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ART Drawings

TAKU OBATA

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TAKU OBATA





動き、重力、空間を表現した
彫刻的に作るB-BOYな絵画

ボリュームのあるアウターにカンゴールのハット、アフリカ・バンバーダが着けていたようなグラス、オールドスクールなB-BOYのスタイルを彫刻で表現し、昨今のアートシーンを賑わす作家、小畑多丘。自身がアートを始める前から行っていたB-BOYING(ブレイクダンス)をルーツに作品を作ることから“B-BOY彫刻家”と称されることも多い。そのB-BOY彫刻が印象的ではあるが、彼が作る作品の幅を見てみると映像や写真、抽象彫刻、そして今回紹介するキャンバス作品など多岐に渡る。表現は違えど、どの作品に対しても共通して言えることは、B-BOYであり、ダンスから抽出した動きであり、重力、空間をコンセプトにしている。
 
「ダンスを始めた当初は、ただカッコイイという理由でやっていました。それから彫刻をするようになって、なぜ僕はダンスを始めたのかと考えるようになったんです。理由を突き詰めていくと、それは重力にあるんじゃないかと思うわけです。重力という絶対的な存在があるから、面白い動きができる。面白い動きに見える。肉体の動きから重力がかかる瞬間に対して僕は、面白いという反応をしていたんだと気づきました」。
 
ドローイングは当初、彫刻を作るためのスケッチとして描いていた。しかし、膨大な制作時間がかかる上、売れるかわからないのが彫刻作品である。やがて、彫刻制作の為のお金の足しになればと思い2012年からリトグラフを作り始める。そして、平面作品のバリエーションが増えていく。
 
「彫刻は、とにかく時間がかかる作業。最初にイメージを考え、ひたすらスケッチを描き、それから何時間もかけて作っていきます。作り込みの作業です。一方、ドローイングはノリ重視で描くことが多い。でも、どのドローイングもダンスからイマジネーションを得た、量の移動や重力、空間をコンセプトにしています。それに、絵画でありながら彫刻的な方法で作っているんです」。
 
XYZ軸で手前に何があるか、奥行きをどうするかと立体的に考える必要があるのが木彫の作品だが、一方で絵画は平面作品であるために空間を作り出す必要はない。だが、小畑の作る絵画を見ると、平面作品にもかかわらず彫刻と通じる奥行きや空間を捉えることができる。ドローイングとスプレーの吹き付けを繰り返すことで生まれる複数の層。それに加え、小畑がドローイング作品に用いている彫刻的なルールが面白い。
 
「彫刻は、元となる木材の量が決まっていますよね。継ぎ足すことはできるとしても、基本的にはある材料を削ることで作品が作られます。その木彫における量のルールを絵画で表現しても面白いと思って、使う絵具の量をあらかじめ決めているんです。例えば、最初にキャンバスの上にある程度の絵具を置いたら、その絵具の量だけでダンスをしている人物を描き切る。そういった縛りを設けることで、彫刻家である自分らしい作品になるし、ルールで縛ることでよりイメージが膨らむのです」。
 
小畑が絵画にも用いている量の制限や、動きの表現がよく現れている作品が、上部にて掲載している新作だ。今年、神宮前にあるオン・サンデーズ内のギャラリー“ライトシードギャラリー”にて行われたエキシビジョン“SPECTRUM OF THE MOVE EAST SIDE”で展示されていた配置と同じ掲載をした両端の作品は、いずれも対比となっていて、中央の作品は、上下がペアとなっている。これの制作方法について、左上と右上のペアの作品を例に挙げて紹介したい。対比となっている作品同士を置いて並べてくっ付けた状態で同時に作るのだが、まず2枚の黒いキャンバスの片方を一度すべて真っ白に塗る。そこで作品に使うことのできる塗料の量を決める。そこから塗った塗料を削り、隣の片方のキャンバスに持っていく。そうすることで、片方のキャンバスは削るに対し、もう片方は盛るという表現となる。キャンバス同士の境目では、彫ると盛るをワンストロークで行うという、彫刻ではできない絵画的でありながら彫刻的な量の移動を再現している作品だ。
 
「ダンスは自分自身の量が増えたり、減ったりするわけではないけれど、量が移動する。量が移動することでダンスが出来ています。そういう量の移動をこの作品でも表現しています。アートというものは、作家のこう作りたいという気持ちで作っているもの。自分の欲求や主観的なやりたいことだけ、勝手なコンセプトを持って作っているんですよね。僕の場合はそれがB-BOYや重力、動き、空間であるというだけの話。シンプルな絵画でも何をコンセプトにするかで面白くなると思います。そういった重力や移動のことも、彫刻をやっていなかったら考えもしなかった。ダンスをやっていなかったらアートもやっていなかったし、いま表現しているアイディアは根本を辿るとダンスから来ているんですよ。ダンスは、バレエやニュースクール、ロボットダンスなど色々とありますが、すべて身体の動きによるもの。身体の量が動くという意味では全て一緒で、ダンスの種類が違うというだけ。平面作品もそれは同じで、描いているという点で言うとほかのアーティストがやっていることと変わらない。木彫に関しても、昔から手法も道具もあまり変わっていませんが、そこに僕ならではの思考を加えることでほかとは違うもの、新しいものを生み出したいんです。大切なのは、自分がどういう意図や理由を持って作っているか。人間が作るものは、そういった思考が込められているからこそ面白いと思うんです」。
 
 
小畑多丘
ブレイクダンサーである自身のルーツから、B-BOYや身体の動き、重力、空間を題材にした作品を作り続ける。近年はドローイング作品も注力し、2020年12月にドローイングの作品集“SPECTRUM OF THE MOVE”を発行。
 
 
 

Photo Taijun Hiramoto Interview & Text Takayasu Yamada Untitled, 2021 acrylic on canvas

 

This article is included in

Silver N°12 Summer 2021

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