半世紀以上も前にフットボールシューズとして誕生した、アディダスのブランド史でも最も古いモデルの一つであるサンバ。自分は幼・小・中・高とずっとサッカーをしてきたこともあり、デザインやフォルムにシンパシーを感じるモデルである。そんな歴史あるモデルをベースに、デザイナー自身のルーツでもあるブラックカルチャーに敬意を掲げ、70年代のロンドンのジャマイカンスタイルをクラシックな形で落とし込んだWales Bonner。一方でボリュームのあるソールで個性を出しつつも、クリーンかつミニマルなブランド哲学を反映しモダンな仕上がりにまとめたOAMC。双方ともにベースとなるサンバへの解釈のアプローチは違えど、しっかりとブランドのアイデンティティをプロダクトに投影させている。タイムレスなモデルを再構築し、デザイナーの手によって新たな魅力が引き出される。これこそがコラボレーションの醍醐味であるし、そういったプロダクトであるからこそ長く身につけていたいと思えるのだ。
Photo Taijun Hiramoto | Text Shohei Kawamura |