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Sunrise from a small window
SHO SHIBUYA

New York, Brooklyn based graphic designer, painter.
Founder of Placeholder.

Sunrise from a small window
SHO SHIBUYA

New York, Brooklyn based graphic designer, painter.
Founder of Placeholder.

Sunrise from a small window, 10th October 2020

It’s In Our Hands, Created with Patti Smith, 30th October 2020

California Fire, 10th September 2020

Black Lives Matter, 2nd June 2020

 

日々の記録であり、社会に対してのメッセージ

米国を代表する日刊紙であるニューヨーク・タイムズ。毎日発行されるそのトップページにペイントを行い、インスタグラムに投稿し続けるアーティストがいる。NYをベースにグラフィックデザイナーとして活動するショウシブヤだ。様々なブランドや企業のグラフィックデザインやアートディレクションを手掛ける傍ら、自身の活動として日々手掛けているのが、今回紹介する作品群「Sunrise from a small window」である。インスタグラムで毎日投稿される、ニューヨーク・タイムズにペイントされた美しい空や、社会的なメッセージが話題を呼んでいるこのシリーズ。毎日1つの作品を制作し続ける表現に、コンセプチュアルアーティストの河原温(On Kawara)の作品を彷彿とさせるが、シブヤ曰くやはり河原温の影響があったようだ。
 
「毎日を正確にペインティングしていって、その日のうちに終わらなかったらデストロイする。出来上がったら、キャンバスの箱の裏にその日のニューヨーク・タイムズを入れる。オン・カワラの作品を見た時にシンプルで、その時間を切り取っているというイメージに感銘を受けました。卓越した綺麗なタイポグラフィもそうですが、付加価値をつけて、意味のあるものを作って、人々に共有しているということにすごく感銘を受けたんです。そんなことを自分でも何かできないかと思い、初めはカタカナをグラフィックにして、月曜ならゲ、火曜ならカというように、曜日ごとに毎日制作していました」。
 
漢字や平仮名に比べ、ジオメトリックな印象のカタカナはNYの人々に新鮮に映り、個展の開催にも繋がったようだ。3年程その活動を続けているうち、2020年、新型コロナウイルスによるパンデミックが起きる。
 
「悪いニュースばかりを目にするし、いつもブルックリンは騒がしいのに、外は鳥のさえずりや葉っぱの音が聞こえるくらい静かで。人々が苦しんでいて、どうなるかわからない混沌とした状況の中、ふとスタジオの窓を見た時に、すごく空が綺麗だと思った瞬間があったんです。経済活動が止まったことで、普段よりも空気が綺麗だったからかもしれないですが、それを見て、空をペイントしてみようかと思いました」。
 
空をニューヨーク・タイムズにペイントし始めたのは、それから2日後のことだった。パンデミック、政治、人権問題、公民権問題など、ニューヨーク・タイムズのトップページには、混沌とした悪いニュースばかりが載っていた。シブヤは、そのトップページに窓を閉めるように、空のペイントを載せ始める。それから数ヶ月が経ったある日、それまで空だった作品が黒いペイントで投稿された。5月25日に起きたジョージ・フロイドの死がきっかけである。SNS上にブラックボックスを投稿する、Black Lives Matterへのサポートは日本でも多く見られたが、アメリカに住むシブヤはそれをリアルに感じていた。
 
「アメリカにいると、不平等さを本当に感じるんですよ。今まで溜まっていたストレスへのアクションとしてみんなブラックボックスを投稿していましたね。自分もそういう不平等に対するストレスや鬱憤、エモーションを、自分の表現として、ブラックに塗りつぶすことで、Black Lives Matterをサポートしたいと思ったんです。その日からですね。今日に至るまで毎日ペイントをしようと思ったのは」。
 
シブヤは毎朝4時頃に起きてランニングに行き、近くのニューススタンドでニューヨークタイムズを買ってペイントをする。基本的には、日の出の空を写真で撮り、その写真を基にペイントを施すわけだが、インスタグラムを観ると、不定期的に青空以外のアートワークの投稿を目にすることができる。昨年ジェイソン・ポランやエンツォ・マリが亡くなったタイミングでは、彼らをフィーチャーした投稿が行われていた。
 
「ネガティブなニュースに対しての表現だけではなく、僕の中でのヒーローのような人が亡くなった時は、その日のニュースペーパーにペインティングし、自分の中のエモーションを表しています。自分は喋るのが上手くないと思っているんですが、だからこそ、ビジュアルを通して自分の気持ちをシェアしたいと思っているんです。それを見た人が何かを感じ取ってもらえたら良いなという思いを込めています」。
 
そんなシブヤの思いは功をなし、運命的な展開が訪れる。パンクのゴッドマザー、パティ・スミスとの出会いだ。
 
「9月9日にカリフォルニアで大規模な山火事がありましたよね。ウェストコーストに住んでる僕の友達が昼の空の写真を送ってくれたんですが、空とは思えないような色でした。そのカリフォルニアの空をペイントしたんです。その投稿をパティ・スミスがたまたま目にしたようで、僕にダイレクトメッセージを送ってくれたんです。“Thank you for posting it”って。NYのアイコンであるパティ・スミスが僕にメッセージをくれるなんて、最初は信じられなかった。それから僕の投稿に度々メッセージをくれるようになったんです」。
 
その後間も無く行われた11月3日の大統領選挙。その数日前からパティ・スミスは、ジョー・バイデンをサポートするために、“IT’S IN OUR HANDS”というメッセージと、“Vote”と書かれた手のひらの写真を載せたポスターを街中に貼る活動を行っていた。
 
「それを見て、僕も人々が選挙に行くように、パティ・スミスと一緒にアートワークを作れたら良いなと思ったんです。パティ・スミスのハンドペイントを載せるアイディアを思いついて、提案したら“もちろん!やろう!”と快諾してくれて。パンデミックのなか、彼女を危険に晒すのはどうかと思ったから、手袋してマスクして消毒も徹底して、公園でやることを尋ねたら、“私のリビングでやろう!”って言ってくれました。ほんの2週間前まで面識もなかったのに、ましてやパティ・スミスのリビングにいるなんて信じられなかったですね。2週間前まで知らなかった何者でもない自分が、あなたのリビングルームにいるなんて不思議じゃないか?と聞いたら、“あなたが何者でもないわけないじゃない”。と言ってくれたんです。“私があなたのことを好きで、これはとてもシンプルなこと”だと。名前も年齢も関係なく、自然に接してくれることに感動しました。でも、一番嬉しかったのは、それでできた作品を通じて、いろんな人がメッセージをくれたこと。“作品を見て投票所に行った”、というメッセージをたくさんもらって。僕は投票権がないけれど、僕の活動を通して小さなアクションが起きる。メッセージをビジュアル化して発信することで、もしかしたら誰かがリアクションしてくれて、何かが変わるかもしれない。僕の活動は、日記がわりの日々の記録でもあり、人々に対してのメッセージにもなっているんです。毎回インスタグラムにポストするときは、違った意味に捉えられないかな、とか不安になりますけど、言わないよりは言った方がいいし、自分が信じているものであれば届けたいという思いでやっています」。
 
シブヤの活動は、もちろんニューヨークタイムズ社にも知られており、社員たちも今日はどういった作品がアップされるのか話題になっているようだ。作品をまとめた本の発売や、ベルギー・アントワープのミュージアムMoMu-Fashion Museum Antwerpでの展示も決まっているという。長く続く未曾有の事態のなか、どこかで日々起こる事件たち。めまぐるしく過ぎ去るそれらのニュースをキャッチし、シブヤらしいシンプルな表現で人々に発信する。シブヤがデザインする上で、“ビジュアルの格好良さよりも、メッセージとコンセプトを大切にする”という考えがあるが、この作品群もまさに人々の心を動かすメッセージである。
 
 
ショウ シブヤ
専門学校では建築を専攻し卒業後、東京でグラフィックデザイナーとして活動。2011年よりNYへ活動の拠点を移し、様々なデザインエージェンシーを経て、2018年デザインオフィス「Placeholder」を立ち上げる。
 
 
 

Interview & Text Takayasu Yamada

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