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brand color’s character

brand color’s character

ブランドカラーという人格

ブランドには、なぜアイコニックなカラーが必要なのだろう。それを考えるにあたってファッションとは何かについて振り返ってみた。現代では、人と区別するためのものとしてファッションは利用される。同時に、自分とは何かを社会に示すために、私たちは洋服を形式的に着ている。そこには、洋服を着る人の趣味嗜好、生き方を伝えようとする意思が宿ってくる。あるファッションスタイルに 沿った格好をすることで、その服装は自分と周囲にいる人とのコミュニケーションツールとして使用されている。例えば、ジャケットのセットアップにネクタイをしている人であればビジネスマンだろうな、と思うし、スタッズ付きの革ジャンにスキニーのダメージデニムを穿いている人を見たら、パンクをやっていそうだな、と想像する。言うなれば、ファッションは信号としての役割を担っているわけだが、それを構成しているのは、洋服のシルエット、デザイン、素材、そして色だ。
 
たまにごっちゃに考えてしまうが、ブランドにとっての色と、それを着用する私たちにとっての色は存在としての意味合いが異なる。仮に全身ブラックのファッションをする人がいたとして、それは職業柄そうでなくてはいけないのかもしれないし、アナーキズムに傾倒した考えを持つ無政府主義、もしくは、そのカルチャーに属する人間であることを主張しているのかもしれない。その人にとっては黒という色が重要なのであって、ブランドが黒を選んだ理由というのは直接的には関係ないことだ。一方で、ファッションは自分自身を表すものなので、人間関係を考慮したうえで洋服の色を選ぶ場合もある。ドレスコードというものが存在する以上、洋服の色が限定されてくる局面も私たちの生活では多いわけだ。逆の意味で、そういったルールを排除したファッションスタイルを貫く人もいて、それらは異色、まさに色という単語を含んだ形容詞で例えられる。つまるところ、 着用者は個人的な理由に基づいて着るべき色を選んでいる。
 
ブランドが提案する洋服の色にも、様々な理由があって選ばれている。例えばミリタリーに特化したブランドであれば、ミリタリーグリーンやブラックなどが多いのだろうし、ワークブランドであればブラウンやチャコールが多いだろう。90年代のストリートカルチャーにインスパイア源を置くレーベルであれば、当時の色を再現したプロダクトを数多くリリースするだろう。同様にトレンドによっても洋服のカラーは変わっていく。今では蛍光カラーのボディにプリントが施されたTシャツも多いが、10年前は派手過ぎて敬遠されていたわけだ。
 
さて、このコラムで紹介するブランドと色は、その色でなくてはならない理由がブランドにあり、その色を大切にすることに明確な意味があるものだ。主にブランドが世間に提示してきた歴史のうえで、各々のアイコニックなカラーが定着した。ブランドを象徴する色が確立されるためには、時間や実績も必要なことだったのだ。そして、伝統的なブランドが持つアイコニックな色は、その個性や姿 勢を示すためのものとして選ばれていて、トレンドや時代による一過性のカラーはなく、自然界にある定番色が選択されている。ブルー、レッド、ブラックといった通常の色であっても、そこにブランドが繋いできた歴史が積み重なることで、その色が他にないブランドカラーとして受け入れられることになるのだ。 次のページで紹介しているティファニーブルーやヨウジヤマモトにとっての黒は、それを顕著に示している例だ。
 

このように考えると、ブランドが大切にしている色が決まるには2つの段階があることがわかる。最初はイメージ、印象を考えての選択。エレガンスであるとか、その国の伝統色、もしくは時代に一石を投じるためのアティテュードを示すものとしての色。この段階での色選びはブランドごとの個別な理由で選択されるものなので、個人が洋服の色を選ぶときと同じ感覚のものだ。そこで選ばれたブランドカラーが、時間が経つにつれて、不特定多数の人に認識されるようになり、色とブランドが同一化され普遍性的な魅力を持つ。この第二段階で、色はブランドのアイデンティティになる。ブランドと他者が共通の価値観を持って、そのカラーを理解する。このとき、キャラクターとしてブランドカラーが成立し、洋服を選ぶ私たちはファッションの信号として、それを受け止めることになるのだ。
 

Blue Tiffany & Co.

Tiffany & Co. × Globe-Trotter Trolley Bag [H550×W419×D200mm] ¥260000 by Tiffany & Co. (TIFFANY & CO. JAPAN INC.)

 

優に170年を超えて愛される
世界一有名なブランドカラー

 
ブランドと色を考えたときに、ティファニーブルーほどアイコニックなブランドカラーはない。コマドリの卵をモチーフにしたとされる透明感のある、このティファニーブルー。もとを辿れば、この色はティファニーが1845年に刊行した初のブルーブックの表紙に印刷されたカラーとして、創業者のチャールズ・ルイス・ティファニーが採用したものであった。ブルーブックとは、ティファニー最高峰のハイジュエリーコレクションを紹介するカタログであり、世界初のメールオーダーカタログであった。ちなみに、現在もブルーブックは年に1回発表されるハイジュエリーのコレクション名になっている。その後、1853年にチャールズ・ルイス・ティファニーが、会社のトップとして全権を握り、社名を現在のTiffany & Co.に改称。ここでカンパニーカラーとして初めてティファニーブルーが使用され、ブランドを象徴する色として定着していく。誰もが知っているパッケージでもあるティファニーのブルーボックスは、それ単体では購入することができないものであることは有名だ。ティファニーのアイテムを購入した顧客にだけ無償で提供されるブランド名を冠したブルーボックス。そこにブランドとしての矜持、高潔さと品格が感じられるのだ。

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