Loading...
  • EN
  • JP

TAKA Ishii Gallery / Takayuki Ishii 02 Interview about “Art & Product”

TAKA Ishii Gallery / Takayuki Ishii 02 Interview about “Art & Product”

モダニズムの全体像を捉えて選ぶ ミニマルでシンプルなモノと場所

 

バラガン建築を体験して
その家具の魅力に惹かれた

ルイス・バラガンのチェア、ミゲリート。これは石井孝之の普遍的価値観に基づくセレクトだ。バラガンは建築家として建造物を設計するだけではなく、そこに置かれる椅子などの家具までデザインを徹底して行なっていた話は皆様もご存知の通り。自身が担当したホテルなどに置く家具としてミゲリートは生まれた。この一脚は、石井が10年以上前にメキシコのディーラーから買い取った40年代のモノで、バラガンが設計したホテルで実際に使われていたものだそう。そのホテルの見取り図も次のページに掲載する。「メキシコに行ったらバラガンの建築が見たくなるじゃないですか。バラガン邸の十字にデザインされた窓の間から光が差し込むのですが、それが教会でのワンシーンのように感じられたんです。そんな空間の中にミゲリートが置かれていました。そうするとどうしても欲しくなってくるんですよね。メキシコの知人から紹介してもらったお店に行って購入しました」。このバラガン邸にある十字窓は、1989年に竣工した安藤忠雄の代表作、光の教会のイメージソースになっていることでも有名だ。敬虔なクリスチャンであったバラガンらしさを感じられるディテールであり、その光の中に在るバラガンがデザインした家具は、厳かな印象を与える。
 
 

気になるのはどうしても
40年代から50年代のモノ

取材を行ったのは、タカ・イシイギャラリーの1階にあるビューイングスペースだ。コレクターの要望に応じて様々な作品を見せる部屋で、壁もオフホワイトに塗装されておりリビングルームのような雰囲気に作られている。作品を自宅で展示した際どのように見えるのか、より具体的に体験できる空間になっているのだ。そのため、この部屋には石井の趣味も兼ねた家具がたくさん置いてある。「ミゲリートの良さは建築と一緒に見ないとなかなか伝わらないんですよね。うちもこれ一脚だけではなく、これから増やしていこうと思っているんです」。ミゲリートの隣には、よく似た形の小ぶりな椅子が置かれていた。これはキューバ人でありメキシコで活動していた女性家具デザイナーのクララ・ポルセットのもの。バラガンも彼女にデザインをオファーしていた経緯があり、そのため形状が似ているのだ。ではメキシコの家具しか置かないのか、と言うともちろんそうではなく、北欧、フランス、日本と様々な国で生まれた家具が集められている。当然、石井の感性で選ばれたものだが、そこには次のような共通点が窺える。「好きになるのは40~50年代のものなんです。モダニズム建築や家具、ものだけに限らず、アートや時代背景、デザインにまつわる思考であるとか、その時代の全てを含めた文化が好きです。モダニズム全般に惹かれていて、それがずっと頭の中にあると思いますね。自分が気に入ったものの制作年を調べてみたら、やはりその期間に該当するだとか。そういうことも多いですね。面白いことだと思います」。無意識下でものを選ぶ際の普遍的な価値観となっているのはモダニズム。タカ・イシイギャラリーでは12月27日まで勅使河原蒼風の個展が開催されているが、ビューイングルームに置かれていた立体作品も勅使河原が50年代に制作した作品だ。偶然ではあるが、同じ年代に作られた作品や家具のラインナップとなっていた。近代主義に基づいて生まれた数々のものたち、その魅力の裏付けとなるのは何か。「デザイン的な面で見るとミニマルですよね。いらないものを一切排除していて、とてもシンプル。何気にロココ調のものも好きだったりするんですけど、基本的にはミニマルなものが大好きですね。美術作品を選ぶ際も同じなので、そういった作品が多いんじゃないかな。蒼風さんの作品にも共通する何かがあると思うし、やはり同じ年代に作られたもの達は合うんですよね。今、この部屋にあるのは“約”50年代のものばかり。ミゲリートは40年代、クララ・ポルセットの椅子は30年代ですけど、ベースとなっているのは40年代後半から50年代。気になっているのはどうしても、その年代のものです」。

 
 

自らが好きな作品や家具を
世界中から集める空間作り

シンプルな空間にシンプルな家具とアートたち。世界中で生まれた同世代のものたちが同居することで、空間に統一感が生まれている。石井が今楽しみにしているというのが、半年ほど前に和泉正敏にオーダーしたという石のテーブル。和泉は彫刻家、イサム・ノグチと共に石のアート制作を行ってきた石彫家であり自身も各国で展示を行っている。「この部屋に置こうと思っているんですけど、何キロくらいになるかわからないですからね。実際どこに置くのかは完成してから考えようと。もしかしたら自宅に置くかもしれないし、とても楽しみにしています。制作をお願いするうえで、和泉さんにはなるべく自然なままの状態でお願いしますと伝えたんです。もちろん和泉さんに作っていただくわけなので手は加えてほしいんですが、できるだけ石の姿を残してほしくて。それが素晴らしいんじゃないかと思ったんです」。前述のミニマルなものを好む石井ならではのオーダー内容だ。ミゲリートに関してもそうだが、現在においては家具も美術品として扱われ、展示されているケースがある。実際に使用せず家具を飾るという楽しみ方をする人も多いのではないだろうか。タカ・イシイギャラリーに置かれている家具も同様に扱われていると思いきや、「いえ、家具は家具。美術品ではなく日常で使用するものだと捉えています。ただミゲリートは実用性の面で難しい部分がありますね。製作された当時は、バラガンもそこでコーヒーを飲んだりタバコを吸ってリラックスしていたのかもしれませんけど、今、商談などで長時間座るというのは、なかなか……」。好きだから日常の1つとして部屋に置き、美術品として価値が高いものであってもあくまで「家具」として扱う。タカ・イシイギャラリーに置かれているバラガンのミゲリートを見て、改めて、これは椅子以外の何物でもないのだな、と当たり前だが、最近ちょっと忘れていたことを思いだした。

Upper Left ミゲリートの隣に置かれていたキューバの女性家具デザイナー、クララ・ポルセットがデザインした一脚。こちらは、30年代のもの。Upper Right 彫刻家・画家・インテリアデザイナー、イサム・ノグチの照明。氏が作ったAKARIシリーズの照明具は今も知られるところだろう。Bottom Left勅使河原蒼風作木彫「いのち」1950年代。いけばな草月流の創設者であるゆえ、いけばなの印象が強いが、こうした大きな立体作品も制作していた。Bottom Right 同じく勅使河原蒼風作小木彫作品(中、右)。ちなみに、これら作品が置かれているローテーブルも産地はメキシコで、50年代に製作されたものだ

Related article