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doublet / Masayuki Ino 05 Interview about “Unique Creative”

doublet / Masayuki Ino 05 Interview about “Unique Creative”

誰かに話したくなるような、
モノからコトに繋がるクリエイション

若手ブランド世界最高峰の賞レースLVMHプライズで、2018年にグランプリを受賞したダブレットのデザイナー井野。飛ぶ鳥を落とす勢いでクリエイションを続ける彼が今注目しているものは、アートディレクターのPZ TODAY、エド ロバート ジャドソンやベータポストのデザイナーとして知られる江崎賢、そして海外のお土産Tシャツ。どれも一貫して言えることは、誰かに話したくなるようなモノであり、コトに繋がるようなクリエイションだ。
ファッション業界では、着飾る、カッコつけることが古来よりクールとされてきた。しかし、ダブレットもこの後にリコメンドするクリエイターも等身大のままフルスロットルで面白いコトを追求をする。間をとったり、中途半端なことはせず振り切ったアプローチだからこそ、やがてそのユーモアがクールに見えてくる。その概念はこれまであまり見られなかった新しいファッションの感覚だ。
そして、彼の趣味であり毎日の生活に欠かせないインスピレーション源になるものは、所謂デザイナーのそれとはまるで違う。

 

ファッション以外の日常から
強いインスピレーションを受ける

 
「僕は根っからのテレビっ子なんです。『芸人大喜利王決定戦IPPONグランプリ』や、テレビドラマ『同期のサクラ』を最近良く見ていて、サウナは日課です。例えば、IPPONグランプリを見ていると、自分にとっては凄いクリエーションの勉強になるんです。一つの写真に対して各芸人さんが大喜利形式で回答をしていく“写真で一言”というコーナーがあって、それで何が大笑いをとっているのかを研究するんです。そうすると、その写真に対して“僕らの日常にあることや既視感のあること”を言うと大笑いになっているんですよね。例えば、子供がお婆ちゃんをおもちゃの車に乗せて押している写真があったのですが、その時に千鳥の大悟さんが“未来か過去、どっちに行くかだけ教えて”と回答したんですね。それだけで、僕らにはバックトゥーザーフューチャーが思い浮かんで、面白いと思えるじゃないですか。とてもクリエイティブだと思います。ダブレットでも、そういった自分の日常にあることや既視感のあることで面白く表現するようにしているんです。その考えに行き着いたのも、自分自身がセンスが良いとか、オシャレな人間ではないからなんです。無理して美術館行ったり、お洒落な映画を見たり、多くのクリエイターたちがやっているようなことは、あまりやれないんですよね。それをやると無理したクリエイションになってしまうじゃないですか。等身大の自分を受け入れて、それをそのままクリエイションにした方がよっぽど素直で良いものが出来ると思うんです。逆にハイセンスな人は、ハイセンスなモノから影響を受けて作られていると思うし、それがパーソナルな物作りだと思います。自分は中二みたいな性格なので、ファッション以外のマスなことからインスピレーションを受けることが多いですね。それと、単純に数でいったらハイセンスなものを見ている人よりも、ごくごく普通のテレビを見ている人の方が多いじゃないですか。僕のブランドはいろんな人に見てもらいたいので、そういう意味でも絶対数が多い方が良いんですよね」。
 

世の中の記憶に残るような
パッケージとして良い作品

 
「LVMHプライズで賞を貰った時、ユニークな部分やアイディアが評価されたと思ったんですが、意外とそうではなかったんですよ。テキスタイルやファブリックなどの品質が評価されたので、自分でもびっくりしました。でも、カール・ラガーフェルドさんだけは違いましたね。カップ麺Tシャツ、ハンガーTシャツを見せたら爆笑して褒めてくれました。すごく嬉しかったです」。カール・ラガーフェルドからも高い支持を得たそのTシャツは、カップラーメンのような容器に水を入れ、3分待つとTシャツになるというユニークな商品。ハンガーTシャツも、見た目はハンガーそのものだけど、水に浸けるとロンTに早がわりするといったもの。この二つの作品に関してもそうだが、ダブレットの物作りは決してユニークさだけではなく、クラフトマンシップに長けた品質の良さも高く評価されているのだ。そして、モノを作るだけではなく、コトに繋がる表現も彼のもう一つの魅力。「今って、モノをただ置いていて売れるっていうのは、ごく一部のブランドさんだけだと思うんですね。モノを作るだけじゃなく、そのモノを通してコトにして、それが皆んなの記憶に残ればいいなと常に思っていて。カップ麵Tシャツでは映像を作り、WISMでやったポップアップでは、回転寿司の職人を呼び回転寿司の機械を設置。ドーバー ストリート マーケット ギンザではお化け屋敷をイメージした常設スペースを作ったりしてきました。いろんな人を巻き込むコトを起こし、それを見た人がさらに何かのコトに繋げてもらえたら良いなと思っています」。
しっかりとした物作りというのは前提に、ユニークであり、どこかで誰もが体験したような既視感があるもの。それだけではなくそのモノを見せる表現方法までしっかり考え、パッケージとして良いものを提供する。そんなクリエイティブがダブレットであり、井野が惹かれるクリエイティブのポイントだ。

Top PZ TODAYとダブレットによる展示。場所は、ソウルのファッションエリアにあり感度の高い人たちで賑わうセレクトショップ、ディエチコルソコモ ソウルで行われた。Bottom 2020年秋冬シーズンの立ち上がりとともに、ドーバー ストリート マーケット ギンザではダブレットのスペースをリニューアル。ゲームセンターをイメージした当初のディスプレイに、お化け屋敷の要素を加えたユニークな空間になっている。

 

伊野将之
1979年生まれ、群馬県出身。東京モード学園を卒業後、浅草のベルト工場に就職。ミハラヤスヒロで企画生産の経験を経て、2012年にダブレットを設立。2018年のLVMHプライズでは、グランプリを受賞した。

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