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Hitoshi Uchida
Jantiques Owner ヴィンテージとなりうる洋服の条件とその魅力

時代を超える服、ヴィンテージクローズ。一般的にありふれた古着とは一線を画す存在として、区別されそう呼ばれている。今でこそ歴史的価値や希少性が伴い、価格の高騰などその価値は確固たるものになっているが、そもそもそうしたヴィンテージクローズと現在呼ばれている洋服はなぜ時を超えて遺ってきたのだろうか。そしてそうした存在に、私たちはなぜ魅了されるのか。PART4では日本のヴィンテージ業界を古くから牽引してきた2人の著名なヴィンテージバイヤーに、改めて時を超えるヴィンテージクローズとはどういう存在なのか、そしてその魅力について話を聞いた。時が経っても変わらない価値とは何なのか。その答えを探っていく。

Hitoshi Uchida
Jantiques Owner ヴィンテージとなりうる洋服の条件とその魅力

時代を超える服、ヴィンテージクローズ。一般的にありふれた古着とは一線を画す存在として、区別されそう呼ばれている。今でこそ歴史的価値や希少性が伴い、価格の高騰などその価値は確固たるものになっているが、そもそもそうしたヴィンテージクローズと現在呼ばれている洋服はなぜ時を超えて遺ってきたのだろうか。そしてそうした存在に、私たちはなぜ魅了されるのか。PART4では日本のヴィンテージ業界を古くから牽引してきた2人の著名なヴィンテージバイヤーに、改めて時を超えるヴィンテージクローズとはどういう存在なのか、そしてその魅力について話を聞いた。時が経っても変わらない価値とは何なのか。その答えを探っていく。

内田 斉
世界中から注目を集める日本を代表するヴィンテージショップ、ジャンティークのオーナー兼バイヤー。2019年には地元である群馬県高崎市に2号店となる「ジャンティーク内田商店」をオープンさせ、これまであえて手を出さなかったECショップをこの4月から開始するなど精力的な活動を続けている。
今現在完成されているデザインの過程段階のデザインを楽しむ
内田 斉
着続けられているから
語り継がれていく

ファッション関係者のみならず古着好きなら誰もが知るヴィンテージ古着の名店、ジャンティークのディレクター内田斉。長年の経験と豊富な知識に基づき、独自の審美眼からセレクトされるアイテムには数多くのファンが存在する。彼が考える時を超える洋服の条件とはどういうものなのだろうか。「時を超えて愛されるという意味では、長い間着られているものっていうことだと思うんです。ということは、ある程度デザインが崩されないまま残ってきているものに限定されていく。形が完成された定番品とも言えると思います。その時代ごとで着方は違うにしても、同じアイテムが人々の間で着続けられている。そういう点が時代を超えて語り継がれるアイテムの条件ではないかと」。時代を超えて人々が着続けてきたもの。それはデザインが完成されたもの。しかし内田は、デザインが完成される前段階、つまりデザインが移り変わっていく過程の段階を楽しむことができるのがヴィンテージの魅力であると言う。

1930s Leather Togs
FlightJacket

1920年から40年にアメリカはボストンにて創業し存在していたと言われるブランド、レザートグス。タグからも分かるように飛行機とバイクのモチーフがあしらわれており、フライトジャケットからライダースジャケットへの転換期にあるアイテムであった事が窺える。クックジャケットのようにも見えるその風貌は、どこか現在のシングルライダースのはしりのようにも感じられる。

 
 

時代やカルチャーに
淘汰され今へと繋がる

「どんな洋服にも必ずその時その時に必要な用途があります。その用途が時代を経て移り変わっていく。例えば戦争が終わって飛行機に乗らなくなり、戦争から帰ってきた人たちが飛行機からバイクに乗り換えたり、移動手段が馬から車になったり。その時代ごとのニーズが移動手段にも反映されてきたのと同様に、洋服にも反映され進化してきました。そういった歴史と共に進化してきたディティールだったり過程を垣間見れるところが、ヴィンテージの面白さであり、この仕事に携わっていて楽しいなと感じるポイントでもあります。そういったことで言うと、ライダースジャケットが顕著な例ですね。ライダースジャケットと聞けば、バイカーなんかがよく着ているショットのダブルジャケットの形を想像する方が多いと思います。実はそうしたライダースジャケットの原型は飛行機に乗るためのフライトオーバーオールからスタートしているんです。それを単純に切って素材をレザーにしたものがフライトジャケットで。フライトジャケットが時代に必要な用途を経てライダースジャケットに切り替わっていったと言われています。1つ目のこのアイテムは「レザートグス」というブランドが1930年代にリリースしていたレザージャケットなんですが、タグを見ると飛行機とバイクがプリントされていますよね。これはこのアイテムがフライトジャケットからライダースジャケットへと移り変わる分岐点の象徴的アイテムであることを表しているんです。シングルライダースのようにも見えるシンプルな風貌に、コートに付属しているようなベルトバックルを用いている。これはまるでフライトオーバーオールを真っ二つに切ったかのようにも見えますよね。一方40年代になると、このベックのジャケットのようにもう少し現行のライダースジャケットに形が近づいてきます。雛形といってもいいかもしれません。ライダースの特徴的なデザインでもある、Dポケットやスタッズなんかも見られるようになっています。このように現行のライダースジャケットができるまでの過程を、その時々のヴィンテージのアイテムを通して垣間見ることができるんです。まだこの2つのアイテムの時点では、ファッションアイテムとして作られているのではなく、飛行機やバイクに乗る人専用のものとして作られているというのもまた面白いですよね。50年代に入りマーロン・ブランドが映画の中でライダースジャケットを着てデニムを履いたことによって、その当時の人々は日々の生活のファッションに革ジャンやデニムを着るようになりました。それによってファッション的な要素が色々取り入れられていくんです」。ファッションアイテムとして作られていなかったものが、時代背景やカルチャーに淘汰され今の形へと繋がっていく。その過程を楽しむことができるのはヴィンテージのほかに無いだろう。

1940s BECK Riders Jacket
1914年にニューヨークで創業したモーターサイクルアクセサリーメーカーのベック。40年代ごろからフライトジャケットの影響を受け、レザージャケットの制作を開始。Dポケット、スタッズなど現在のライダースジャケットの代名詞的ディティールの原型となる箇所が多く見受けられる。

 
 

人の数だけ答えがある
ヴィンテージの楽しみや魅力

「正直に言ってしまうと、歴史のうんちくとかはそれほど重要なことではないんです。いかに1つ1つのアイテムを楽しむことができるか。知識は後からいくらでもついてきます。点と点が繋がっていくように。20代のころは今までお話した内容なんて全く考えてはいませんでしたし、いろいろ経験しながら、いろんな人と話しながら知っていったことがほとんどです。一番初めから、ライダースジャケットがつなぎっぽいな、なんて思っては見てないですからね(笑)。好きで着ていきながらこの形がいいんじゃないかと追い求めていった結果、あっちを着てこっちを着て、そうして実はこのアイテムにはこんなルーツがあって、だから好きだったのかって後々気づくことは多々あります。僕は勉強するタイプじゃなくて、実際に着ながら経験していったタイプですかね」。ヴィンテージアイテムに対する価値観は人それぞれだ。何十万円もするアイテムをコレクションして大切に保管する人もいれば、洋服なのだから着て当然と、日々のコーディネートに取り入れる人もいる。そのどちらが正しいと言うわけではなく、価値観は人の数だけ存在する。
 
「ヴィンテージに対する価値観で言えば、本当に人それぞれだと思いますね。新品で買ったものを気に入って着ていたら、それがいつの間にか経年変化を起こしてヴィンテージになっていた、なんてこともあるかもしれない。例えば災害の時、ボランティア活動で履いていたデニムが汚れて色落ちした。でもそれが愛着になっていますっていう人もいるでしょうし。僕からするとそういう愛着だったり思い出とかが乗っかってくるから、人によって様々なヴィンテージの感覚があるのかなって思ったりもします。思い出や愛着があるもの=ヴィンテージという見方をしてもいいじゃないですか。誰も文句は言いません。それがまたこれから時を重ねた時に、新たなヴィンテージを生んでいくことは間違いないのですから」。時と共に移り変わってきたデザインの過程を楽しむというヴィンテージならではの魅力。しかしそれはあくまでヴィンテージクロージングの楽しみ方の1つであり、人の数だけ価値観が存在するように人の数だけ楽しみ方も存在する。今まで数多くのヴィンテージアイテムを見てきた内田が最後に語った本音。それは専門用語や難しい言葉など一切なく、穏やかな口調で洋服と人との関係性の核心をついていた。難しいことは抜きにして、洋服との時間を楽しむこと。それがなにより大切なことなのだと、改めて私たちに教えてくれている。なぜならその時間はやがて思い出や思い入れに姿を変え、洋服に新たな価値を与えていくのだから。

1930s USAF
Flight Overall
1930年代初頭に流通していたアメリカ空軍のフライトオーバーオール。トレンチコートに見られるようなツイルコットンを素材に用いているのが特徴。先に紹介したレザートグスのベルトバックルや、ベックのDポケットのディテールはこのオーバーオールからインスピレーションを得て生まれたものだという事が見て取れる。まさに現行のライダースジャケットの原点とも言える存在。

 
 
 

Photo Genki Nishikawa Edit & Text Shohei Kawamura

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