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Creative Cyclists
Keiji Kaneko L'ÉCHOPPE Buyer

自転車が新たな
ワークスタイルの
移動手段

天才物理学者であるアインシュタインは、かの有名な相対性理論について自転車に乗りながら考えていたという。彼のように、新たな発見や価値となるアイディアを生み出す者をクリエイティブワーカーと呼ぶのかもしれない。それから月日は流れ、現代では車の自動化運転も現実味を帯びている。そのような時代にも関わらず、現代に生きる多くのクリエイティブワーカーもまた自転車に乗っている。なぜそのような職種の人たちは自転車に乗り続けるのか?そこにはクリエイティビティを刺激するヒントがあるに違いない。

Creative Cyclists
Keiji Kaneko L'ÉCHOPPE Buyer

自転車が新たな
ワークスタイルの
移動手段

天才物理学者であるアインシュタインは、かの有名な相対性理論について自転車に乗りながら考えていたという。彼のように、新たな発見や価値となるアイディアを生み出す者をクリエイティブワーカーと呼ぶのかもしれない。それから月日は流れ、現代では車の自動化運転も現実味を帯びている。そのような時代にも関わらず、現代に生きる多くのクリエイティブワーカーもまた自転車に乗っている。なぜそのような職種の人たちは自転車に乗り続けるのか?そこにはクリエイティビティを刺激するヒントがあるに違いない。

自転車から見える街の
景色がバイヤーの肌感覚を
研ぎ澄ます
 
金子恵治

 

自転車の速度感が多くの景色を見せてくれる

訪れる度に新たな発見や、見たこともない服に出会える場所、それが青山に店を構えるレショップだ。同店の仕掛け人であり、ファッション界からも確固たる支持を集めるのが、バイヤーの金子恵治。彼が自転車に乗る理由は、バイヤーとしての感性や嗅覚を養うためのようだ。
 
 
シクロクロス(オフロードを走る自転車競技)のレースに出場するなど、競技に打ち込むほど自転車に魅せられている金子。彼は自転車というツールがバイヤーセンスを高める上で大きな役目を果たすと確信している。「バイヤーという仕事をしていながら、ネットやインスタでリサーチをすることは全然なくて。お店も好きな古着屋くらいしか行かないし。だから世の中で何が流行っているのかを全然知らないんです。でも時代の空気感は読まないといけない。そのためには、とにかく街に出て空気を感じることが大事なんです。バイクや車では動体視力が追いつかない部分にも、自転車の速度だと対応できる。歩く方がゆっくりは見られるけど、自転車の方がより多くのモノを目にする機会を生んでくれる。そうやって常に移動して、いろんな人に会うことが僕にとってのインプット作業。それを可能にするのが自転車なんです」。
バイヤーという仕事にとって、新たな付加価値を付けられるアイテムを買い付けることがとても大切だ。そのためには、より多くのモノに触れる必要がある。金子もまた、新たなバイイングチャンスを求めてあちこちを走り回る日々を過ごしているようだ。普段の街乗りとしては自転車を使っていなかったが、これからは取り入れていくことを検討しているとのこと。「展示会や打ち合わせでとにかく都内の移動が多いんです。自転車だと最短距離で移動できるから、ブロンプトンという小径車を新たに買おうかなと思っています。一瞬で折りたためるタイプなので、電車やタクシーにも積み込めますし。これだと機動力が格段に上がる。例えば、公共交通機関の移動だと3件までしか入れられなかった予定が、自転車だともう1件増やせるくらいの時間短縮ができる。1件増えるということは、商品が1つ増えるわけで。そうやって毎日1件ずつ増えていったら、年間で相当数の商品を新たに仕入れられるようになるんです。直接会う人の数がバイイング数に比例していくから、その回数が増えるほどお店には面白いアイテムを入れられるようになる。そう考えると、自転車は時間効率がものすごくいいんです」。自転車移動を取り入れることでバイイングチャンスが増えていく。それはつまり、レショップが仕掛けるアイテム数に直結する。とてもシンプルだが、これほど強力で確実な方法はないだろう。
 
 

自転車で気持ちをリセットし新たなスタートを切る

金子の自転車との出会いは20年近く前のこと。「当時、二子玉川で買った自転車を漕ぐことがとにかく楽しくて。勤務先の渋谷までの片道15kmを自転車で通勤したり、アメリカから輸入した大きなカゴを取り付けたりして、どこへ行くにも自転車に乗っていましたね。初めはお洒落感覚で乗っていましたが、ある時期から走ること自体に楽しみを見出すようになりました。その遊びの延長として、シクロクロスに出会ったんです。長野県で100kmを走破するレースに出るという目標を急に立てたりして(笑)。そこから本格的にトレーニングも始めるようにもなりました」。そう話す金子は今ではプロ顔負けのシクロクロス実力者となり、数々の大会で好成績を収めるほど。「レースに出る時は、出勤前に荒川へ行って40kmぐらい漕いでいます。スポーツも仕事もリズムが大事。自転車に乗り始めたことで、仕事もスムーズになったように感じています。スポーツでなくてもいいんですけど、何か夢中になれることがあるとダラダラと悩むこともなくなって。スパッと物事を判断して、前に進んでいけるようになりましたね。洋服屋はシーズンが決まっているし、そのリズムに合わせて毎年を同じように繰り返しがちだと思うんです。でも、自転車に乗ると気持ちをリセットできて、毎日新たなスタートを切れるようになりました」。

平日は出社前に40km、週末には50~100kmのライドをする金子。アスリートさながらのトレーニングをこなし、シクロクロスの大会では1~4まであるカテゴリーを最高ランクまで上げるほど。週末には街と仕事から離れ、山や自然の中を漕ぐことが何よりのリフレッシュとなるようだ。

 
 

オフモードに切り替えるスイッチ

自転車を漕ぐという行為そのものが好きだと話す金子。自転車とのシンプルかつ真摯な付き合い方は、仕事への取り組み方にも大きな影響をもたらしているようだ。「出勤前に自転車を漕ぐことで、頭がすごくスッキリして朝から一気にリフレッシュできるんです。だから、仕事の始業時点で他の人よりもスタートダッシュが早くなるんですよ。休日にはレースへ出場するために遠征もします。そういう休みの使い方だと十分リフレッシュできるし、仕事からしっかりとオフモードに切り替えられるスイッチになるんです。自転車がライフワークであることで健全になりました。考え方や発想も確実に変わった実感がありますね」。自転車を漕ぐという行為はとてもシンプルだが、心や身体に与える影響は計り知れない。それは仕事に取り組む姿勢にも繋がるし、バイヤーである金子にとってはバイイングチャンスが増えることにもなる。インターネットで大抵のことを調べられる今日だが、自転車で街に出ることがリアルな日常世界の動向を教えてくれる。そうしてまた、流行に左右されない金子のバイヤーとしてのワークスタイルが研ぎ澄まされていくのだ。

愛車はスベクラックマッドマン。シクロクロスのレース用だが、シングルスピードにカスタムしている。これは「シングルスピードでレースに勝つことがかっこいい」という金子の美学によるものだ。

 
 
金子 恵治
バイヤーとして様々な経験を積んだ後、レショップを始動。オリジナルブランドLEの展開や、ミヤシタパークに2店舗目をオープンするなど、活動の幅と勢いは加速し続けている。
 
 
 

Photo John Clayton Lee Interview & Text Yutaro Okamoto

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