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Interview with Tetsu Nishiyama
(FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS®/WTAPS®/DESCENDANT)
about Daily Chic

クリエイターが考えるデイリー・シック

本当にお洒落な人は、ファッションだけではなく様々なことに対してセンスが良い。それは持ち物の選び方かもしれないし、日々欠かさず行っている習慣や住んでいる家のインテリアかもしれない。どれをとっても良質な考えが洒落者にはある。ここでは、自分が着る服はもちろん、ライフスタイルにも気を配り、上質な日々を送るクリエイターたちにインタビュー。クリエイターが考える日々のお洒落、気持ちのお洒落とはどういったことなのか。日々の生活をシックに送れるアイディアをインタビューから紐解きたい。

Interview with Tetsu Nishiyama
(FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS®/WTAPS®/DESCENDANT)
about Daily Chic

クリエイターが考えるデイリー・シック

本当にお洒落な人は、ファッションだけではなく様々なことに対してセンスが良い。それは持ち物の選び方かもしれないし、日々欠かさず行っている習慣や住んでいる家のインテリアかもしれない。どれをとっても良質な考えが洒落者にはある。ここでは、自分が着る服はもちろん、ライフスタイルにも気を配り、上質な日々を送るクリエイターたちにインタビュー。クリエイターが考える日々のお洒落、気持ちのお洒落とはどういったことなのか。日々の生活をシックに送れるアイディアをインタビューから紐解きたい。

気が利いているということがお洒落の本質
西山徹
自分なりの気の利かせ方が
できるかが大切な感覚

 
世界がパンデミックに見舞われた2020年、人々の生活は一変した。働き方や日々の過ごし方が変化したニューノーマルな現代にあって、西山徹は何を考えるのか。
 
「今は、生活におけるオンとオフの境界線が見えなくなってきているじゃないですか。家で仕事をリモートする人も多いだろうし、当然こんな御時世、社交場にも行けなければ、気楽に外食することもできなくって。誰もが家時間が多くなった今、“気の利いたこと”が大事になるんだと思います。つまり、そんなことになっても時は流れて季節も変わり続けるわけで、ある意味、これまで気にかけてたことのほとんどが適当になってアソビがなくなりがちだと思うんです。そんな時こそ忘れかけていた“気の利いたこと”が前向きにさせてくれるんだと思います」。
 
この西山の言葉から、日々のスタイルに対する考え方が理解できる。例えば、スウェットパンツを穿くにしても、どんなものをどのように合わせていくのか、そんなちょっとした気の利かせ方こそが、西山がいつも洗練された印象であるポイントだ。
 
「そもそも自分たちは“気の利いたこと”を提案するのを仕事にしてきたので、それができなければ何をするんだって思うわけです」。
 
その考えは、この日の西山のファッションにも投影されている。足元に目を向けてみると、ヒールカラーが左右で異なるスタンスミスがあった。しかも、このスタンスミスはオフィシャルで販売されていたものだとか。あえて色が異なる同じモデルの靴を入手し片足ずつ合わせる履き方は80年代にアシッドコーデと呼ばれ反骨心と洒落を大切にするスケーターたちの間でムーブメントなった背景がある。それを考えると、何より今このスタンスミスがオフィシャルでリリースされていること自体が面白い。そしてそれを、さり気なく履きこなしている姿に洒落心を感じさせられる。
 
「今は、価値が高いとされているレアなものとか、ブランドものを身につけることがお洒落に繋がることにはならないと思います。そういう意味では、どういうところに気が利いているか、利いていないのかが“洒落”という言葉なのかな」。
 
世のトレンドや、有名ブランドのアイテムかどうかといった情報はまったく関係なく、自分が獲得してきた体験やセンスや遊び心が根底にあり、その感性が生活の芯に溶け込むことで、その人だけのスタイルが体現できる。それこそが、日常に溶け込んだ本当のお洒落なのだ。
 
 

自分のスタンスに沿うものを
さり気なく生活に取り入れる

 
生活の中で重要なパートを占める働き方も変わり、時間の使い方が明確になることで、以前よりも効率的に仕事が進められるようになったという西山。コロナ禍以降はスタッフの健康管理にも配慮しつつ、ニューノーマルな現代に見合った仕事環境を作れるように努めてきたという。
 
そんな仲間を大切にする西山の思いを象徴するものが、アウターにさり気なく取り付けられていたシャーデーのピンズ。スタッフから西山へ渡されたギフトだそうだが、それを自分の服装に取り入れている点に感銘を受けた。そこから、西山が好む音楽カルチャーの要素も感じられるし、西山自身が本当に大切にしているものは何なのか、ということが伝わってくる。
 
このように、身につける小物や、いつも持ち歩くものには、その人自身の人格が投影されるものだが、それを端的に表しているのが、西山が持ち歩く鍵ではないだろうか。見せてくれたのは偶然同じ形状のものだったそうだが、普段持ち歩く家の鍵を同じ型のものに揃えている。そこには次のような理由がある。
 
「鍵はものによって大きさが異なっているから、バラバラで生活感がすごく出てしまうじゃないですか。だから、昔から鍵屋で同じ高さに揃うように作ってもらっていたんです。キーホルダーは、映画でも重要なモチーフとして登場することが多いと思うんですが、人の性格が垣間見れるアイテムだと思うんですよ。鍵の束がバラバラな人は、そういうスタイルを持っている人物であったり、ピシッと揃っていると几帳面な性格なのかな、と推測できたり。そういうことが表れるものだと思います」。
 
一見したら気付かない些細なことかもしれないが、ふと目を向けたときに、その洒落が利いたスタイルは言葉がなくとも理解できる。そこにその人らしい考え方が見え、センスが感じられる。
 
人の目に触れない部分にも自分が培ってきたスタイルを反映させる、という思いが西山が日々の生活で所持するものに宿っている。「どんな時にどのように見せるのか。状況と環境に応じたセレクションは対外的に考えて“気の利いたこと”だと思うんです」。単純に人と会う機会が減ってきている現代にあって、西山が重要だと考えるのは「どんな気を利かせるか」ということ。
 
散髪に行く機会が減ったことから、約20年ぶりにキャップを被るようになったという西山。現在、愛用しているのはニューエラのカーブドバイザーになっているロークラウンのもの。デザイン性を重視して選んだアイテムだが、これもニューノーマルな現代の中で、人と会う際に、相手のことを思って身につけているものだ。西山の話す気の利かせ方が、こんな点からも垣間見えた。
 
西山が付けている時計のフェイスに目を向けると、ロレックスとティファニーのダブルネームのエクスプローラーI、ヴィンテージのRef.1016を身につけていることがわかる。ベルトが劣化したことから、NATOベルトに取り替えて日々使っているものだが、こういったラグジュアリーなアイテムをさらっとドレスダウンして、何気なく服装に溶け込ませているところにも洒落心がある。気に入っているアイテムだから、いつまでも長く身につけておきたいという思いも伝わってくる。

adidas STAN SMITH
撮影時に西山が履いていたスタンスミスがヒールカラーが左右で異なるオフィシャルモデル。このディテールがちょうど見える裾感のパンツと合わせていた点に“洒落”がある。

Shade pins
スタッフからもらったシャーデーのピンズ。人からプレゼントされたものを好んで取り入れている。

Key ring
西山は鍵の高さを鍵屋で同じものに作り替えて持ち歩いている。これは偶然、同じ形のキーホルダーだそうだが、こんなところも深いこだわりが感じさせられる。


 
 

社会に根ざした感覚に沿う
新たな時代におけるシック

 
西山が展開しているディセンダントの動向を見ると、これまでになかった変化が表れている。
 
「お客さんにブランドのことをより深く理解していただいて、付加価値を見出してもらいたいと考えています。だから、服作りの先に何ができるかということを今は意識しています」という考えから、ウェブ上での発信に重点を置き、デジタルトランスフォーメーションへ踏み出している。
 
「ディセンダントは性別をはじめ、年齢、国籍といった分別をシームレスに考える、多様性のある考えを持っているブランドとしてやってきています。加えて、これからの未来を生きてゆく人たちに対して何できるのか考えることもイシューだと思っています」と語る。オンラインを利用することによって、紙の使用量を減らすことができるということは、原料であるパルプの減産にも繋がってくる。森林保護の観点から見ても時代性にマッチした動向だ。
 
ディセンダントが取るアクションは、サステナブルを声高に世間へ訴えるような意識的な行動ではなく、当たり前に、ごく自然に行われている。西山は、ディセンダントでもコラボレーションした経緯があるハイドロフラスクのボトルを日々の生活の中で愛用し続けているが、その何でもない日常生活からもサステナビリティを重視する世界への配慮が感じられる。
 
現在、消費者の立場から考えても、なぜそれを所有するのか、という理由が明確に必要な状況になっていると感じる。そこで重要になるのが、作り手がどのような思いでもの作りを行っているか、ということ。所持する、着る、履くという行為が、そのブランドに対して、賛同するか否かの意思表示になる。
 
このような時代性に対して、西山は「今まではカッコ良ければいい、という感覚があったと思うのですが、世界情勢が変わることで一気にゲームチェンジしたように感じます。今は、どんな理念やフィロソフィを持っているブランドで、どんな歴史があるのかが問われていて、そこにお客さんがフォロー、サポートをするという考え方に変化してきたんじゃないかと思うと、すごく良いですよね。私たちは以前から、その部分を重要だと考えて提示してきましたが、ブランドの哲学や核にあるものを、これまで以上に伝えないといけない時期だと考えています」と話す。
 
大量消費の時代を超えて自然環境を重んじること、その潮流は明らかだが、西山は以前から自然へ意識を向けていた。「キャンプをしたり、川に遊びに行ったり、海で釣りをしたり、といった自然に向き合うというのは、子供たちから学びました。自分たち大人も子供の頃はみんな知っていたことです。ただ、こんなパンデミックになってようやくその大切さの本質に気がついたと思います」。
 
この感覚が根底にあるからこそ、ディセンダントのスタンスには、サステナブルな要素がさり気なく落とし込まれていると感じられるし、同時に、その姿勢からブランドが持つ哲学が言葉以上の存在として伝わってくる。その理念を探り、より深く知ったうえで、共感できるかどうか、賛同できるかどうか、を考えるということも、ブランドが作ったものを受け取る側の我々には求められているのではないだろうか。そして、それが自らの洒落心に繋がってくるものではないか。
 
「シック=洒落というのは、辞書によると、気が利くという意味ですよね」。それがお洒落の本質であるというのが、西山にとっての日々の中にあるお洒落に対する考え方。そういった西山の生活に落とし込まれた洒落は、ディセンダントが社会へ提示している姿勢と通じている。現代の社会に根ざした感覚をさり気なく提示しており、気が利いたこととは何か、生活の中にある洒落心とは何なのか、ということが集約されている。過度に着飾ることではなく、ちょっとした何かを考えることで気が利いてくるということ。それこそがお洒落、本誌でいうところの“Daily chic”の考えに共鳴するだろう。

New Era® LP 59FIFTY Cap
コロナ禍により髪を切りに行く機会が減ってしまったことを受けて、約20年ぶりに被るようになったキャップ。ニューエラのLP 59FIFTYキャップ。本作を選んだ理由はデザイン性。

ROLEX Explorer I REF:1016
長く愛用している時計はロレックスとティファニーのダブルネームのエクスプローラーI、ヴィンテージのRef.1016。ベルトが劣化したため、NATOベルトに交換して身につけている。

Hydro Flask Stainless bottle
ディセンダントでもコラボーレーションしたハイドロフラスクのボトル。本作はブランドのオリジナルアイテム。昨今のサステナブルな流れを汲んだアイテムとして。



 
西山徹
FORTY PERCENT AGAINST RIGHTS®、WTAPS®、DESCENDANTを手掛けるディレクター、デザイナー。
 
 
 

Photo Makoto Nakamori Interview & Text Ryo Tajima Edit Shohei Kawamura

 

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