クレメンツ・ポロチェクのデザイン哲学は「Less is More」。これは、彼がヒーローと称える、ドイツ人デザイナーのディーター・ラムスのデザインアプローチと深く繋がっている。50年代初頭から、ブラウンのデザイナーとして数々のマスターピースを世に送り出してきたラムスのデザインは、無駄がなく、機能的で、美しい。「当時ラムスは、ロゴを大きくしろという上からの指示を頑なに拒んだ。彼が“良いデザイン”として掲げていることの中に、機能性や革新性、ミニマリズムが含まれているけれど、削ぎ落とされた美しさを追求し、それを実現したデザイナーだと思うよ。僕が考えるグッドデザインの定義は、デザインと利便性の完璧なバランスにある。これが実現できたら、そこが頂点と言えると思うんだ」。

リミックス世代が生み出す新しい価値
ラムスがアップル製品のデザインに大きな影響を与えたことは、多くの人間が指摘しているが、やはり本当に優れたものは出尽くしてしまった感が、個人的には否めない。ファッションや音楽のリバイバルの方程式を見ても分かるように、年齢を重ねれば重ねるほど、新鮮な感動を得られない自分に気づかされるのだ。「僕らは言ってみれば、リミックス世代だ。だから、既存のものを組み合わせて、どんな新しい素晴らしいものを作れるかが、ものづくりのポイントだと思っているよ。スニーカーでいえば、クラシックモデルのリミックスはことごとく失敗しているけれど、ヴァージル・アブローのアプローチは見た目の美しさだけじゃなく、ストーリーが冴えている。単に、素敵で美しいだけじゃなくて、コンセプトがしっかりあることが重要だと思う。僕はアブローのファンではないけれど、彼のリミックスの才能は素晴らしいと評価しているよ。本当に面白いし斬新だ。必要のない部分を取り去り、残された優れた要素をミックスし、一つの新しい作品(アイテム)を生み出す。コピーだと簡単に切り捨ててしまうのではなく、その背後にあるコンセプトやストーリーを読み解くことが重要だと思う。優れたコンセプトやストーリーの根底には、先人へのリスペクトが潜んでいる。僕はそこに感動するんだ」。
ヴィズヴィムやエンダースキーマをお気に入りのデザインとして挙げたクレメンツだが、彼は決して日本フリークではない。ただ純粋に、ディテールへのこだわりといったデザインアプローチに惹かれているのだ「。ウェブ上をサーチして、好きなモノを集めるのが習慣なんだけれど、気がついたらその中に、日本のデザイナーや作品を見つけたんだ。だから日本のデザインとの出会いは、言ってみれば偶然なんだよ。日本のデザインの素晴らしさは、ミニマルだけど冷たくない、考え抜かれたクオリティが存在するところだと思う。木などの素材を多く使うところも好きだね。また、日本という国がスペース上の問題を抱えているため、コンパクトで機能性が高いものを生み出そうという点に注意が向けられている。そのデザインアプローチが好きだね。北欧のデザインと似ているかもしれないけれど、日本のデザインの方が生活環境や様式と密接に関連していて、実用性が備わっているところが惹かれる理由かな。優れたデザインはその背景になる様式やコンセプトも重要な役割を担っているからね」。

 

デザイン哲学は“Less is More”

 

クレメンツが大切にするこだわりは、ささやき声のように、聞こえる人にしか聞こえない。ある意味とてもパーソナルなものだという印象を受ける。とても繊細で、わびさびにも似た彼のデザイン哲学は、日本人が大切にする価値観との共通点を感じさせる。「ドイツにも、僕のような価値観を持つ人はたくさんいるよ。ただ、出版物に関して言えば、『iGNANT』と同じ哲学でやっている人は、あまりいないと言えるかな」。クレメンツがクリエイティブディレクターを務めるオンラインマガジン『iGNANT』は、写真、アート、デザイン、建築など、様々な分野の若い才能と協働し、独自の切り口で掘り下げたコンテンツを掲載している。そこには、当然ながら彼のデザイン哲学や美学が色濃く反映されている。クラフトマンシップ、ミニマルデザイン、研ぎ澄まされたクオリティー、優れたコンセプトとストーリー性。これは、彼がデザインを選ぶ時のポイントでもあり、
『iGNANT』のキーコンセプトでもある。「コンテンツの撮影でも、僕は色んな要素を過激なほどに削ぎ落とし、できるだけ雑音を排除して、ミニマルな美しいイメージを作り上げることに、エネルギーを注いでいるよ。“Less is More”の哲学だ」。

 

クレメンツ・ポロチェク
2007年にスタートしたオンラインマガジン『iGNANT』のエディターインチーフ兼クリエイティブディレクター。スニーカー、レコード、デザインプロダクトのコレクターでもある。

Alden Oxford Shoes

スニーカーのコレクターでもあり、普段はスニーカーばかり履いているクレメンツが、「本当に良いものには、違いがある」ということを実感させてくれたのがオールデンのレザーシューズだ。オックスフォードのほかにローファーも所有する。「最初はフィットしないんだけど、履き続けるうちに第二の肌のように足に馴染んでくるクオリティーは素晴らしいね。クラシックな職人技術とミニマルな要素が気に入っているよ」。

Braun
Film Camera Nizo 801 Macro

こちらもディーター・ラムスの作品。機能性と構造美を兼ね備えたカメラは、クレメンツのデザイン哲学を象徴するアイテムといっても過言ではない。ハンドルをフリップすると、平らに置ける無駄のないデザインは隠れたハイライトと言えるだろう。「この前、グッチとのプロジェクトでも使ったけれど、考え抜かれたデザイン設計には、使うたびに感動させられるよ。何をどう撮るかをじっくり考えさせられる、2分間というフィルムの長さも好きだね」。

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