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Clothes Loved
Over Time ヴィンテージとなりうる洋服の条件とその魅力

時代を超える服、ヴィンテージクローズ。一般的にありふれた古着とは一線を画す存在として、区別されそう呼ばれている。今でこそ歴史的価値や希少性が伴い、価格の高騰などその価値は確固たるものになっているが、そもそもそうしたヴィンテージクローズと現在呼ばれている洋服はなぜ時を超えて遺ってきたのだろうか。そしてそうした存在に、私たちはなぜ魅了されるのか。PART4では日本のヴィンテージ業界を古くから牽引してきた2人の著名なヴィンテージバイヤーに、改めて時を超えるヴィンテージクローズとはどういう存在なのか、そしてその魅力について話を聞いた。時が経っても変わらない価値とは何なのか。その答えを探っていく。

Clothes Loved
Over Time ヴィンテージとなりうる洋服の条件とその魅力

時代を超える服、ヴィンテージクローズ。一般的にありふれた古着とは一線を画す存在として、区別されそう呼ばれている。今でこそ歴史的価値や希少性が伴い、価格の高騰などその価値は確固たるものになっているが、そもそもそうしたヴィンテージクローズと現在呼ばれている洋服はなぜ時を超えて遺ってきたのだろうか。そしてそうした存在に、私たちはなぜ魅了されるのか。PART4では日本のヴィンテージ業界を古くから牽引してきた2人の著名なヴィンテージバイヤーに、改めて時を超えるヴィンテージクローズとはどういう存在なのか、そしてその魅力について話を聞いた。時が経っても変わらない価値とは何なのか。その答えを探っていく。

Yutaka Fujihara BERBERJIN Director

藤原 裕
原宿とんちゃん通りに店を構える、世界屈指のアイテムを揃えるヴィンテージショップベルベルジンのディレクター。リーバイスのヴィンテージデニムを総括した書籍『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』の共同監修を務めるなど活動は多岐にわたる。その第2段として、リーバイスのデニムジャケットを総括した書籍を今秋発売予定。
時間が育んだ不変の存在だからこそ何度でも価値を再認識できる
藤原 裕
永久に定番として残っていくもの

ヴィンテージショップの雄として、世界から注目を集めているベルベルジンのディレクターを務める藤原裕。長く日本のヴィンテージ業界に身を置き、その豊富な知識と経験に基づきヴィンテージデニムの価値を日本で最初に見極めた男としても知られている。そんな彼にヴィンテージという時を超える洋服にはどんな条件があるのかを聞くと、迷わずこう答える。「そのアイテムが現代の人々の定番品になっていることが絶対的な条件だと思います。僕らが専門に扱っているのはアメリカ古着ですが、アメリカには時代を超えてきたヴィンテージのアイテムが多く存在します。その中でもいわゆる現在の世の中で当たり前のように定番になっているもの。代表的なブランドでいえばリーバイスやチャンピオン、コンバースです。ここら辺はもはや知らない人はいないブランドですよね。僕の中でも永久定番といえます」。定番品として昔から人々の記憶の中に残り続けているからこそ、時を超える存在になるというのは想像に難くないだろう。
 
そしてそうした定番品というものは最初にリリースされた時点で、すでに形が完成されてしまっているものが多いのだという。「僕といえばリーバイスのデニムというイメージを抱いてくださる方も多いと思いますが、同じリーバイスでも今回のテーマを説明するのにはGジャンが適しています。リーバイスのGジャンは1900年代初頭から出回り始めたといわれていますが、ワンポケットのデザインが特徴的なファースト、セカンドでいわゆる2ポケットになって、次に現れたのがこのサードと呼ばれるモデル。その中でも今回紹介するのがロット番号が558という丈がロングなバージョンです。このサードと呼ばれるモデルが出回り始めたのが1963年代あたり。胸ポケットから下に伸びている特徴的なラインのディテールからもわかるかもしれませんが、この形って現行のいわゆるデニムジャケットと呼ばれるものの原型だと思うんです。そう考えると1960年代前半からずっと変わらずに作り続けられている形ということになるんですよね。多少のアップデート等はもちろんありますが、見た目の形はずっとこのサードの形をベースとして変わっていない。逆にいえばこの形になってから新しいデザインっていうのは生まれていない。それほどに完成されている形なんです。一番最初に作られたファーストという形が歴史的には製造期間が長いですが、サードという形のデザインが愛され続けているから、今でもGジャンといえば皆さんの頭の中にこの形が思い浮かぶと思うんですよ。それだけのイメージとなっているこのサードというものは、時を超える服であることに間違いはないと思います」。

1960s Levi’s
Denim Jacket / Lot No.558
1963年に製造が開始された、通称サードと呼ばれているモデル。アイコニックな胸ポケットから伸びるラインのディティールは、リーバイスが50年代に製造していたショートホーンと呼ばれるスエードジャケットのディテールからインスパイアされている。特徴としては、シャープなウエストに太い腕まわりの若干野暮ったいシルエット。動きやすいように改良されこの形が出来上がった。そのサードの中でもこのロット番号558は特に希少価値が高く、着丈がロング使用のものとなっている。

 
 

完成されたデザインと普遍性

完成されたプロダクトとして、時を超え多くの人々から愛されてきたアイテムは他にもある。「チャンピオンのリバースウィーブは30年代後半に誕生してからシルエットの若干の変化はありますが、アイコニックなサイドのリブだったりディティールはほとんど変わらない。他のスウェットにはなかったこのディティールは、別のブランドが思わず真似してしまうような画期的な形だと思っています。画期的と言えばコンバースのチャックテイラーもそうですよね。こちらも50年代に誕生してから現在に至るまで、デザインがほとんど変わっていない。僕がこのシューズに対して一番思うのは何にでも合うということです。どのファッションに置き換えてもハマる。アメカジとしてデニムにも当然合いますし、少しモードっぽい黒い格好をしたとしても赤なら外せるし、逆に黒だときっちりハマってくれる。シューズとしての形が完成され過ぎてしまっていて、どこも叶わないんだろうなと個人的に思ってしまうほどですね。そうしたチャンピオンのリバースウィーブやコンバースのチャックテイラーは、先ほどのリーバイスの558と同じくまさしく定番品といえるでしょう。これまで例にあげたアイテムは、Gジャンやスウェット、スニーカーなどそれぞれカテゴリーで頭の中に思い浮かべたときに、真っ先に浮かんでくるイメージそのものだと思うんです。だからこそ一度は飽きてしまってもまた手に入れてしまう普遍性がこうしたアイテムにはある。普遍性という魅力があるからこそ、時を経ても多くの人に愛されるのだと思いますね」。人々の記憶にフォーマットとして刷り込まれた、このアイテムはこうであるという定番品のイメージ。
 
そのイメージはリーバイスをはじめとした歴史あるブランドたちによる、試行錯誤を重ねたどり着いた完成されたデザインが、時と共に定番品になっていく過程で生まれたものだ。ファッションは移り変われど、時代が何度もそのプロダクトに追いつく。価値を再認識する。そういった歴史が証明する不変のアイテムだからこそ多くの人々の心にいつまでも残り、時代を超えていく服となり得るのだ。

1980s Champion
Reverse Weave Sweatshirt
古くは30年代から存在するチャンピオンのリバースウィーブシリーズ。初期から変わらずにサイドに施される特徴的なリブは、まさにキングオブスウェットとも言える定番のディティール。その中でも80年代に製造されていたモデルはトリコタグというプリントのタグや、100%コットンではなくアクリルやレーヨンが混入された少しシャリッとした生地感が特徴。こちらはアメリカのイエール大学のカレッジスエットで、フロントのプリント部分がYALEではなく、頭文字Yのみをあしらったものは特に希少だという。

 
 

歴史を紐解いていくことで
辿り着くヴィンテージの魅力

「ヴィンテージの価値を作ってきたのは、間違いなく日本人だと思っています。リーバイスなどの歴史あるブランドに対して、この年代や時代はどうだったんだろうと掘り下げてきた日本人の方達が今まで沢山いて。そうした日本人の掘り下げていく気質が今のヴィンテージ価値の土台を作り上げていったのだと思いますね。リーバイスのデニムに関して言えば、日本人が世界で一番詳しいのではないでしょうか。ヴィンテージの魅力は、デッドストックを自分流に経年変化させていくことだったりももちろんありますが、歴史を紐解いていくことで現行の定番品の価値を再認識させてくれるということもあると思います。どれほどの年月を経て今に至るものなのかと思いを馳せたり、ロマンを感じることができると思うんですよね。そもそもそうしたヴィンテージに真摯に向き合う姿勢の積み重ねによって、日本はこんなに小さい国なのに今や世界中からコレクターが訪れる国になりました。日本に良いモノが集まっている事を世界中のコレクター達は分かっているんですよね。日本はファッションに対する考えが強い国なんだなと改めて思います」。流行をものともしない定番のプロダクトも、歴史を遡れば独創的で新しいプロダクトであったことは間違いない。現行の定番品もヴィンテージのアイテムを通して歴史を紐解いていくことによって、また新たな価値観を引き出すことができる。時間をかけてヴィンテージへの理解を深めていくことは、現行のファッションやアイテムへの理解を深めていくことと同じこと。そんな奥深く果てしない魅力がある世界へと誘ってくれるのがヴィンテージクロージングという存在なのではないだろうか。

1970s Converse Chuck Taylor100年以上も前の1917年にバスケットシューズとして誕生したチャックテイラー。70年代までは実際にバスケットシューズとして使われていた。80年代以降のモデルはファッションに取り入れられる事が多くなってきたことや、時代感に合わせソールの厚みなど若干の修正はあるものの、完成された形としてほぼ変わらずに現在まで至っている。この時代のモデルは、黒字に星が施された通称1ツ星と呼ばれるヒールラベルが特徴的だ。

 
 
 

Photo Genki Nishikawa Edit & Text Shohei Kawamura

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