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Interview with HAROSHI
Art Exhibition “I VERSUS I”

Interview with HAROSHI
Art Exhibition “I VERSUS I”

ものづくりへの一貫した価値観
スケートカルチャーへのリスペクト

スケートボードの廃材を用いた独自の手法によってアート界にその名を知らしめるHAROSHI。自身も10代の頃から現在に至るまでスケートボードを続けてきた生粋のスケーターであり、彼の中に脈々と流れるストリートカルチャーへのリスペクトが作品としてアウトプットされていることは間違いない。そんなHAROSHIが満を持して開催している個展が現在NANZUKA UNDERGROUNDで行われている「I versus I (アイ バーサス アイ)」だ。新型コロナウイルスによって人々の行動が制限されていく未曾有の事態の中で、HAROSHIは自身のファクトリーに篭り制作活動へ没頭。自身のものづくりに対してひたすらに向き合い生まれた数多くの渾身作を展示している。そんなHAROSHIにとってアートとはどんな存在なのだろうか。それを紐解いていく上では、やはりスケートボードという存在が鍵になってくる。
 
「スケートボードをはじめたのは中学生の頃。生まれ育ったのが駒沢公園の近くで、スケートパークもあるしはじめるにはもってこいの土壌があったんです。当時はスモールウィール、ビッグパンツと言われる、すごい太いパンツを切りっぱなしで履いて、すごいちっちゃいタイヤのスケボーに乗るスタイルが全盛期の時代で。だから僕自身もそういうファッションをしていましたね(笑)。今はアーティストとして活動をしていますが、もともと僕はジュエリークラフトマンとしてジュエリーを作っていました。ある日僕のパートナーが部屋にあった山積みのデッキを見て『これで何か作ればいいんじゃない?』と言ってもらったのが今のスタイルの大元が確立されていくきっかけとなりました」。
 
そんなパートナーからのアイディアを受け、最初はジュエリーを展示する際のポップ用にオブジェを作っていたというHAROSHI。そのオブジェに様々な人々からの反響があり、スケートボードの廃材を用いたスカルプチャーアーティストとしての活動に力を入れていくこととなる。


 
これまでにHAROSHIが制作してきた作品を見ていくと、消火栓やビール瓶など誰もが日常的に目にするようなオブジェクトが多い印象を受ける。実はこういった部分にも、彼のスケーターならではの遊び心が垣間見える。ストリートのスケーターは街の中でスケートスポットを見出し、そこでどんなトリックをメイクすれば格好良いかなど、街を独自の視点で見ることが多い。普通の人なら通り過ぎてしまうような街の景色の中でいかにクリエイティブに遊べるかという、身近なものに新たなる可能性を見出すマインドが染み付いているのだ。HAROSHIの作品には、そんなスケーターならではのマインドや遊び心が反映されていると言えるのではないだろうか。そしてそれはHAROSHIの制作活動のポリシーにも通ずることのようだ。
 
「スケートボードにも用いられている薄い板状の木をパイルして圧着させるプライウッドという技術。その元祖は1950年代にあのイームズ夫妻が作ったレッグスプリントと言われています。レッグスプリントは足を怪我した人のための補強用のプロダクトとして存在したものなのですが、その存在に個人的に共通点や面白みを感じていて。スケートボードが生まれるずっと前に怪我した時用のものが50年代とかにすでに生まれていて、今怪我するためのスケボーがあるというか(笑)。何にでもそういった因果関係みたいなものを見出すことがすごく好きなんです。必ず何か作る時には、これとこれはなんで一緒にあるんだろうとか、なぜ一緒になったんだろうと考えると、ある一定のルールが出てくるんすよね。それを考えることが自分の制作活動の中でも大切にしていることです。例えば今回の展示にも出している、ソフビのフィギュアと一体になっている作品。子供の頃僕らが遊び倒して壊れたソフビのフィギュアを、今僕たちが遊び倒して壊れるスケートボードで直すという共通点だったりとか。そういった自分なりの共通点をひたすらディグして、物を作っている感覚ですね。消火栓にしてもやっぱりスケーター愛っていうか、消火栓ってスケーターにとってはすごくアイコニックな存在じゃないですか。それをどう捉えるかというのは、やはり重要なテーマのひとつだと思います。高さとか形とか、存在している場所など様々な理由やシチュエーションが作用して消火栓というものを本来の目的とは別にスケーターたちが遊んでいる。独自のスケーターの目線であったり、そういう見方をして作品にするっていうのが僕らしいアーティスト活動の仕方かなと思います」。


 
8月8日まで期間限定で行われている当展示「I versus I (アイ バーサス アイ)」では、そんな独自の視点を持たせた数多くの作品が並んだ。1FにはHAROSHIがスケートカルチャーの守り神と称しこれまで製作を続けてきた「GUZO (偶像)」、2Fにはソフビと組み合わせ製作した新作「I versus I」シリーズ、そしてスケートボードを一枚の絵画のように構成した、これまでの作風とは異なるアプローチの大作「Mosh Pit」が展示されている。



 
「2020年は僕にとっても厳しい年でした。いろいろと大変なことも多かったのですが、自分の時間はすごく取れたんですよね。作業をする時間もたくさん出来て、だからこそ自分自身や作品に対して、より向き合うことができたと思っています。そんな中で自分対自分の彫刻をつくってみても面白いんじゃないかなって思ったり色々なアイディアを育むことができました。そうしたことから今回の個展のタイトルは「I versus I (アイ バーサス アイ)」にしています。個展の作品の中でも他と少しアプローチが違うのが「Mosh Pit」という作品です。今まで僕の彫刻作品は、重ねて固めて削り出して…というプロセスで作るものが多かったのですが、やはりスケートボードの本来の格好良さが滲み出る部分はボードの傷だと思うんです。そんな本来の魅力を毎回削って接着してることにずっと疑問を覚えていて。傷自体ををカッコよく見せる作品を作るべきなんじゃないかという思いがずっとあったんですよね。スケートボードって傷がついて壊れていくじゃないですか。本来は傷ってダメなポイントというか。人間関係で言えば、人のダメなところを愛せるようになったときに初めてその人を愛したということになると思ってるんです。それに似たような感覚はスケートボードにも存在していて、傷が格好いいと思えるようになって初めて愛していると言えるんじゃないでしょうか。僕はスケートボードとストリートカルチャーを愛しているので、やっぱりその愛すべき傷をカッコよく見せることは僕の仕事であると思うんです。そんなスケートボードの傷をどう見せたら良いかということを考えた末に編み出したのがこの形です」。
 
このようにHAROSHIの作品には、スケートボードやストリートカルチャーに対するリスペクトが溢れている。そしてそのリスペクトがHAROSHIのアーティスト活動を支えるモチベーションとも言えるだろう。今回の展示では、そんなHAROSHIなりのスケートカルチャーに対する愛が、様々な形となって私たちに語りかけてくるようだった。スマートフォンやPCで誰でも手軽にアート作品に触れることができるようになった今の世の中。手軽で利便性は高いが、実際に目の前で見て感じることがでしか得られない感覚が絶対にあるはず。是非NANZUKA UNDERGROUNDに訪れ体感して欲しい。
 
 
HAROSHI
1978年 目黒区出身。スケートボードの廃材を用いた彫刻作品を主な作風とするアーティスト。緻密で色鮮やかな作品群には、日本を初め世界中に多くのファンを持つ。

 
▼会期
HAROSHI 「I versus I」
期間:〜8月8日(日)まで
場所:NANZUKA UNDERGROUND
住所:東京都渋谷区神宮前3-30-10
時間:11:00-19:00 月・祝休館
http://nanzuka.com

 
 
 

Photo Yu Inohara Text Shohei Kawamura

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