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Interview with Taka Ishii About Straight Photography Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

Interview with Taka Ishii About Straight Photography Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

Ikko Narahara
“Two Garbage Cans, Indian Village” from
“Where Time Has Vanished”, 1972
Gelatin silver print
© Narahara Ikko Archives / Courtesy of Taka Ishii Gallery
Photography / Film

 
 
さしく勝者と敗者。それが新聞によって世間に出回ると人々は衝撃を受けるわけです。当時、その写真で初めて天皇陛下を見た人も多かったでしょう。絵画であればまた話は違うと思いますが、写真だとそのまま国民の脳裏にイメージが焼き付くわけです。現代であればいくらでも加工が出来ますが、当時はそうではないですからね。写真は文字通り、真実を写すという意味のもの。中国から来た言葉で、最初は写実的な絵画のことを写真と呼んでいました。それがそのまま今の写真に繋がりました」。
 
 

幾多の写真家が写した
ありのままの瞬間

では、実際にタカ・イシイギャラリーで作品を扱う写真家を中心に、ストレートフォトグラフィーの魅力を聞く。このインタビュー時、今年1月に逝去された写真家、奈良原一高の作品が展示されていた。奇しくもその作品のタイトルは「消滅した時間」。時間を切り取るというテーマに適合する作品群であった。「奈良原さんは、ファッション写真も撮っていた人ですね。60年代にヴェニスなどのヨーロッパ、70年代にはアメリカに滞在して撮影し、その作品がカメラ雑誌や新聞で紹介されていた写真家です。この『消滅した時間』は、アメリカ各地で撮った写真をまとめたもの。このシリーズのほかにはヨーロッパを旅した記録の『ヨーロッパ・静止した時間』という作品や、北海道の厳格な修道院で暮らす人々を記録した『王国』というシリーズもあります。この作品を撮影した修道院は戒律がとても厳しく、人と話してはいけないほど。写真を撮る時も、ハンドサインでやりとりをしたようです。また、奈良原さんは、『太陽の肖像』というエッセイ集を出版していて、いろいろな場所を旅し、いろいろな人に会ったことを文章でも記録している。作品を説明しない写真家もいますが、文章で補足することで、被写体の意味や撮影した意図が伝わりやすくなります」。
 
そして、日本を代表する写真家の1人である荒木経惟にも触れる。「荒木さんだと『近景』というシリーズのなかにある、陽子さんのスニーカーと自分のスニーカーを並べた写真があります。靴同士の紐を結び、その紐が手を繋いでいるように見える写真。ほかには『さっちん』。荒木さんは、若いころからずっと写真を撮ってきた方で、森山さんに『写真になっちゃった人だね』と言われていたくらいです」。「近景」は、荒木の最愛の妻、荒木陽子が1990年に亡くなった翌年に発表した写真集「空景/近景」に収められた、モノクロームで撮影された彼女へ捧げた作品群。「さっちん」は、1964年に発表された荒木のデビュー作で、昭和30年代の東京下町の子ども達を撮影した作品である。

Nobuyoshi Araki
“Satchin”, 1964
Gelatin silver print
© Nobuyoshi Araki / Courtesy of Taka Ishii Gallery

 
 
また、畠山直哉の名前も挙げてくれた。「畠山さんは、都市と自然をテーマに作品を撮影してきました。人間の皮膚が新陳代謝を繰り返すように、少しずつ変化する東京のコンクリートビル群を高い場所から撮影した写真を、何十枚もグリッド状に壁一面に展示した作品がよく知られています。同じアプローチの作品として、住宅展示場として利用されていた大阪球場と、その解体途中の様子を撮影しています。当時はまだデジタルカメラが主流ではなかったので、どうやって写真を加工したのかとよく聞かれたそうです。畠山さんはまた、石灰石鉱山やセメント工場など、都市が生まれる前の過程を被写体としたシリーズも撮影しています。『Underground / River (Tunnel Series)』という作品も有名です。これは暗渠化された渋谷川を写した作品です。写っている場所は、渋谷スクランブル交差点の真下ぐらいに広がる空間でしょうね。さらに『Underground / Water』というシリーズもあって、それは渋谷川の汚れた水面や水底を撮影しているのですが、そこには様々な生き物がいて、見たこともない色が混じり合い、写真でそれを切り取るとすごく美しいです。本当は臭いし汚いのでしょうけど、ビジュアル化すると違う世界になりますね」。渋谷川のこの場所は、Silver編集部からも程近く、普段から目にしていても特別気にすることはないのだが、写真家によって切り取られることで視点を改めることができる。確かに日々変わり続ける渋谷の奥深くで変わらずに流れ続ける渋谷川は興味深い存在といえる。このようにストレートフォトグラフィーでも、写真家の目によって被写体がどう表現されるかは様々だ。

Naoya Hatakeyama
“Untitled / Osaka” 1998
Lambda print
89 x 180 cm
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

Naoya Hatakeyama
“Untitled / Osaka” 1999
Lambda print
89 x 180 cm
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

Naoya Hatakeyama
“Underground / River (Tunnel Series)
#6303” 1999
C-print
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

Naoya Hatakeyama
“Underground / Water #4809”, 1999
C print
© Naoya Hatakeyama / Courtesy of Taka Ishii Gallery

タカ・イシイギャラリーと同じく六本木エリアに佇む、写真に特化したタカ・イシイギャラリーフォトグラフィー / フィルム。6月には写真家、操上和美「April」展も予定している。Photo Mikuto Murayama

 
 

良い写真家に現れる
シャッターを切る瞬間

被写体との出会いに関して、森山大道の例を石井は挙げてくれた。「森山さんは『色っぽい街だから』と言って、新宿や熱海でよく写真を撮影してきました。そういった場所にストーリーを感じるのでしょうね。ハワイが好きなのはあの島が熱海っぽいからだと話していました。ストレートフォトグラフィーを撮る写真家にとっては瞬間が勝負です。『シャッターを切りたくなるような出来事が向こうからやってくる。その瞬間はスローモーションになる』のだそうです。それをパチっと撮る。なぜか、写真家の前にはそんな決定的瞬間が現れます。そういう瞬間は、なかなかあるものではないですよね。例えば、森山さんの有名な写真『三沢の犬』(通称。正式なタイトルは『犬の町』)は青森県で撮られたものですが、あんなに異様な犬に出会すことなんて、まずないじゃないですか。実際には『三沢の犬』は、結構距離が離れたところから撮っているようで、それをクロップしています。目の前で撮っているように見えますが、実際は通りの反対側から撮影をしている。実はクロップしていない写真も存在します。あの作品が代表作ですが、そういった瞬間に出会うということが面白いと思います。良い写真家には、そういった瞬間が所々で現れるようです」。

Daido Moriyama
“Misawa”, 1971
Gelatin silver print
© Daido Moriyama Photo Foundation / Courtesy of Taka Ishii Gallery

 
 
 

Interview & Text Takayasu Yamada

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