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life with art
OBEY CLOTHING

life with art
OBEY CLOTHING

VOTING RIGHTS ARE HUMAN RIGHTS October, 2020
 
ミルウォーキーのダウンタウンに描かれたこの作品はBLACK LIVES MATTERの原動力となる偏見や差別のない世界を実現するという人々の強い想いを代弁する作品。僕たちが正しい民主主義を作り上げるには自分たちも投票や様々な政治的行動を自発的に行い明確な意思表示をする必要がある、とShepardは言う。僕たちの正しい行動は誹謗や中傷よりも大きなパワーとなって世界をすこしずつ良い方向に変えていくのだ。
素晴らしいアートは日々の暮らしを豊かにする

アートは僕たちの日常に決して必要不可欠なものではない。しかし素晴らしいアートと共に過ごすことは日々の生活へのインスピレーションや刺激につながり、僕たちのライフスタイルは確実に豊かになるし、アートは時に僕たちを奮い立たせ、感動を与え、生きる活力となる事だってある。自分で集めた誰かの作品を携帯やタブレットで観ていることも、ギャラリーや美術館に通って絵画を鑑賞することも、街にある壁画やグラフィティを意識しながら過ごす日々もすべてアートが傍にある日常だ。そんな僕たちの生きる時代ではストリートアートが世界的なムーブメントとなり、以前より多くの人々がアートを身近に感じることができるようになった。ストリートアートはアーティストと僕たちの間に介在する距離や時空を超えたコミュニケーションツールだ。OBEY GIANTことShepard Faireyの活動はこのムーブメントの象徴であり、世の中が直面している問題に対する自身の考えやアティテュードをアートで表現し世界中に大きな影響を与えている。
「時代を超越したアートを作るためには2つの方法がある」と彼は言う。一つは「流行の美学ではなく時代を超えて人々が反応するものを考えること」。もう一つの方法は「今自分の生きる世界が直面している問題をタイムリーかつ時代を超えた形で扱うこと」。あくまで主観だが前者は非常に遠い世界のような、気の遠くなるようなプロセスがありそうな気がするが、後者は決して遠い世界の事ではなく、作品のテーマは僕たちにとっても身近なものかもしれない。Shepardの作品には同じ時代の同じ瞬間を生きている僕たちの心や価値観にダイレクトに響くメッセージやストーリーが込められている。近年制作されたOBEYのポスターや壁画作品とOBEY CLOTHINGの作品を振り返りながら、彼の作品が与えてくれるインスピレーションと、彼が作品を通じていかに僕たちを啓蒙し、新たな意識を芽生えさせるのかを考察したい。そしてShepard Faireyの作品と共に生きる日常は、今まで知らなかった音楽やアートや人物との出会いの扉を開く日々であるということを感じ取っていただきたい。

Political Art

OBEY GIANTの活動が普段ストリートアートに関心を持たない人々にまで浸透したのは2008年のアメリカ大統領選挙で民主党から立候補したバラク・オバマを支持するポスターを制作したことがきっかけだった。Shepardは当時すでに世界で最も有名なストリートアーティストであったが、現在と同じように僕たちと同じ時代を生き同じ問題を共有する市井の臣であり、同時にアメリカや世界の平和と希望のために自分自身が行動したいと願う強い意志を持ったアーティストでもあった。
2001年から始まったブッシュの任期は奇しくも戦争とテロリズムに支配された哀しみの時代となってしまった。リーマンショックの恐慌も拍車をかけ、世界は疲弊し、人々は混沌とした現実の中で希望を見失っていた。明るい日常を取り戻すには人々の心の中に希望が必要だった。離れた国に住む僕たちからはオバマはそんな時代に突如現れた希望の光のように見えた。OBEYが作ったオバマのポスターのせいか、それ以前よりもアメリカの大統領選が身近になり、自分自身がオバマが大統領になることを望んでいるんだとわかった。彼の作品を通じて政治や世界情勢に対して以前よりも明確な意識が芽生えたのかもしれない。有色人種初のアメリカ大統領を目指す、平和の象徴となったオバマは共和党のマケインに大差をつけて大統領となり、その後8年の任期を全うした。僕たちの希望は大きな変化を生みだし、その世界は新しい僕たちの日常となった。
しかし彼が8年の任期を終える頃には欲深い人類は別の変化を求め、オバマ前大統領とは全く異なる思想や理念を抱き、想像を絶する資産を有する特殊な人物が大統領に相応しいと考えるようになった。2016年の11月にはHOPEという言葉を目にすることもOBEYのポスターを見ることもなかった。
下のポスターはオバマ前大統領がホワイトハウスを去る日にリリースされた。元々は8年前の同じ日にオバマが大統領に就任することを祝い作られたものだった。明日からトランプの時代が始まる、そんな日にShepardは何を感じていたのだろう。僕たちは何を感じていたのだろう。新しい門出を祝いたい気持ちより、過ぎ去った日常を懐かしみ、希望が叶えられた平和な時間が終わりを告げるような感覚に心が反応している。その時の気持ちが間違いではなかったということは、今僕たちが抱えている問題を見ればはっきりしている。

1. BE THE CHANGE Offset Print
January 19, 2017
作品を通じ、僕たちが生きる世界の問題と向き合い続ける

世界中の多くの人々が感じていた憂いは必然のように露呈していく。Shepardは現在の共和党の政策が民族主義を援護し、人種差別を容認していると考えるようになる。民主主義を貫くことよりも君主になりたがっている大統領は、民族主義を愛する大統領でもあったということに世界が気が付いても、人々の訴えは無視され、デモや過度の主張は暴力を持って制圧される。そんな日常を当たり前にしてはいけないという想いがShepardを衝き動かす。下のAMERICAN RAGEというアートは、2020年のアメリカの独立記念日を祝う為、そして全ての国民が民主主義に参加できること、行動を通じて民主主義が平等の元に維持されることを願って制作された。単純に政府やナショナリズムを糾弾するのではなく、僕たちを啓蒙し行動を起こさせるのが彼の本望なのだ。この作品は2014年にLAのサウスセントラルで行われた大規模なBLMのデモの際に写真家のTed Soquiが撮影した男性がモデルとなっている。この写真が撮影された刹那、LAPDはデモ参加者に向けて威嚇射撃を行った。モデルとなった男性は当時から現在に至るBLMの精神と理念の象徴であり、正しい愛国心を抱きレイシズムと戦う人々の尊さと勇気を讃えている。この作品はエディションが定められておらず、今でも作品を購入することができる。作品の売り上げは全てBLACK LIVES MATTERに寄付されるという。

2. AMERICAN RAGE Offset print
Edition of Open Edition July 13, 2020

 
 
BLMが世界的なムーブメントとして認知されていく一方、日本ではほとんど知られていない活動がある。3枚目のRADICAL KINSHIPは世界最大のギャングリハビリセンターであるHomeboy Industriesと、その創設者であるFather Gregory Boyleの献身的な活動を知ってもらうために制作された作品だ。ギャングリハビリセンターって何だろう、と日本に住む僕たちは考えてしまう。シンプルにいうならば、ギャングとして半生を生きてきた者たちがギャングから離れ一般の社会で生きていくことをサポートする場所。身体中のタトゥーを消したり、銃や暴力やドラッグなどから離脱する援助、そして各人が新しい人生を切り拓くために必要なスキルやメンタリティを育むための支援を行う。ギャングは自分たちの生きる日常以外にどのような日常があるかを知らない。知っていてもそこから抜け出すこともできず、社会に拒絶されてしまう。前科や人を殺めた過去がさらに彼らの居場所を限定してしまう。Father Gregはそんな逃げ場の無い若者を無条件で受け入れ、無償の愛と別の人生を生きるためのチャンスを与える。Shepardは彼らの日常と自分たちの日常には大きな隔たりがあり、そのことが大きな社会的経済的格差を生み、レイシズムの対象となることを理解していた。Father Gregと出会い、彼の理念やHomeboy Industriesの活動に感銘を受けたShepardは、自身の作品を通じてより多くの人に彼らの活動を知ってもらい寄付や理解者が増えれば、そこから得られる支援によって一人でも多くの若者の人生を救うことができるかもしれない、という強い想いを抱きこの作品を制作した。

3. RADICAL KINSHIP Screenprint
April 10, 2018

 
 
blacklivesmatter.com
homeboyindustries.org

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