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about Take a journey
Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.

about Take a journey
Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.


キャンバスに穴が空き、ストラップの金具が壊れるまでずっと使い続けた
旅に持っていくものというのは男の永遠の憧れなのだろう。もう雑誌を見るようになって、そして書くようになって随分と経つけれど、今までに無数の数のそんな特集を見て、そして書いてくれませんか?と聞かれてきた。昔はバックパッカーで、仕事をするようになってからは海外へ行くことが多いというだけで、こだわりのアイテムがあるんじゃないかと思われるらしい。
 
昔の人、例えば金持ちがポーターにヴィトンのトランクを運ばせてたような時代だったら、そういうものはたくさんあっただろう。アフリカに行くからどこどこのリネンのスーツに、ボルサリーノのハットだとか。昔の冒険家が、時計はロレックスのエクスプローラーだったり、アメリカンオプティカルのサングラスだったり。ものがそんなにない時代に、そして旅に明確な目的があったときに、必要な機能をもたらすこだわりのものというのはある意味、必需品だったのだから。

 

昔読んだドキュメンタリーや小説にはそんなものがゴロゴロ出てきたもので、そういうものを目にする度に、勝手に想像して欲しくなったことももちろんある。戦場カメラマンのキャパがいつも持ってたというライカ(写真を撮らないから必要ない)に始まり、作家のケルアックが持っていたポータブルのコロナのタイプライター(英語で小説なんて書かないから必要ない)、ヘミングウェイが狩猟に持っていったというラブレスのナイフ(そもそも空港に持ち込めない)、どれも結局1つも持ってないけれど。
 
こだわりの旅の道具というものを最初に持ったのはいつだろう?多分バックパッカーの頃に最初に使っていた米軍のアリスパックだろう。ヴェトナム戦争に投入されたそのバックパックは、金のないヒッピーのような若い旅人にとって必須のものだった。それに履き潰すまで履く、コンヴァースやヴァンズのスニーカーに、ビーサン、寝袋に。それがすべてだった。必要な服は物々交換や、現地調達で過ごすことが多かった。お気に入りのTシャツもフーディも、現地の安い洗剤と日差しの強さで、あっという間にボロボロとなり、捨てるしかなかったのだから。
 
安上がりな格好で唯一金をかけたのは、バイクを乗るときに必需品だったオークレーのサングラスくらいだった。ヒッピーの間でなぜか流行ったそれをかけ、裸に裸足で民族衣装のようなパンツを履いて海岸沿いをバイクで走る。その気持ちの良さといったらちょっと他に比べるものがない。ヤシの木が点在する荒れたアスファルトの道をそんな格好で爆走するのだから、今だったら決してやらないが。その頃は天然石のアクセサリーも流行り、験担ぎでどこへいくにも身につけていた。ターコイズ、ラピス、アンバー。もう2度とつけることはないかもしれないけれど、旅の思い出と一緒に家のどこかにそれらは眠っている。

 
 
仕事をするようになり、遊びじゃなく短期で海外にいくことが増えるようになるようになって、旅の友はなにかと聞かれるようになった。雑誌のページをめくれば、そんなもの必需品じゃないと思えるような愛用品を紹介する人たちがたくさんいて、個人的には嘘ばっかりだとそういう特集を軽蔑するようになった。それはもちろん自分がまだ若く、何かと文句をつけたい年頃だったのもあるが、そんな旅人見たことねぇぞというやっかみからくるものもあった。モンブランの万年筆だの、オールデンやジョンロブの靴だの、シアサッカーのスーツだの。ただそんなものを使うシーンが自分の旅に想像できなかったのかもしれないのだけれど。普段だって万年筆なんて使わないのに旅先でどう使うんだとか、革靴で本気で歩き回る気なのか?とか一回着るかどうかのスーツをどうして持っていくんだとか。
 
そもそもそんな金のかかったものを持ち歩いたり、着たりして、自分が観光できましたと周り中に知らせてどうするんだというのがあった。ちょっと治安の悪い場所に迷いこめば、そんな格好をした奴らは格好のカモであり、物売りたちにとっては、自分はお金を持ってますと話ながら歩いているようなものだったからだ。そういう場所に行かなければいいだけなのに。自分にとって旅先の格好とは、いかに現地と同化して、変な目立ち方はせず、金がなさそうだから相手してもしょうがないと思わせ、なにより無くしてもショックにならないものしか身につけないというものだった。つまり普段の格好となんら変わらず、余計なものは身につけない。取材用に愛用品がありますかといわれても、コンビニで買ったペンや機内でもらうもの、ノートもどこでも変えるもの。Tシャツも古いヘインズの白Tを持ち込んで、帰りに新しいのを買って、入れ替える。そんな感じだった。

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