前項では、C.P. COMPANYの時代を超える革新的な服作りを紹介したが、このブランドのもう1つの魅力は、カウンターカルチャーに愛され続けるファッションとしての側面だ。歴史を見返すと、イギリスの過激なフットボールファンたちがこぞってC.P. COMPANYをはじめとするイタリアンブランドを着用。そのスタイルが持つ影響力の強さは瞬く間に世間に知れ渡った。更に、現代においても、レジー・スノウやスロータイといったイギリスの新進気鋭なラッパーが着用する姿を度々目撃するたびに、クールの象徴としてこのブランドが認知され続けているのだと確信する。そんなイギリス、ロンドンをベースにスタイリストとして活躍するDaniel Pacitti(ダニエル・パシッティ)もC.P. COMPANYをスタイリングによく使用する1人。スロータイやアミーネといったラッパーからも支持される若手のホープ。そんな彼に、イギリスにおける同ブランドのあり方、魅力を聞いた。
「イギリス生まれで、フットボールに興味がある人ならC.P. COMPANYのことを知っていて当然だよ。イギリスのフットボールファンが、C.P. COMPANYのようなイタリアのブランドを着る始まりは、彼らが当時イタリアへ観戦に行って、そこで最もスマートな服を手に入れようとしたことがきっかけ。その服をイギリスに持ち帰ってきた彼らは、それを着用して試合を見に行ったんだ。どのチームのフットボールファンがより良い服を持っているか、そんな競争みたいな感じでスタイルが発展していった」。
クオリティの高いイタリアの服を着る。それが一種のステータスとして、スタイルに糸目を付けない過激なフットボールファン達から、その影響を受けたイギリスの若者たちにまで支持をされた。その一連の文化は確実に今でも受け継がれているようだ。
「カルチャーに対するリスペクトでこのブランドを着ている人は多いと思う。僕も幼い頃、父親と一緒にフットボール観戦に行く時にC.P. COMPANYのジャケットをプレゼントされたんだ。そうやってこのブランドのカルチャーが親から子へと受け継がれていることは確かだね。今でもフットボール観戦に行くと多くの若者が着ている姿を目にするよ」。ダニエル・パシッティ自身も、フットボールの影響でC.P. COMPANYの魅力を知った1人だった。その後、彼も自らこのブランドを集め始め、今では20枚程も持っているという。「コレクションの中でも特に好きなものは、2000年FWシーズンに発売したBeekeeperジャケット(写真左下参照)。このジャケット自体が持つ独特な雰囲気はほかにないと思う。当時デザイナーを務めていたモレノ・フェラーリは、デザインやイノベーションの面で時代を先取りしていた人だね。今見ても全く古く感じない」。
また、前述したスロータイとも仲が良く、ほとんどのヴィジュアルをスタイリングしているダニエル。スロータイの「COLORS」、「Polaroid」、「Ladies」といったミュージックビデオは、彼のスタイリングのもとC.P. COMPANYを着用した様子を見ることができるので、YouTubeなどで是非チェックしてみてほしい。
「彼はビッグブラザーのような存在。趣味や興味がとても似ているんだ。彼も元々、C.P. COMPANYのファンだったから、彼がこのブランドを着ることはすごく意味がある。それに、僕は常に、自分が着たいと思うようなスタイリングを心掛けている。アウトドアギアが多いのは、実験的な部分だったり、未来的なコンセプトを持っているからだね。C.P. COMPANYもその1つで、ミッレミリアジャケットの大ファンなんだ。ポケットやゴーグル、ウォッチビューワーなどの細部への拘りは素晴らしいと思う。機能的にもデザイン的にも優れているんだ。ゴーグルレンズを取り入れることで、普通の洋服ではないって感じがプラスされる。最高のメンズウエアだと思っているよ」。
Photo Sirui Ma | Edit Takayasu Yamada Shunya Watanabe |