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Interview with Taka Ishii About Straight Photography Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

Interview with Taka Ishii About Straight Photography Photography & Art
時間に対して向き合った写真とアート作品を知る

古今東西、数々の作家が「時間」をテーマに作品を発表してきた。人々の生活において重要なものである時間。時間に追われて生きるのか、時間を操って生きるのか。様々な感情を巡らせるこのテーマに対して作家が作品を発表することは必然的といえる。
一瞬の出来事を収める写真もまさにそうで、ストレートフォトグラフィーは、切り撮られたその瞬間を観ることで感情が揺さぶられるもの。アートもコンセプチュアルに時間を題材にした作品は多い。そういった時間と密接な作品を鑑賞することは、時間と向き合うきっかけにも繋がるはずだろう。PART6では、そんな時間を捉えたストレートフォトグラフィーとアートを紹介する。

Larry Clark
“Untitled”, 1963 Gelatin silver print
Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film and Luhring Augustine, New York
瞬間を切り撮り永遠にするストレートフォトグラフィー

生活をしていると直面する様々な瞬間。誰にでも平等に流れる時間も、それぞれ感じることは誰しもが違う。そんな時間の尊さ、瞬間を切り取った芸術にストレートフォトグラフィーがある。ファッションフォトグラフィーのように、被写体を綿蜜に構想して作り上げる写真とは違い、写真家が反応した生の外界を切り取ったものだ。この瞬間芸術を知ることは、当たり前に流れていく時間の価値を振り返るきっかけになるのではないか。そんなストリートフォトグラフィーについて知るため、六本木にあるギャラリー、タカ・イシイギャラリーの代表、石井孝之に話を聞いた。タカ・イシイギャラリーは、現代美術のギャラリーとしての知名度が高く、その中でも、1994年の開廊時からこれまで力を入れているのは「ストレートフォトグラフィー」である。complex665にあるギャラリーから歩いて10分程の場所にある、写真のみを扱うギャラリー「フォトグラフィー/フィルム」では、荒木経惟やラリー・クラーク、森山大道、東松照明などストレートフォトグラフィーを代表する著名な写真家の作品を扱っている。
 
 

ストレートフォトグラフィーはアートではなく記録

「ストレートフォトグラフィーが昔から好きで、現代美術のギャラリーとは別に写真作品だけを扱うギャラリーを2011年に始めました」。と話す石井にとって、ストレートフォトグラフィーは特別な存在だ。「はじめは現代美術と写真には隔たりがないと思っていました。しかし何十年と作品に向き合っているうちに、写真は現代美術ではないと思い始めました。別のもの、アートではなく記録だと。記録の中に、アートの要素が含まれている独特な媒体だと私は感じています。森山(大道)さんも『写真はアートではない』とずっと話していましたが、最近になってその意味がやっとわかってきたところです」。何十年と写真と向き合い続けた石井が、最近になってストレートフォトグラフィーの面白さや写真の真意が記録にあることを知ったということを聞き、改めて鑑賞することに対して難しく構えてしまいそうになる。しかし、ありのままを写したものがストレートフォトグラフィーであるのだから、ありのままに感じれば良いのだと石井はいう。
 
石井がストレートフォトグラフィーに魅了されるきっかけを作った写真家は、ラリー・クラークであったそうだ。ストリートカルチャーやファッションに関心の高い読者にとっては、映画「KIDS/キッズ」の監督として記憶している人も多いだろう。そのラリー・クラークが1971年に発表した「タルサ」の作品すべてを、80年代にロサンゼルスの美術館で実際に見て感動したことが始まりだと話す。「ドキュメンタリーフィルムを見ているような感覚でした。写真を見て、これがアートになり得るのか。そういう単純な驚きがありました」。それまで写真に詳しくなかったという石井は、「タルサ」を見て衝撃を受けたのち帰国し、様々な写真家の作品を見始める。「見ていくうちに、これって何となくアートだな。と単純に思いました。自分でコレクションしていくうちに、ギャラリーを開廊するなら写真の要素を加えたいと思いました。そして、ストレートフォトグラフィーを中心にしていこうと」。そうしてタカ・イシイギャラリーは1994年、ラリー・クラークの展覧会をこけら落としに開廊する。現在に至るまで、写真、特にストレートフォトグラフィーを主に扱う背景にはこのような理由があったのである。
 
その後四半世紀が経ち、石井自身のストレートフォトグラフィーに対する見方が変わる。「写真は記録」ということだ。「ストレートフォトグラフィーは記録をするその瞬間、瞬間が勝負。写真家は目の前の対象物や風景、人と向き合う瞬間に彼らの感覚に触れる何かがあってシャッターを切ります。その瞬間がアートであり、もっと言うとアートの域を超えているのではないか。それぐらいのパワーを持っていると思います。でもその行為自体は結局のところ記録なんです。一瞬、一瞬の時間を止めて記録していく。そしてプリントして見せる。その写真を見た人は、時間を遡って過去の瞬間を見ることができる。アートではなく記録だと思う理由は、そこにあります」。ストレートフォトグラフィーには紛れもない事実が切り取られているため、鑑賞者にとって絵画よりもインパクトのあるメディアとなる。そのストレートフォトグラフィーの記録性をもっとも本質的に表す例として、誰もが目にしたことのある昭和天皇とマッカーサーが並んだ写真を挙げる。「戦後すぐにマッカーサーと天皇陛下が並んで撮影された写真がありますよね。マッカーサーが後ろで手を組んで。その写真が物語るのはまさしく勝者と敗者。それが新聞によって世間に出回ると人々は衝撃を受けるわけです。当時、その写真で初めて天皇陛下を見た人も多かったでしょう。絵画であればまた話は違うと思いますが、写真だとそのまま国民の脳裏にイメージが焼き付くわけです。現代であればいくらでも加工が出来ますが、当時はそうではないですからね。写真は文字通り、真実を写すという意味のもの。中国から来た言葉で、最初は写実的な絵画のことを写真と呼んでいました。それがそのまま今の写真に繋がりました」。

石井 孝之 タカ・イシイギャラリーオーナー。1963年東京生まれ。1994年にギャラリーを開廊。大御所から新進気鋭の作家まで、現在は約70人の作家をリプリゼントしている。Photo Mikuto Murayama

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