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Daijiro Mizuno
Kyoto Institute of Technology Think about the Future Fashion
サステナビリティとテクノロジーから未来のファッションを考える

時を超えて持ち続けられる服、一期一会のTシャツ、ヴィンテージウォッチの価値、時間が生み出すアートなど過去から現在へと続く時間のタームの中で考えを深めてきたが、ここからは未来に目を向けてみたい。革新的な技術が次々と発明され、どんどん便利になっていく世の中で、我々のファッションはどのように変わっていくのか、いや変わっていくべきなのか。そしてその中で抱える問題とは何なのか。識者2名に話を聞いた。キーワードは“サステナビリティ”と“テクノロジー”。資本主義的な大量消費の時代を経て、自己を主張するためのファッションにおいても、環境を含めた我々のライフスタイルをしっかり考える時が来ている。

Daijiro Mizuno
Kyoto Institute of Technology Think about the Future Fashion
サステナビリティとテクノロジーから未来のファッションを考える

時を超えて持ち続けられる服、一期一会のTシャツ、ヴィンテージウォッチの価値、時間が生み出すアートなど過去から現在へと続く時間のタームの中で考えを深めてきたが、ここからは未来に目を向けてみたい。革新的な技術が次々と発明され、どんどん便利になっていく世の中で、我々のファッションはどのように変わっていくのか、いや変わっていくべきなのか。そしてその中で抱える問題とは何なのか。識者2名に話を聞いた。キーワードは“サステナビリティ”と“テクノロジー”。資本主義的な大量消費の時代を経て、自己を主張するためのファッションにおいても、環境を含めた我々のライフスタイルをしっかり考える時が来ている。

ザ・ノース・フェイスと人工合成クモ糸素材の開発で有名なスパイバー社のタッグによる“ムーン・パーカ”。本作では石油などの化石資源に依存しないスパイバー社独自の発酵プロセスにより作られた構造タンパク質“ブリュード・プロテイン”を世界で初めてボディに使用。地球の未来を考え、有限の資源を使わずに様々な技術を駆使して生み出された1着は、まさにサステナブルの名にふさわしい。
MOON PARKA ¥150000 by THE NORTH FACE Sp. (GOLDWIN CUSTOMER CENTER)

クラシックな佇まいと優れた防水性、耐久性で世界中にファンを持つバブアーの代名詞であるワックスドジャケット。長年の使用や摩擦でワックスが抜けてもリプルーフ(防水ワックスを再び塗り入れること)を行えば、機能性は蘇り、それがまた自分だけの味となり、長く愛せるアイテムとなる。リプルーフの方法については、HPで公開されているほか、有償のメンテナンスサービスを行っている業者に依頼することもできる。
japan.barbour.com/maintenance

 
 

今あるものを長く使う

リサイクルを行うことで、逆にエネルギーの負荷が物流や加工処理にかかってしまったり、本物の革を使用しないことで職人から仕事を奪い、服や素材の品質を落とすことで持続可能な服でなくなってしまう、などサステナビリティを意識するあまり、本来の意味から遠ざかることもある。そうした意味では生産方法にだけ目を向けるのではなく、今あるものを長く使うことも重要なこと。水野は今、古着にも注目しているという。「ここ数年、日本ではミリタリー、例えばM-52チノパンやワークウエアなど、ジャンルを問わずヴィンテージ古着が人気を集めていますが、ずっと市場に残るような服が高価値なものとして循環することは素晴らしいと思うんです。石油のように自然から得られるエネルギー資源の多くは限りがある上、環境負荷も高いですから、古着が循環しつづけることは大切です。また、石油のようなエネルギー資源を考え直す、という点では、ザ・ノース・フェイスとスパイバー社のムーン・パーカも同じ発想にあるといえますね。このアイテムはバイオテクノロジーを利用して、石油資源に依存しない発酵タンパク質を元に作られていますから」。
 
環境に配慮して作られたサステナブルなブランドのプロダクトと、長く使えるクオリティの高いヴィンテージ的アイテム。90年代以降ファストファッションの出現もあり、新商品を大量投入することによって、価値を下げ、商品のクオリティを下げ、循環できずにゴミを大量に増やすという負の連鎖に陥ってしまった現代のファッション業界にとって、この2つは来たるべき未来への重要なキーワードになりそうだ。
 

循環させるための仕組みと未来の人材を育てることが必要
水野大二郎

サステナブルとはまったく別の軸から未来のファッションというテーマを考えた時、AIやAR、VRなどの最先端の情報技術を駆使したアイテムやシステムが多数開発されていることも忘れてはならないだろう。こうした取り組みを水野はどのように見ているのだろうか。
 
「今までは服を着ている物理的な身体に対して、それを見る人が“ダサい”、“カッコいい”などと評価されましたが、スマホや監視カメラ、自販機からも画像処理技術を介してデータを取られている現代では、デジタル環境の中で新しい自分が評価されるようになります。わかりやすくいうと“フードを被っている人は統計的に犯罪率が高い”とAIに認識されうる社会になる、ということです。服が持つ意味、あるいは自分そのものが時間や物理的な空間を超えて、ネットの世界でも作られることは、面白くもあるけど非常に怖い。物理世界の自分を守るという点でAI認識されないUNLABELEDのウエアは面白いですよね。逆に、『あつまれどうぶつの森』のようにネットやアプリ上の空間でアバターを使って誰かと会うとき、意味のある服を自分のアバターに着せ、自分の存在を主張するということも起きています。すでに、多くのファッションブランドが『あつまれどうぶつの森』用アバターのためにデザインを発表していますよね。現状は課金制ではなく、アバターのためのデザインが現実に販売されてはいませんが、仮にそうなってしまうとますます現実とバーチャルの境目が曖昧になり、新しいファッションがリアルな体とアバターをまたがるようになってきている。そういう意味で面白い可能性はあると思います」。今話題を集めるバーチャルモデルや、カタログを3Dプリントしてインスタグラムで見せるブランドなどもその文脈上にあると言えるだろう。
「100万人以上のフォロワーを持つバーチャルモデルが着ている服に、みんながライクを付けて、そこからマーケティングがスタートしたり、VRやARを使ってファッションショーを展開したりすることがメジャーになってきています。プレゼンテーションの方法が買う人と密接になり、“見る”、“イケてると思う”、“ポチる”だけで、商品は3Dプリンターで出力され、1ヶ月で到着することが可能な世界になりつつあるんです。VRやAR、インスタグラムといった新しいメディアを使ったデザイナーの生きる道が増えていることは面白いですね」。
 
 

お別れの仕方までデザインする

サステナビリティとテクノロジー。この2つは間違いなく重要な未来のファッションのキーワード。水野は最後にこんな言葉を残してくれた。「日本ではここ20~30年間にファッション専門学校に進学する学生が激減しています。ファッションデザインをしたい人口がそもそも減ってきている上に、情報技術やバイオテクノロジー、歴史など、従来のファッション教育では教えきれないことが非常に増えています。これを1人の学生に教えるのか、それともそれぞれのスペシャリストを育てるべきなのか。現場のニーズに合わせて、未来の服をつくるための教育機関やコンペなど、新しい人材を育てる仕組みを作っていかなければいけないと思います。サステナビリティの観点から言えば、プレタポルテができて、“使い捨てでもいい”という考えが生まれてから半世紀が経った中で、リペアやリサイクルといった新しい循環系を実現するために、使い捨てから使い回しに移行するデザイン、あるいはモノとのお別れの仕方をデザインすることが必要でしょうね」。
 
衣・食・住の言葉がある通り、人が生きている限りファッションはなくならない。だがダイバーシティが声高に叫ばれ、価値が多様化している現代において、ファッションの価値を多くの人が認め、持続可能なものにしていくためには様々な取り組みが必要だ。未来のファッションのため、我々も今こそ行動を起こすべきなのだ。

慶應義塾大学SFCの徳井研究室とDentsu Lab Tokyoによる“UNLABELEDーCamouflage against the machines”プロジェクトから生まれたこちらは、AIが誤認識を引き起こしやすい特定の柄を研究し、アウターへと落とし込んだもの。AIによる監視社会への警鐘というメッセージも込められたこの21世紀のカモ柄は、これからのファッションの新たな形を考えさせてくれる。
Jacket [Reference Item] by UNLABELED

 
 

水野大二郎
英国王立ロイヤルカレッジオブアートファッションデザイン博士課程後期修了。ファッションとデザインを主に研究し続けている。慶応義塾大学環境情報学部准教授を経て、現在は京都工芸繊維大学KYOTO design lab特任教授を務めている。

 
 
 

Interview & Text Satoru Komura

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