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Your Old Friend
Meguru Yamaguchi Acrylic and epoxy on shaped wood board

Yamaguchi was born and raised in Shibuya, Tokyo.
Now works in Brooklyn, New York.

Your Old Friend
Meguru Yamaguchi Acrylic and epoxy on shaped wood board

Yamaguchi was born and raised in Shibuya, Tokyo.
Now works in Brooklyn, New York.

枠を超え続けるブラシストローク

NYを拠点に世界中のアートシーンで注目を集める日本人がいる。ブラシストロークで表現される力強い作風で、唯一無二の作品を手がけるアーティストの山口歴だ。2020年10月31日から11月16日までの間、渋谷のPARCO MUSEUM TOKYOで 彼の個展が開催されたことも記憶に新しい。山口が生まれ、育った場所である渋谷。そして、アーティストを目指すきっかけとなったKAWSのエキシビジョンが行われた場所でもあるPARCO MUSEUM。「特別に思い入れが強いエキシビジョン」だと山口が言うように、これまでの活動を俯瞰で捉え、ダイナミックな展示作品は観客の心を強く掴んだことだろう。そんな会場で、山口に話を訊いた。「NYでひたすら制作活動をし続けてきて、10年間、日本に帰りたくても帰れない時期が続いていました。10年というキリのいい節目の今年、そろそろ友達や仲間、家族に会いたいという気持ちがつのり、展覧会という理由を作って10年ぶりに帰ってきたんです。目的が家族や仲間に会うことといえど、展覧会場のPARCO MUSEUMは、2001年にKAWSの展示を観て衝撃を受けた場所。そんな場所での展覧会で、学生時代の仲間たちにも観てもらえるのだから思い入れは強いです」。
山口は、2007年に単身渡米。NYでアーティストとして活動し、着々と国内外で名声を得てきた。日本に帰りたくても帰れなかったという、絶対にアートで成功するという情熱と努力が実を結んだ1つの通過点が今回の個展とも言えるだろう。「10年ぶりに帰るということも引っ掛けて、展覧会のタイトルを“YOUR OLD FRIEND”にしたんです。高校の友達に来てもらって観てもらえたら良いなという気持ち、絵画自体も僕にとって古くからの友人でもあります。20年前に画家を志す前の自分自身に向けたタイトルでもあります」。そんな個展は、展覧会の構成も実に面白かった。3部屋の構成にし、最初は大きな壁画が描かれた部屋。次に、NYのアトリエをそのまま持ってきたようなインクが飛び散り、画材や機材が散乱するカオスな部屋。そして3部屋目には、山口の初期の作品から最新作までを一堂に展示した。山口の作品というと、自らテーマカラーだというように青の作品が代表的だ。しかし、今回のメインはこれまでに観たこともない赤の作品だった。この理由を問うと「2020年だから」。という返事がすぐに帰ってきた。「今年は新型コロナウイルス感染症によって色々あったじゃないですか。世の中に対しての不満や怒りを表したというか。怒っていたんですよ、僕。当時、ブロンクスにスタジオを借りていたんですが、そこがクローズしてしまって作業がストップしたり。そんな中で使い始めたのがこの赤なんです。それに、強い作品を作りたかった。強いものが自分も観たかったし、強いものを作って人の心を揺さぶったり、元気にさせたかった。そんな気持ちがこの色味には表れているんです」。そうした感情が、山口にとって作品に作用するようだ。以前、私が山口をインタビューした時に青を多用する理由として、単純に青が好きだということのほかに、絵と向き合っていると昔の思い出を思い返すからと語ってくれた。昔の思い出というのは、東京にいた頃、青春の高校時代だ。青い春というように、昔の思い出は青みがかって山口の脳裏に浮かぶ。「絵を描くことって、瞑想に近い感覚で、自分と向き合う作業なんですよ。良かったことも嫌なことも思い出すんです。その時の感情によって選ぶ線や色が変わることはありますね」。そう山口が話すように、彼の作品は直感的なブラシストロークによって描かれるペインティングのみによるものだと思われることが多いが、左ページに写っている今回のメインの作品などの制作方法を聞くと、非常に複雑な工程を経ていることがわかった。簡単に一部を説明すると、まずプラスチックシートの上に線を描く。それを写真に収めデータ化し、膨大な量の線を組み合わせ作品の構成を考えていく。納得のいく形状ができたら、そのシルエットの板をレーザーカッターで作成。そこから様々な工程を経て作品が出来上がっていく。アナログとデジタルの両方を使い山口のダイナミックな作品はできているのである。「直感と理性が大事なんです。直感で描き、ロジカルにミリ単位でずらしていって構成を考える。しぶきの1つ1つもパソコン上で切り抜かなくては、データにできないので大変な作業なんです。だからこそ、スケールの大きな作品ができるし、大変だから真似をしようとする人はいないんです」。誰も観たことのない、常に新しい作品を発表し続ける山口。今後は、二次元ではなく三次元の作品も考えているようだ。彼の代表的な作品群に名付けられているシリーズタイトル「OUT OF BOUNDS」 にあるように、固定概念を打ち壊し、枠を超えた挑戦を続ける山口はこれからも我々に驚きを与えてくれることだろう。

 
山口 歴
1984年、東京都渋谷区生まれ。ファッション関係の親の影響もあり、アートが身近にある幼少期を育つ。2007年からNYを拠点に活動し、積極的な作品発表のほか、ファッションブランドとのコラボレーションも多いアーティスト。
 
 
 

Photo Taijun Hiramoto Interview & Text Takayasu Yamada

 

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