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Creative Director / Hirofumi Kurino 06 Interview about “African Fashion”

Creative Director / Hirofumi Kurino 06 Interview about “African Fashion”

アフリカのニューウェーヴ
既成概念に捉われない表現者たち

アフリカのファッションといえば、近年サプールが数多くのメディアで取り上げられ話題になり、ジュンヤ ワタナベ2015年秋冬のショーでは彼らをモデルに起用し、ユニークに演出したのも印象深い。しかし、アフリカのファッションやアートといえば?と聞かれて、すぐに答えられる人もそう多くはいないだろう。それもそのはず、日本はおろか世界中がアフリカに全く目を向けていなかったからだ。今回、栗野の話を聞いていく上で分かったこと。それは、我々は気づかぬうちに既成概念に縛られていたということ。ファションシーンの最後の砦といったら語弊があるかもしれないが、それくらいアフリカのファッション、アートシーンが今面白い。欧米のファッションしか目を向けてこなかった人たちにとっては特に感慨深いものがあるはずだ。
 
 

ファッション業界の救世主
作る人のアティテュードが面白い

 
「少し前にコンゴのサプールが注目されましたが、彼らは既存のものをお洒落に着る。その着方がクリエイティヴということですよね。一種の洋服道みたいなもので、着ることによって喧嘩しないとか、若い人に価値観を伝えていくとか、人生を豊かにするという概念。あとはポージングの美学も彼らならではです。2015年秋冬のジュンヤ ワタナベのショーでもサプール独特のエレガントな歩き方をさせていましたよね。着る人のアティテュードがサプールの面白いところ。僕が今注目しているのはそこではなく、ナイジェリアを中心とするアフリカ全般の話。着るアティテュードではなく、物作りのアティテュードが面白いという点です。日本のファションでいうと70年代は受け止める時代だったけど、80年代になるとモノを作って世界に向けて発信する側になったじゃないですか。アフリカでもその機運が盛り上がりつつあるんですよ。それこそ今年のLVMHプライズでは、アフリカ人デザイナーが2人もベスト8に選ばれて快挙だと思いました」。
 
 

人、街、自然
すべてが色鮮やか

 
「日本のファッションには既にシーンがあって流通がありますよね。若い人が洋服を買っているし、ファッションを発表して受け止める素地がある。でも一方でそのファッションシーンが成熟しきって自由な発想が少なくなってきている。そしてアフリカには、自由で既成概念に捉われないスタイルがある。一番分かりやすいのは色彩感覚ですね。アフリカの人たちは普段見ている景色が日本と全然違います。東京で見ている景色はコンクリートの建物ばかり、色のない街とも形容されますが、ナイジェリアのラゴスに行くと大都会だけど、緑や花、アートが色鮮やかにあふれている感覚があります。例えば、中高生の制服一つとっても全然違っていて。強いグリーンのパンツにミントグリーンのシャツを合わせていたり、ピンクのスカートにライトピンクのブラウスを合わせていたりするんです。日本では考えられないような色目の制服を着ていて、凄く刺激になりましたね」。
 
 

栗野宏文
ユナイテッドアローズの上級顧問であり、創業メンバーの1人。個人としての活動も行い、日本とアフリカのファッションを繋ぐプロジェクトFACE.A-Jでは、ディレクターを務める。

L to R
Wataru Tominaga COYOTE sulvam Thebe Magugu Kenneth Ize Anyango Mpinga Photo Go Tanabe
Kurino’s Sight FACE.A-J
アフリカと日本の交流を通して
ファッションの面白さを表現

 
「このプロジェクト(FACE.A-J)にディレクターとして携わるようになったのは、アフリカにルーツを持つ2人の女性から話をいただいのがきっかけです。ファッションを通じて、アフリカと日本で何か交流できないか、というお話でした。思えば、ナイジェリア人のケネス・イゼ、南アフリカ人のテベ・マググが、僕も審査員である今年のLVMHプライズで選出されている。そういう意味でもこのプロジェクトをやるなら今だなと思ったんです。それで、ファッション&カルチャーの交流をという意味でFACE.A-Jというのはどう?と逆提案したら凄くのってくれて、じゃあその名前にしようということになりました。その後、日本とアフリカのデザイナーを僕の方でそれぞれ3組ずつピックアップしました。その選考基準は、実力はあるものの日本でショーを見る機会がなかったり、日本で誰も見たことのないブランド。日本からは、サルバム、ワタル・トミナガ、コヨーテの3組。アフリカからは、ケネス・イゼ(ナイジェリア)、テベ・マググ(南アフリカ)、アニャンゴ・マフィンガ(ケニア)の3組。その合計6組のショーを、東京とラゴスのファッションウィークでやりました。ただ普通にランウェイをやっても面白くないなと思っていたので、それぞれのデザイナーと話し合って様々な見せ方で表現しました。サルバムでは民謡クルセイダーズという音楽グループに着てもらったり、アニャンゴはソウル・トレインがコレクションのテーマだったのでダンスを絡めて表現。静止した姿で表現したブランドがあれば、逆にランウェイで見せたブランドがあったりと、パッケージとして面白くなるように工夫しました」。
 
 

個のためではなく世の中のために
そこに宿るクリエイションのパワー

 
「彼らアフリカのデザイナーと話をしていても、みんな物事をしっかり考えていて感動します。例えば、テベ・マググの作品。出来る限りアフリカで生産される生地を使っていて、縫製もアフリカでやりたいと言っていたし、タグにはチップを入れてどこで誰が作ったかストーリーとして全部読めるようになっているんです。LVMHに選ばれた時、“どうだったか?”と聞いたら、“世界で認められて良かったという気持ちよりも、自分たちが世界で認められることによって、世の中が変わるきっかけになったら良い”と言っていたんです。クリエイションっていうのは、世の中に対して何らかのメッセージがあったりしますよね。例えばアフリカだと、国の資源が奪われたり、人種差別を受けたり。今回のアフリカのデザイナーたちはみんなそういった反骨心がクリエイションに表現されていたと思います。そして自分たちのファッション・メッセージを世界に広めたいという気持ちも強くあったと感じます。こうしてアフリカに目を向けないと、いつまで経っても遠い、暑い、貧しい、危険なところ……としか思わない人が大勢います。でも実際はそうではなくて、ファッションでもアートでもアフリカには今面白い人たちが沢山いる。世界に知ってもらうきっかけを作りたいという思いが今回のプロジェクトでは強かったんです。欧米のファッションシーンを30年以上見てきて、未だに学ぶ部分もあります。ただ一方で、結構行き詰まっているなと感じる部分も多いのです。新鮮さを欠いたパワーゲーム。或いはデザイナーの首のすり替えを話題にして、バズを起こせば良いみたいな風潮。それはファッションを仕事にする人にとっても、受け取る側にとっても不幸なことだと思うんですよね。そこに本当のクリエイションはあるのか?と思うんです。今まで世界のファッションシーンがアフリカをちゃんと見てこなかったし、それだったら一回見てくださいっていうのが、FACE.A-Jでやりたかったことなんですよね。こんなに面白いんですよって伝えたかった。ファッションって早い遅いって言いがちだけど、今何が早くて遅いのか分からないですよね。それを分かる必要もないと思うし。ただ本当に早くて面白いものを探すんだったら、自分たちが今どっぷり浸かっている既成概念の世界から離れてみる必要があります。じゃないと何も新しくない。そう思わせるのが今のアフリカだったんです」。

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