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Interview with
Charaf Tajer “Color" Attracted to vibrant colors
in Casablanca

Interview with
Charaf Tajer “Color" Attracted to vibrant colors
in Casablanca

人生最後の日を過ごすような、
カラフルさに惹かれて。

ラッパーのトラヴィス・スコットやオクタヴィアン、ラテン・ポップ・シンガーのJ.バルヴィンをはじめ、“クールな”アーティストたちが今こぞって着ているのが、CASABLANCA(カサブランカ)。2018年にパリでデビューしたばかりの新生ブランドだ。デザイナーのシャラフ・タジェルは、ピガールのステファン・アシュプールをはじめとするクリエイティブ集団「パン・オ・ショコラ」の一人であり、ヴァージル・アブローが初めてDJをしたパリのクラブ、LE POMPON(ル・ポンポン)の元オーナーとしても知られる。20代ですでに成功を遂げた彼だが、30代からの次なるプロジェクトとして、自身の原点でもあるモロッコ・カサブランカの名を掲げて新たな挑戦に臨んでいる。

2019 S/S COLLECTION:「この世に存在しない美しい場所にある架空のテニスクラブ」をテーマに、手作業でイラストが描かれたシルクシャツ。ブランドのアイコンであり、毎シーズン異なるカラーで展開予定。

 
 

カサブランカとパリのルーツを
ファッションで色鮮やかに表現
ロンドンに構えたスタジオを訪れると、入り口に飾られたブランドのシグネチャーアイテム、「カサブランカ・テニスクラブ」のシルクシャツに目を奪われた。ブルー、ピンク、レッド、グリーン、とインパクトの強い原色が並び、遊び心あるカラフルな色使いが特徴的だ。その色彩感覚はモロッコの街から大きな影響を受けているそうで、「街中で人々が鮮やかな色をまとっている様子は、まるで人生最後の日を過ごしているかのように見えたんだ。本当に強烈で、その日その日を力強く生きる姿に心から感動した」と振り返るシャラフ。「僕にとって色は欠かせない。ひとつの色に限ったことでなくて、異なる色が並ぶことで生まれる相乗効果が美しいと思うんだ。だから好きな色を、ひとつ選ぶことはできないけど、服作りにおいてピンクはお気に入りかな」。そう聞いて、ピンクシティとし て知られるモロッコの都市、マラケッシュが頭に思い浮かぶ。

MOROCCO ORANGE:オフィス入り口には、モロッコのフルーツと言われるオレンジがいつも飾ってある。

2019 A/W COLLECTION:カサブランカのお土産を服に落とし込んだ2019年秋冬コレクション。

クールというよりは、“ビューティフル”でいたいんだ

2シーズン目となる2019年秋冬コレクション名は、「ミッドナイト・カサブランカ」と名付けられた。その名の通り、ブランド名にも選んだカサブランカに思いを馳せている。彼にとってこの地は、両親が恋に落ちた場所であり、自身が生まれる原点になったところ。縫製工場で働いていた両親はカサブランカのアトリエで出会い、恋仲になり、一緒にパリへと渡ったのちにシャラフが生まれたのであった。彼はパリで生まれ育ったが、幼い時から毎年カサブランカで夏休みを過ごしている。カサブランカとパリといえば、映画 『カサブランカ』(1942)で描かれた恋物語の舞台としても有名であり、そんな2つの街が紡ぐ美しきラブストーリーの思い出を、シャラフは衣服で鮮やかに描こうとしているようだ。コレクションのルック後半はピンクで彩られ、ロマンスの一節が垣間見える。そして 彼のルーツとなる街で目にした、モザイク画や、幾千の星が輝く夜空、お気に入りのレストラン「カベスタン」からのオーシャンビュー、サンセット、そして「君の瞳に乾杯」と言わんばかりのカクテル等のイラストがルックに散りばめられた。これらの思い出に残る景色を彼は「カサブランカのお土産」と呼び、ランウェイから世界に届けている。
 
「ピンクは女性らしい色と言われるかもしれないけど、男性が着るピンクが一番好きだね。それにファッションにおいて、性別ごとに超えてはいけない境界線はないと思うんだ」。シャラフにとってマスキュリニティとフェミニティとは表裏一体であり、彼の美意識が絶妙な調和をもたせている。「マスキュリンにフェミニンを加えることで、より一層マスキュリニティが際立つんだ。それがすご くエレガントで美しいと感じる」。その美しいマスキュリニティが一周回ってケンダル・ジェンナーらをはじめとする女性の目にもとまり、ジェンダーを超えて観るものを惹きつ けている。来シーズンからレディースのコレクションを発表することも予定しているという彼がフェミニティをどう表現するのか、目が離せない。

シルクシャツに描いた国旗はお気に入りの国で、下部中央には日本の国旗も。
CASABLANCA × CHAO! BAMBOO × UNITED ARROWS:トロピカルテイストに彩られたイラストには、本人が大好きだという原宿のタイ料理屋「チャオバンブー」や「ユナイテッド アローズ&サンズ」が描かれている。9/14より開催のCasablanca POP UP storeにて限定販売。

 
 

建築と映画からインスピレーション 実生活に寄り添いながらも遊び心を大切に

 
さらに、色に表情を与えるボリュームや光の使い方は、彼が専攻していた建築もインスピレーション源になっているという。安藤忠雄、ジョン・ロートナー、オスカー・ニーマイヤーに尊敬の念を抱き、「いつか建築の知識とカサブランカを合わせて何かできたらいいな」と将来の展望を話す。洗練されていながらも、人の生活に寄り添うという建築的デザインコンセプトは、彼の服作りにも如実にあらわれている。「心地よくて、エレガント。 実生活で着やすい服作りに力を注いでいるんだ。なぜなら、ファッションは人が服を着ないと成り立たないからね。フォーマルからアプレ・スポーツ(フランス語で運動後でという意)まで、どんなシチュエーションでも実際に着れる服を作りたい」。そして、自身のテイストを映画界でいうなら「ウェス・アンダーソンとマーティン・スコセッシの間にいる感じでいたい」と例え、「カラフルで遊び心もあって、堅苦しくないクラシカルをカサブランカで提案していこうと思うんだ」と語った。
  
 ストリートウエアのトレンドで、ロゴやグラフィックといったわかりやすい“クールであること”が注目されてきた昨今だが、ストリートスタイルを率いてきた一人である彼が今フォーカスするのは、「“クール”というよりは、“ビューティフル”であること」。粋で美しく、新しいジェントルマン像を追求し続ける、彼の30代のプロジェクトは始まったばかりだ。

シャラフ・タジェル
モロッコ系フランス人デザイナー。パリで生まれ、生後4ヶ月から3年間は家族とともにカサブランカで過ごすも、以降はパリが生活拠点。カサブランカのオフィスはロンドンと パリに構える。

 
 
 

Photo Asuka ito Interview&Text Mayu Kato Edit Tatsuya Yamashiro

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