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about Fashion needs Music
Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.
For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.

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Kunichi Nomura is a Japanese actor, writer, DJ, interior designer, and radio personality from Tokyo, Japan.
For Wes Anderson's Isle of Dogs, Kun is credited as co-writer and casting director, while lending his voice for the character of Mayor Kobayashi.


かつてないほどファッションが音楽を欲している

俺たちが最初に触れたファッションとは何だろう?初めてのファッションとはきっと、覚えたての服へのこだわりで、それはデザイナー達が半年前に発表するコレクションや、そこから生まれると予測されるトレンドから来たものでは決してなかった。小学生やそこらのガキにそんな海の向こうで発信されるモード界の出来事なんて全く関係がない。

 

ファッションへの芽生えはもっと身近なところにあった。男の子だったら例えば近所に住んでいたガキ大将が身につけていたものや、好きなプロ野球選手やサッカー選手のユニフォーム。女の子ならテレビで歌って踊るアイドルの着る衣装やアニメのコスチューム。俺にしたってそうだった。幼稚園の時にせがんだ巨人のパジャマや、「キャプテン翼」で若林がかぶっていたアディダスのキャップ。それらが多分最初に意識して自ら選んだファッションだ。

 

それは普段の生活において必要のないこだわり。若林と同じアディダスのキャップを被ったところで、他より倍日差しから守られるわけでもなんでもなく、単純に余計な出費が増えるだけ。けれどもそれを被った俺は、他のものよりはるかに幸せで満ち足りた気分になれた。自分が好きで崇めるヒーロー達と同じものを着るだけで、どこかその距離感が縮まったり、同じ部族になれたような気がしたものだった。

 

自分にとって最初のヒーロー達は友達がたまに手に入れて見せてくれる洋雑誌やビデオに映るカリフォルニアのスケーター達だった。普通の靴屋には売っていないヴァンズやエアジョーダンのファースト、それにコンバースなんかのスニーカーを履き、見たこともないような派手なプリントのTシャツを着て、短パンを履いていた。短パンだって、自分の周りが履くような短い、タイトなものじゃない。太くて膝丈近くあったり、もう何もかもが違う。あれを着なきゃスケーターになれないんだ、そう勘違いするのに時間はかからなかった。

 

何しろ決定的に見かけが違うのだから。下手であればあるほど、見かけが気になる。知らない英語を空想で訳しながら、それぞれが着ているものを片っ端から調べたものだった。カットオフの軍パン、ダブルに着けたスウォッチ、片方づつ色違いのスニーカー。全部に手を出していく中で、いろんなスケーターがバンドTを着ていることに気付いた。俺たちがスケーターをヒーロー扱いするように、彼らには彼らのヒーロー達が存在し、それがミュージシャンだったのだ。あたりを見渡せば、ファッションは映画と音楽、そこからしかないほど、その影響は大きかった。
そもそも情報源なんていうのは数冊のファッション誌とあとは音楽誌や洋画誌しかなかった。最新のモードなんていうものよりも、映画の中の登場人物の格好か、好きなバンドの格好、そして古着屋やインポート屋の兄ちゃん達が教えてくれる本当かどうか定かではない、本場ではこうだとか、こっちの方が価値があるという情報だけだった。

 

その中で一番大きな影響を与えてくれるものが音楽だった。その時代の音を鳴らすもの達の格好はまさにその瞬間の正しい格好に他ならなかった。深めのバンダナをしてキャップをかぶるヴェニスビーチのスーサイダルも、ヘビメタが流行った時のアクセル・ローズのスパッツ姿もその瞬間には正しいものだったのだ。そうやって俺たちは時代の音を作るものたちの格好をファッションの入り口として追いかけていった。好きな音を鳴らす人がする格好に意味を見出す。レッチリが短パンにマーチンを履けば、急いでそれを手に入れ、ブルース・スプリングスティーンの履いてるリーヴァイスが66モデルだと知れば、それを漁る。パブリック・エネミーが履いたアーバンカモのパンツも、ビースティのプーマも、ベン・デイヴィスのパンツも全てそうやってアーティスト達から学んだ。

 

それだけじゃない、彼らが着る他のバンドTから新しい音楽を知り、そこからまたズブズブとはまっていったりもした。カート・コバーンが着ていなかったらダニエル・ジョンストンのことなどきっと知らない人は多かっただろうし、彼らのレーベル、サブポップだって、カート抜きではあそこまでレーベルTが着られることもなかっただろう。そしてカート本人の格好。グラマラスな80年代が終わり、メタルブームで、街にはライダースやカットオフのデニムジャケットを着てブーツなんて男も多かった時代に、でかいハンマーでそれを一撃で壊すような衝撃。ヴィンテージの、XXでも何でもないただリーヴァイス、履き潰したチャックやワンスターのコンバース。じいさんが着ていたようなモヘアに、どうでもいいネルシャツ。服の価値や、その合わせ方を、ギター1本であれほど瞬間的に世界を変えた男はいない。怒れる10代や20歳そこそこの気持ちや、焦燥感を、カートはギターと歌詞だけで代弁し支持を集めていたのではない。その身にまとう服も込みで表現していたのだ。

 

あれほどのインパクトはそれから起きたのかどうか俺にはわからない。自分が10代の終わりという年齢でその渦のど真ん中にいたと感じたムーブメントと、40過ぎて眺めるムーブメントは大きく違うのだから。それでもグランジ以来、いくつものバンドやアーティストが登場し、グランジほどインパクトはなくても渦を生み出してきた。そしてそこで提示された着こなしは、いつもキッズ達を夢中にさせてきた。いや、それだけじゃない、服のプロであるデザイナー達も。生活の中から、過去の時代から、映画から、デザイナー達は様々なものをインスピレーションの源に服を作ってきたが、その中でも音楽というものはいつも大きな影響を与えてきた。

 

常にユースを見据えた服作りをしてきたラフ・シモンズは、90年代からジョイ・ディヴィジョン等の自分がティーンの頃に聴いてきたバンド達からインスパイアされたコレクションを発表し、それら過去のアーカイブは100万円を超える価格で取引されるほど今も影響を与え続けている。そしてエディ・スリマン。ボウイ等ミュージシャン達の影響を受けて育ったエディの服は常にリバティーンズといった同時代のバンド達に影響を受け、また彼らの衣装を手がけることで密接な共存関係を築いてきた。

 

何のためのファッションなのか?なぜ新しい服を買い、それを着るのか?その理由を語るのに音楽ほど説得力のあるものは他にない。だからこそ、今でも音楽は服のそばにいる。ファンタジーとして生まれたものにリアリティを与え、新しいデザインに必然性を与える。そしてその関係性はかつてないほど重要になってきている。ものが氾濫し、あらゆるものが安価でも手に入るようになった時代、服にはそれを買いたいと思わせる必然性をもたせることが難しくなってきている。その中で音楽の作り手達が持つリアリティがより重要になってきているのだ。

 

ルイ・ヴィトンのデザイナーに就任し、時代の寵児となったヴァージル・アブローはそもそもがカニエ・ウェストの下でキャリアを積んだ、誰よりも音楽とファッションのつながりを理解している男。どんなに忙しくても世界中をDJして回り、時代の音とそこに集まるキッズ達の空気感を常に現場で確認する。1月に開催されたパリコレクションでも、2回目となるルイ・ヴィトンのショーのモチーフとしてマイケル・ジャクソンを選び、ステージのバックでは盟友のブラッド・オレンジことデヴ・ハインズがそのコレクションを見事に体現したサウンドスケープをライブで構築した。そしてその晩。オフ・ホワイト、そしてヴィトンと連日でショーをこなしたヴァージルは通常のアフターパーティを開催することなく、クラブでアンダーカバーの高橋盾と、レディオヘッドのトム・ヨークからジャイルス・ピーターソンを含む多彩なゲストで本当のパーティを開催した。

 

ファッションの批評家や、編集者や、モデル達を中心としたシャンパンまみれのグラマラスな打ち上げではなく、暗く湿ったクラブの、真っ黒なスピーカーから吐き出される爆音のダンスミュージックをぶち上げる本当のミュージックヘッズ達に向けたアフターパーティー。ヴァージルは知っているのだ。かつてないほどファッションが音を欲していることを。そして音もそれを体現するファッションを欲しているのだということを。

 

欲しい服がない、何が今なのかわからない、そうぼやく知り合いがいる。もし新しい服、新しいファッションを求めるのならば、答えは1つだけだ。音を感じる服を探せ。

 

 

野村訓市
1973年東京生まれ。編集者、内装集団Tripster主宰。J-WAVE『Traveling without moving』のパーソナリティーも務める。ウェス・アンダーソンの映画『犬ヶ島』の脚本、キャスティングに関わったことも記憶に新しい。

 

PM10:00 – AM 0:13
3.8.2019 at Tokyo
From morning 3 cups americano
2 box of Marlboro gold soft pack

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